第122話 もうひとつの実験
村から帰る道で、もうひとつ、気になっていることを実験した。
まずは、本気で走ってみた。
限界だと思うスピードになると、大地から土魔法が身体に上がってくる。
筋肉に土魔素が入り、筋肉をサポートする。
限界だと最初は感じるけど、しばらくすると楽々走っていることに気づく。
もう一段スピードを上げて、限界スピードまで持っていく。
すると、また土魔素が筋肉をサポートして限界を感じなくなる。
この繰り返しで、スピードアップしていったら、俊足君の2倍くらいにはなった。
馬の疾走とあまり変わらないスピード感。
そのうえ、いくら走っても疲れない。
なんで急にそんなことができる様になったのか不明だけど、土魔法で身体強化ができるようになったみたいだ。
土魔法というのは土で何か作るこものだと思っていたけど、違うらしい。
「これなら、剣士としてもちゃんと戦えたりして」
土魔法しか能力がないと思っていたから、ちょっと嬉しい。
「どれ、ちょっと試してみようか」
いつも街から出るときにもっているナップザックには、短剣が一本入っている。
それを使って剣士として、戦えるか試してみよう。
「まずは、魔物ではなく木がいいかな」
街道のちょっと外れたところに何本か木が立っている。
その木の太めの枝を短剣で切る。
ガシッ。
やっぱり切れない。
だいたい1/3くらいしか喰いこんでいない。
さっきの走っているときに起きた土魔素の循環を思い出し、身体に土魔素を巡らしてみる。
そして、短剣を持つ腕全体に土魔素を送り込む。
もう一度、同じ枝を切ってみる。
スバッ。
あっさり切れてしまった。
全然力が違うみたい。
今度は調子に乗って、幹行ってみるか。
もっと土魔法を身体に巡らして腕の強化をする。
おっ、右腕がばんやり光りだした。
いけるっ。
ゴワンっ。
すごい音がして、短剣の刃の長さと同じくらいの太さの幹がバッサリと切れる。
同時に木が向こうに倒れる。
「うわ、すごいな」
こんな短剣で木を切ってしまえるのか。
長剣だったら、もっと太いのもいけるかも。
「この力、何に使えるんだろう」
今までは、土魔法で何かを作ることしか考えてなかった。
でも、土魔法が作物や自分の身体にも影響を与えられると知って、新しい可能性が広がった。
ただ。
何をしたいのか。
それだけが見つかっていなかった。




