第140話 チャリティーオークション
「お願いがあるんですが」
ミントと聖女さんがダブルでお願いをしてきた。
このふたりがタッグを組むとすごいお願いパワー。
断れるはずがない。
「今度、うちの教団でチャリティーオークションをすることになって」
聖女さんの教団はめぐまれない孤児に孤児院を作ったり、仕事をあっせんしたりしている。
だけど、テラス女神教団だけでは無理でいろいろな形で資金集めをしている。
そのひとつがチャリティーオークション。
街の人からオークションに出品してもらって、その売り上げを寄付してもらうのだ。
貴族の人や裕福な商人などが不要になったものや、パトロンしているアーチストの作品を出品して人気になっている。
「前回の最高額は金貨120枚もついた絵があるんですよ」
その絵を出品したのは絵描きのパトロンしている貴婦人。
絵描きのブランドを上げるために、最高な一品をあえて出品したらしい。
「でも、うちは美術品とかはないですよ」
「いえいえ、ご主人様には土魔法があるじゃないですか」
あ、要は土魔法で何か作ってそれを出品するってことね。
原価も大してかからないから、いいか。
「ご主人様が本気で作った作品なら、きっと人気になりますよ」
おいおい。
造形のスキルには自信があるけど、アートなセンスは全くないぞ。
絵描きとかのライバルにはなれないだろう。
「魔導士さんには、実は作ってほしいものがあるんです」
「と、いうと?」
「こんなものなんですけど」
手書きのイラスト付きのリクエスト。
「うわっ、それ。ずるくない?」
「でしょ。これなら前回の最高額以上だって夢じゃないですよ」
「うーむ。わからんでもない」
「実は、負けたくないライバルがいまして」
前回の最高額を出した貴婦人を紹介した別の聖女さん。
なにかにつけて、嫌みを言う嫌な女性なんだって。
「前回から、うるさいんですよ。自慢ばかりして」
珍しく聖女さんが、ひねくれた表情をしている。
よっぽど、その女性が嫌いなんだろう。
「だから、今回はどうしても彼女以上に競り上がる出品を扱いたいんです」
なんだかんだいって、高く競り落とされると教団への寄付になる。
ふたりの聖女を競わせるなんて、うまいことやっているなぁ。
「一緒に最高額を目指しましょう」
やる気バリバリの聖女さんも美しいな。
楽しそうだから、話に乗ってみた。
オークション、何出すの?