第161話 ミントだって負けてはいない
「火魔導士は、負けということでいいですよね。皆さん」
「「「負けです」」」
火魔導士以外は口をそろえて言う。
なら、あれ、いらないよね、と言うことで、どでかい杭をパタンと倒す。
もちろん、人がいない所に。
「うわぁ~」
初めて自分の頭の上にあった杭を目にしてびっくりしている。
「次は水魔導士さんだね。うちはミントかな」
「はい」
水魔導士さんは、リーダーの火魔導士が負けて闘志を失っている。
だけど、指名されてしまったから、構えくらいはする。
「ミント、あれ呼んでみようか」
「あれ、ですね」
空にみるみるうちに雨雲が立ち込める。
真っ暗になって、そこに大きな雷が落ちる。
「うわぁ、すごい。気の魔法を使えるのか?」
「そういうんじゃないの」
「雷魔法は制御が難しいからな」
「だ、か、ら。あの雷は魔法じゃなくて、あれの登場の時の演出なだけです」
あれが上空から降りてきた。
何十メートルもあるどでかい神獣。
青龍さんだ。
「呼んだか。やっつけるのは、そこの魔導士か?」
水魔導士さん、土下座をまたしている。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
「あれ?闘うんじゃないの?」
「吾輩も闘うつもりで登場したんだが?」
不戦勝らしい。
せっかく山から飛んできたのに、ちょっと不満そうな青龍さん。
ちょっとは暴れてみたいというのが本心みたい。
ただ、迷惑だからお断りした。
さて、あとは巨大狼と気魔導士の闘いだ。
そもそも、三戦のうち二勝したから、チーム戦では勝ちが確定している。
けど、騙されて捕まった巨大狼はしびれているのにやる気満々だ。
「あの気魔導士を我が切り裂いていいということか?」
「ひぇーーー、ごめんなさい」
気魔導士も土下座を始めた。
全く闘いにならないな。
三戦三勝。
完勝だ。
でも、こいつらが本当にS級冒険者パーティだとしたら。
私たちのチームは、S級以上だということは確定だね。