第163話 B級女剣士の末路
「ほらほら、何をやっている。お前らが飛び込んでいかなくてどうする!」
後ろから押されて、魔物の前に飛び出した。
その数は3人。
男ふたりと女ひとり。
女は白い鎧を装備したB級女剣士だ。
男ふたりは装備からするとC級程度の剣士だと思われる。
3人の後ろには、4人ほどの冒険者がいる。
「魔法で支援ぐらいはしてやるから、思いっきり戦え」
リーダーとみられる魔法使いが言う。
魔物は、牙がソードの様に見えるソードタイガーだ。
B級魔物だが、3頭もいるから危険性が大だ。
「なんで、こんなことなってしまったのか」
女剣士は闘いながら考えていた。
元々はすごく良い条件の依頼だった。
剣士も魔法使いもいるパーティのひとりとして依頼を実行する。
優秀な仲間と共に、さらに強力な剣も貸与されて依頼に向かった。
ところが、運が悪いことに魔物に剣を奪われてしまった。
依頼を失敗した上に、貸与した武器を取られたことを問題視され、借金を背負わされた。
その借金を返すために、毎日の様に魔物と戦っている状況。
一緒に戦っている剣士も似たような状況らしく、依頼を断ることができない。
ひとつの依頼を達成しても、すぐ次の依頼をこなさなければならない。
今となっては分かることだが、最初の依頼はフェイクだったのだろう。
失敗させて、借金を背負わせるために仕組まれていた。
他の男たちも同じ手口で借金を背負わされて闘っている。
いくら、自分に起きたことが分かっても意味がない
そこから抜け出す方法がないのだ。
誰かに助けを求めようにも、外部に連絡を入れる手段はすべて封じられている。
魔法使いが相手にいるから、隠れてなにかしようとすると、すぐに発覚してしまう。
「このまま、ずっと誰かのために闘い続けるってことになるのか」
絶望感が女剣士を満たしていった。
なぜ、こんなことになってしまったのか。
ずっと考えていることだけど、答えが出ることはなかった。