第141話 オークション出品の下見
ごめんなさい。12時の分は、別の小説でした。こっちが続きです。
「どうせやるなら、最高額落札を狙う」
聖女さんとミントにそそのかされて、その気になったんだけど実際に可能なのかどうか。
ちょっと気になって、聖女さんと一緒に下見に来た。
まずはオークション会場。
大きな机がひとつあって、その隣に演台がひとつ。
司会の人がハンマーを持って、その演台でオークションを取り仕切るらしい。
落札者が座る席は、全部で300席。
うちのステージより席がずいぶん少ないけど、観客席の広さは倍くらいある。
ここに座る人は貴族とかお金持ちだろうから、妥当な設計なのだろう。
「オークションの落札に参加するにはどうしたらいいの?」
「予約と預け金として最低金貨1枚を用意することが条件ね」
金貨がない貧乏人には、参加資格はないということか。
まぁ、庶民であってもそのくらいは用意できるから、貴族専門という訳ではない。
「すでに出品予定品が展示されているから見ていく」
「はい。いきましょう」
長テーブルがおいてあって、その上に出品物が展示されている。
その横には出品物の説明が書いてある。
「これが今回の最大の目玉ね」
1枚の肖像画だ。
説明によると伯爵令嬢の肖像画だという。
15才の誕生日に書かれた肖像画だけど、今回のオークションに特別に出品されたらしい。
描いたのは、この街で三本の指に入る人気画家だ。
画家の人気もあるけど、描かれた令嬢の人気もプラスされて前回以上の落札額になるんじゃないかと言われている。
普段では全く流通していない令嬢の肖像画ということで、いくらで落札になるか予想もつかない。
この出品を斡旋したのが聖女さんのライバルらしい。
前回と一緒で、今回も最高額の栄誉は彼女のものだろうと教団の中では言われている。
「なんでまた。そんな貴族の人がこれを出品するんでかね」
「この令嬢さん。楽器もうまくて、人気ある人なんですよ。だから最高額落札って話題になるのが目的だろうって言われてます」
「あー、そういう俗物ってことですね」
俗物扱いしたら、聖女さん、くすって笑った。
きっと同じこと感じていたんだろうなぁ。
「他にもいろいろと高額な出品物あるけど、令嬢肖像画に勝てる出品物はなさそうね」
「そんなことはないですよ」
「えっ、どういうこと?」
「私が作る出品物がありますって」
「あ、そうでしたね」
最高落札額を狙っている肖像画を見たら、やる気が急上昇してきた。
ぜったい、あんな肖像画に負けない物、作ってやるぞ。