第127話 暗殺者の隠れ里
「こんにちは」
「はて。あなた様はどちらの方ですか?」
「このふたりに殺されかかった者です」
「なにぃーーー」
双子に案内してもらって、隠れ里の一番偉い人に会わせてもらった。
いやいやだけど、案内した双子は私の後ろで小さくなっている。
「お前ら、また、勝手なことしたな」
「「ごめんなさい」」
話を聞くと、この隠れ里は暗殺者や密偵を育てる村らしい。
この双子は、今、暗殺者として訓練を受けているところ。
だから、まだ暗殺の依頼が入るはずがないのだ。
「それでは、この鳩は?」
「なんと。村に来た依頼の鳩を勝手に捕まえたな」
「これで簡単に捕まえたんですよ。すごいでしょう」
石が両端についた皮紐をみせてくれる。
本来は野生動物を捕まえる道具だ。
「この依頼は、我々は受理していません。そもそも、受理しないタイプの依頼です」
鳩の足の筒に入っている文を見て、長老は答える。
「成功報酬のことを書いてはありますが、その保証になるものがありません」
「「ええー、ひどい」」
「だから、暗殺者は自分で依頼を判断せずに交渉者に任せるんだ」
双子が迷惑をかけたことを気にしているらしく、長老さんはいろんなことを教えてくれる。
この依頼が、帝国の教団が発したものだということ。
その教団は、太陽の女神を信仰している教団で帝国の中では大きな勢力を持っていること。
そして、その教団は太陽女神が唯一の神として信仰すべきと唱えていること。
「この教団が暗殺依頼を発したということは、あなたが別の神様を信仰しているということですな」
「あー、信仰というか。知り合いというか」
龍神様だな。
なんだか知らないけど、太陽女神教団は龍神様が邪魔らしい。
神殿を作ったり、巫女舞を披露して青龍さんを呼び出したり。
そういう派手なことをして、龍神様の信者を増やしていることが気に入らないだろう。
「どうでしょう。この双子を影の護衛として使ってはくれませんか?」
「影の護衛?」
「暗殺の依頼が発せられているとなると、うちだけでなく他のところも届いている可能性があります。
中には依頼を受けるところもあるかもしれません」
なんと。
暗殺者が他にも来ると?
「えー、影の護衛なんてヤダ。暗殺者の方がカッコイイし」
「そうそう。暗殺者がいい」
長老が双子をガミガミと叱っている。
この双子は長老の頭痛の種な気がする。
「どうですか。この通り、考え無しなふたりですが、能力は保証しますよ」
「ちなみに護衛費用というのは、どのくらいでしょう」
「ご迷惑をおかけしたから無料で、と言いたいところですが、さすがにそれは難しくて」
「いえいえ。真っ当な料金なら、検討しますよ」
「では、月金貨10枚でどうでしょう。ふたりで」
そのくらいお金は別に気にならないけど。
どうしようかな・・・。
「もちろん、すべての暗殺を阻止できるとはいいません。暗殺の成功率を下げる効果はあります。
あと、情報収集などなら、この村がバックアップしますよ。別料金ですが」
この村長ならビジネスライクでやりやすい。
この村とのリンクはおいしいかも。
「それでは、影の護衛をお願いしましょう」
「それはよかった」
「ただし、条件がひとつあります」
「なんでしょう」
「呼ばないときは、表に出ないように双子に言っておいてくださいな」
正直、面倒くさいのが一杯いるから、その上、面倒くさそうな双子を引き受ける気はない。
だから、「影の」部分をしっかりと双子に理解させておきたい。
「それはもう。契約になりますから、大丈夫です」
長老との間は大丈夫だろうけど、双子は危ないからな。
面倒くさいことになったら、長老に告げ口しよう。
「それでは、ふたりのことをよろしくお願いします」
「「よろしくお願いします」」
「これらこそ。『影の』護衛をよろしくです」
相変わらず、いろんなのを拾う男やな。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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