第12話 大工の代わりに土魔法でなんとかする
「この小屋なんだが」
正直、その小屋を見たとき、廃墟かと思った。
屋根も壁も穴だらけって感じ。
「これから穀物を収穫して入れる小屋なんだが。去年までは騙し騙し使っていたけど、今年はさすがに限界だ」
「限界というか、崩壊というか」
「そうそう。最低でも屋根だけはなんとかしないと穀物を入れたら雨で腐ってしまうからなぁ」
これはもう駄目だな。
建て替えないと。
「これは無理でしょう。建て替えが必要です」
「そこをなんとか。お金はそんなに出せないから」
「いくらの予算なんですか」
「材料費と工賃で金貨2枚で、なんとかならないかな」
「えーー。金貨2枚で、やるんですか」
「やっぱり無理ですか。うーん」
お金のあてがないんだろう。
そして、収穫がすぐだから待ったなし状態でもある。
「無理でもないですが。ただし、細かいことを言わないって条件で」
「えっ、やってくれるんですか。雨が洩って中の穀物が駄目にならなきゃ、どんな修繕だっていいです」
「なら、やりましょう」
「期間はどのくらいかかりますか?」
「明日の朝まで、で、どうでしょう」
「えっ、できるんですか、そんなに早く」
「できあがりで判断してください。駄目ならお代はいりません」
「じゃあ、頼むよ。なんとかしてよな」
依頼主は帰っていった。
小屋の中を確認してみると、ざるとか箱とかが入っている。
まずは、それらを外に出さないと。
これはボールでやるか。
《球生成:数量100》
地面を叩いて唱えると、土で出来た20センチくらいの球がすっと出てくる。
全部で100個、その分、地面がちょっと下がったけど、あまり関係ないね。
次はその球に荷物運びをさせよう。
《荷運び稼働》
球に向かって唱えると、ころころと球が小屋の中に入る。
私も入って、運び出す荷物をひとつひとつ触れる。
すると、荷物の下に球が入って荷物ごと、ころころと移動する。
うん、これで準備オッケー。
小屋の中は空っぽになった。
ポケットから一枚のセラミックの板を出す。
《構造解析:記録》
セラミックの板は記録板だ。
構造を読み取って板に記録する。
さて、あとは解体して再構築するだけだ。
《構造物土壌化》
小屋が一瞬で崩れ土に変わる。
木は腐食して、石は風化する。
それを高速に進行させる魔法だ。
小屋は無くなって、ちょっとした土の山になった。
「さて、いきましょう」
《進化:再設計:再構成》
元の構造をベースにちょっと便利に変えてみた。
土が集まって柱が伸びていく。
しばらく待っていると、骨組みができあがる。
元々は一階建てだったか、進化をいれたから二階建てに進化した。
土が集まって、壁が構成されていく。
その後は、屋根も完成する。
ここまでくると外から見ていても変化がないからつまらない。
だけど、ちゃんと内装が作られていく。
「できた」
強化石材製、二階建て穀物収納小屋、だ。
開始から30分ほど。
簡単なお仕事だね。
おっと忘れてた。
外に出した道具を搬入しなきゃ。
《荷運び稼働》
球が今度は中に運びこんでくれる。
「さて、帰ろう。明日の朝、引き渡しだ」




