第147話 伯爵様のお呼び出し
「いいか、失礼がない様に気をつけること」
「・・・・」
いきなり街長に呼び出されて、行ってみると伯爵様との会食がセッティングされていた。
オークションでミント像を落札してくれた方で、このあたりの領主様、だとは聞いているけど、それ以上は知らない。
なんで、また、会食がセットされているのか不明だ。
「とにかく、伯爵様のご依頼だ。会ってお話をする様に」
うーん、貴族様って面倒くさいから、あまり関わらないようにしてきた。
最近は、劇場に貴族様が来ることもあるけど、それはホームでのことだから、こっちのペースでいける。
だけど、会食なんて、完全に貴族様のテリトリー。
アウエイもアウエイで、すごく苦手感が強い。
できたら、さぼりたいな・・・でも、街長いわく、「絶対無理」。
領主様は絶対!って人だからね。
領主様が認めているから、街長でいられるんだろう。
選挙なんてないから、上が決める役人みたいなものだろう、街長さんは。
「何を聞きたいんですか?」
「知らない。だから、余計なことは言わずに失礼のないことだけ気をつけろ」
さっきから、そればかりで、全然情報が入ってこない。
困ったなぁ・・・気持ちの準備が全然できない。
「よく来たな。大魔導士殿」
「お招きありがとうございます。伯爵様」
大魔導士は言い過ぎな気もするけど、訂正すると失礼かなとスルーした。
この場所は伯爵さんの邸宅のひとつで、そこの応接間。
もちろん、広くて豪華な貴族的な造りだ。
「そなたに聞きたいのは、他でもない」
えっと、他がどれで、どれが他でないのかな・・・
「土魔法のことだ」
あ、そっちね。よかった。それなら答えやすいし。
「街の壁づくり農村の開拓、そしてスラム街の再開発。いろいろと聞いておるぞ」
「ははーっ」
「土魔法というのは、そんなに便利なものとは知らなかったぞ」
「はい、あまり知られていないのが、土魔法です」
ほとんど、土魔法を極めた人がいないのが原因だろうなぁ。
火とか水とかの魔法は、冒険者で極めようとする人がいる。
気の魔法も、多少はいる。
だけど、土魔法っていうと地味だから、他の魔法に行ってしまう。
「土魔法は、大地からの魔素を直接制御する魔法です。応用範囲は実は広いんです」
「それは、街長や他の者から聞いてびっくりしているところだ」
「もっとも、私もまだまだ知らないことが多くて、新しい魔法を見つけているところです」
「ほう、それはどんな?」
どれがいいかな。
一番、あれが分かりやすいかな。
秘密じゃないし。
「伯爵様もよくご存じのガラスです。落札していただいた品は、ガラス造形の新しい魔法で作りました」
「おお。あれが新しい魔法の作品であると。熟練した職人の作品に見えるな」
「魔法ですから、限界はありません。イメージがしっかりとできれば実現できるものです」
「そういうものか」
うん、やっぱり、ミント像の話で正解。
分かりやすいし、興味持っているし。
「だが、今、私が知りたいのは農業の事だ」
「あ、はい。村での話は聞いていますか」
「詳しく聞いておるぞ。街長からだけではわかりづらいことも多いから、直接、農作業をしている爺さんにも聞いた」
うわっ、村の農業爺さんも伯爵様に呼び出されたのか。びっくりしたろうなぁ。
「まだ、実験中ということだが、すでにいろいろと成果も出ている様だな」
「はい。農業は詳しくないので勉強しながら、ですが」
「作物と土の魔素の関係。不思議なものだのう」
「はい」
伯爵様、頭がいいな。
ちゃんと問題点を理解している。
「ただし、大きな問題がある」
伯爵様は、どっしりとした声で言い出した。
伯爵は何を言いたいんだろう。
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