第13話 秘密を暴露してみた
朝。
日が昇った。
昨日はちょっとしか仕事をしていない。
仕事探しはなかなか大変だったけど、仕事自体はたった30分だし。
やったことは慣れた土魔法だけ。
疲れは全くかないけど、なんかまだ眠い。
「あ、いけない。引き渡しがあったんだ」
昨日の小屋を直す仕事の依頼をくれた農民さん。
朝、引き渡しって言っておいたから、もう来ているかもしれない。
そうでなくても農民って朝が早そうだし。
急いで支度をして、出かける。
昨日、小屋を再構築した地点に。
「あ、やべ。もう来ているわ」
うーん、依頼主より後に来るっていうのはまずい。
仕事をする気合がないと言われても仕方ない。
それも、初めての仕事相手だし。
「ごめんなさい。遅くなってしまって。待ちました?」
「おい。何をしたんだ?」
「あ、直すのだと手間がかかるから造りなおしました」
「造り直したって・・・全然違うじゃないか」
たしかに昨日のボロボロな木造の小屋が、できたててピカピカな石材づくりの2階建てになっている。
「細かいことは気にしないと言っていたので・・・」
「細かくないだろう、これ」
「そうかなぁ~。ちょっとは違うけど」
無言の時間が過ぎる。
こういうときは、我慢くらべだ。
先に言葉を発した方が交渉上ふりになる。
「これだけは言っておくぞ」
「なんでしょう?」
「金貨2枚以上は払えない」
「あ、もちろん、そのつもりです」
本当のこと言うと30分の仕事で金貨2枚はぼっているとは思う。
だけど、ちゃんと依頼主の要求に応えているから、いいんじゃないかと。
「・・・本当に金貨2枚でいいの?」
「もちろんです」
急に依頼主の顔が笑顔になった。
こっちもつられて笑顔になる。
「ところで、なんで2階建てにしたのかな?」
「1階は穀物倉庫ですから、2階にはちょっとした休憩とかできるのがいいかなと」
「そりゃ、ありがたいけど・・・」
喜んでもらえのは嬉しい。
だけど、なんか、すっきりしない顔している。
「なんか、別に聞きたいことがあるんじゃないですか?」
「・・・どうやって、これ作ったの?」
「あ、それですか。土魔法ですよ」
あっさり言ったら、よけいに悩んだ顔になってしまった。
「土魔法ってレンガを作るあれだよね」
「レンガも作れますが、それだけじゃないです」
「どうやって作ったのか、見たいな」
「うーん。誰か小屋欲しい人、紹介してくれませんか?」
「えっと、金貨2枚でいいのかな」
「もちろんです」
それから集落に連れていかれて、村長さんを紹介された。
村長さんに小屋を売り込んでくれた。
村長さんの畑の小屋が小さくて不便だから、金貨2枚でもうひとつ作ってほしいと依頼を受けた。
「それじゃいきますよ」
村長さんと農民さん。
ふたりが見学しているところで、土魔法を使う。
《再構成》
農民さんのとこと同じ設計でいいというので、前回使ったセラミック板がそのまま使える。
たったひとつの土魔法にて完成できる。
「できました」
あぜんとしているふたり。
金貨2枚をそれぞれもらっているから、固まっているふたりを置いて街に帰った。