第156話 狼娘の失踪
「おかしいわね。狼娘いないわ」
メイド服を着たメイドピンク。
街長さんが紹介したアイドル系美少女が、隣のメイドに話しかける。
「そうよね。いつもは、しっぽ振って待っているのに」
隣はメイドイエロー。
やっぱり街長さんが紹介した、グラビア系美少女。
ふたりは、狼娘のブラッシング担当になっている。
月曜日と木曜日。
狼娘が巨大狼になって、全身をブラッシングしてもらう。
狼娘は、それをすごく楽しみにしている。
ブラッシングは50センチほどのブラシを使って行う。
なかなかの力仕事だけど、モフモフ好きなふたりにとっても楽しいひと時。
時々、巨大狼に抱き着いたりして、きゃあきゃあ言いながらブラッシングをする。
ふたりにとっても、狼娘にとっても楽しい時間なのだ。
ところが、その予定の時間になっても狼娘が帰ってこない。
いままでなかったことだ。
「おかしいわね」
メイドピンクは困り顔でつぶやいた。
そんなことを言われていたとき、狼娘は檻の中にいたのだ。
狼娘は時々狩りに出かけていて、魔物を倒して魔物の肉をゲットしていた。
近くの森での狩りは、狼娘にとってレクレーションも兼ねた物。
そこにいる最強の魔物でも、狼娘の敵ではない。
朝出かけて、余裕で魔物を狩って、夕方には引き上げてくるのが習慣だった。
ブラッシングの日は狩りには出かけることはなかった。
だから、ふたりのメイドが心配しているのだ。
その日の前、狼娘は狩りに出かけた。
何体かの魔物を狩った。
その後、用意周到に準備されていた罠に掛かってしまった。
「所詮は獣よ。力勝負では勝てないかもしれないが、頭脳勝負では人間に勝てやしないさ」
檻の前でそんな話をしているのは、頭から真っ黒なローブをすっぽりと被った男、4人。
目のところだけくりぬいてあるが、そこから表情を読み取るのは難しい。
額のところには白い丸が描いてあり、そこから放射状に線がたくさん描いてある。
太陽女神教団のシンボルマークだ。
「これで、あの土魔導士を倒すための餌は手に入ったな」
一段と大きいシンボルマークを付けた幹部がいやらしい声で笑った。
太陽女神教団は、敵です。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。




