第143話 3日間徹夜して作った作品の評価は?
「まだ、寝ないの?」
「うん、もうちょっとだから」
出品物は制作に3日かかってしまった。
それも3連続の徹夜をしてしまった。
途中で2時間くらい仮眠は取ったが。
基本的な形状は半日で完成した。
だけど、細かく微調整を繰り返していたら、どんどんと時間が喰われてしまった。
「なんか、ここ、イメージと違ってね」
「そう?そんなことないと思う」
「いや、これだと、もやっとするんだよなぁ」
作っているのは一言でいえばフィギュア。
ガラス素材を使ったフィギュア。
ガラスだけど、フルカラーで作ってみた。
最近はガラスで何か造るのが楽しくなっているんだ。
「はやく、運び出す準備して」
「ま、まってくれ。もうちょっと、ここだけでも」
あーあ。時間切れで持っていかれてしまった。
精魂尽き果てて、パタリと倒れるように寝てしまった。
それでは風邪をひくと心配した狼娘がモフモフ状態になってくるんでくれた。
起きるまで気づかなかったけどね。
その作品がオークション会場の檀上に登場した。
「こちらは巫女さんの等身大ガラス像になります」
「おおーーー」
会場からどよめきが起きる。
まるで生きているようなリアルな像。
だけど、ガラス製で透明だから神秘的でもある。
より魅力的に見せるために、教団の魔法使いを使って何方向からも魔法で光を当てている。
「この顔の肌の状態を見てください。ガラス製だと言われて信じられますか?これこそ新しい芸術品です」
そうそう。特にほっぺたのあたりが難しかったんだよな。
微妙な色の違いを表現する。
それでいて、透明感を最大に利用して神秘的にする。
「本当のことを言うと、ご主人様は30分くらいで作れると思っていました」
「まぁ、ミントと全く同じサイズの透明なガラス像ならそれくらいでつくれるぞ」
「だけど、形になるまで半日かかってましたよね。色もまだついてなかったし」
「それはな。ミントと全く同じサイズじゃないからだ」
「そうなんですか?」
「ミントを見ているファンが捉えたイメージで造るんだ。全く同じに造るより本物のイメージに近づくようにな」
「ええっ、本物の私とサイズが違うんですか?」
「たとえばバストは1センチ大きくて、ウエストは逆に1センチ細いぞ」
ミントがびっくりしている。
フィギュアをただの本物のコピーだと思ってもらっては困る。
本物以上に本物らしくつくるのが造形師の仕事だ。
「「「ミント、ミント、ミント、ミントぉーーー」」」
あ、応援団の人たちがミントコールを始めた。
あ、警備員に注意されている・・・それはそうだ。
ここは劇場ではないんだからね。
「今回は特別に近くで見る時間を用意しました。出品がギリギリだったので下見が実施できなかったかわりです」
ミント像に向かって観客席から殺到してくる。
それはオークション側も予想していたらしく、すぐに警備員が対応して、一列に並ばせる。
順番にミント像を見ていく。
「す、素晴らしい」
「どうやって、これ作ったんだ?理解できない」
「うちにもって帰って、一緒に寝たい」
そんなつぶやきが聞こえてきそうだ。
さて、いくらの値段が付くのか。
ただ、ひとり。
嫌な顔して、出品物をじっくり見ていた人がいる・・・誰だろう、あれ。
あ、伯爵令嬢さんだ。
自分の肖像画と、こんな作品を比べられるなんて不快だと顔に書いてある。
どっちが人気になるのか、結果が楽しみだ。
ガラス製のミントフィギュア、いかがですか?
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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