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第134話 B級女剣士は蟻地獄に足を踏み入れた

「今日はわざわざ来ていただいて、まことにありがとうございます」

「いえ、お気になさらずに」


今、B級になった女剣士は、上流階級だけが住む1街区にあるカフェにきている。

カフェと言っても、普通のカフェではなく、すべてが個室という特別なカフェだ。


4人掛けテーブルがひとつしかないこの部屋。

6帖くらいあって、広々している。


内装も調度品もとにかく高級品だということだけ分かる。


いくらB級になったところで、しょせんは冒険者。

とても、こんなところでお茶することはできはしない。


「すごく居心地のいいカフェですね」

「はい。私もここは気に入っています」


当たり前の様にここを利用しているという彼は、お金持ちのおぼっちゃんという風情。

年齢は女剣士と同じくらいで25歳くらいだと思われる。


「それでお話というのは?」

「はい。それでは依頼のお話をさせていただきますね」


今回の話はギルドを通した正式な指名依頼として伝えられている。

依頼主は街の有力な商会のひとつ。

ただし、詳細は会って話したいという相手側の要望で、内容に関しては一切、知らされていない。


通常はギルドに依頼をした時点で依頼の概要と報酬くらいは知ることができる。

それを見て、詳細を知るために依頼主に会うことはある。


だけど、一切詳細がないというのは、普通ならそれだけで断られてしまうことが多い。

ただ、女剣士は初めてB級冒険者として指名依頼をもらったので、とにかく話だけでも聞こうとやってきた。


「B級ライセンス取得おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「正直にお話ししますね。私どもの商会はB級冒険者と依頼を通じて関係を結ぶことをしています」

「そうなんですね」


商会と冒険者は、持ちつ持たれつの関係にある。

簡単な依頼なら、隊商の護衛みたいなものから、複雑な依頼まで冒険者を使うことがある。


商会自体も警備兵は所有していたりするが、直属の警備兵を使いづらい状況も多い。

そういうときは、冒険者ギルドを通して依頼をする形になる。


冒険者からする、お金がある依頼主ということで、商会からの依頼は歓迎されている。


「ただ、冒険者もB級クラスになると立場が対等になりましてな」

「そうですよね」


C級クラスなら、大手商会はただの駒として冒険者を使える。

B級クラスは登録されている人数がC級の1/7くらいしかいないので依頼が多いときは取り合いになる。


「だから、B級になったばかりの方に指名依頼を出して、仲良くなっておくことをしているんですよ」


それでまだ、B級冒険者としては実績のない私に指名依頼が来た訳ね。


「今回の依頼は、新しい鉱山探索の護衛です」

「えっ、鉱山ですか?」


新しい鉱山は一般的に魔物がいる山で探索するもの。

魔物のいない山は、すでに見つかってしまっていて、新たな鉱山が発見される率が低い。


だから危険を承知で魔物のいる山で鉱山探索するのだ。


「でも、そのような場所では、私ひとりでは力不足だと思いますが?B級パーティでの参加を望まれますか?」


困ったことに、今の私では依頼があってもB級パーティを集める力がない。

B級パーティでの参加を求められたら、断るしかないのだ。


「パーティでの参加は期待していません。単独での参加で十分です」

「だけど、私だけでは無理ですよね」

「心配ご無用です。こちらの商会でも護衛要員も付けますし、うち専属の魔法使いも治療師もいます。

正直な話をしましょう。まずあなたに必要なのは、実績です」


うっ、言われてしまった。

実績がない私には、B級パーティを組むことも、指名依頼も来ない。


普通なら実績あるB級パーティに加入して自らの実績も得ていく。

それが王道だけど、他のパーティに嫌われてしまっていて無理だ。


「報酬も出しますが、それ以上にあなたの実績に協力したいんです」

「なぜ、そこまで・・・」

「はっきり言ってB級冒険者の青田買いです。まだ、実績のないうちから繋がりを持つこと。それが目的です」


これはチャンスだ。

今の八方ふさがりを突破するには、依頼主との繋がりは大きな力になる。

私に必要なのは、そこだったんだ。


人間と言うものは、追い詰められると可能性を見せてくれる人に飛びついたりする。

余裕があるときは、「何か裏があるんじゃないか」考える人でも、追い詰められるとチャンスと思ってしまう。


いや、チャンスと思いたいだけだ。

そして、それが蟻地獄の罠だと気づくときにはもう遅いのだ。


「わかりました。細かい条件は交渉させていいだきますが、参加を前提にお話しさせていただきます」


とうとう、蟻地獄に一歩踏み出してしまったのだった。


悲劇はここから始まりした。ちゃんちゃん。


楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。

ブクマと評価もよろしくです。



新連載がはじまりました。


ここの主人公と真逆で迷いがない奴です。

でもやっぱり、サクサクとお話が進みます。


『寝取られリーダーがパーティを追放されて悪魔との契約でSSS級になり復讐する』


https://ncode.syosetu.com/n3988ev/


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