第120話 村からの報告者
「とんでもないことが起きてしまって・・・」
開墾を協力した村の若者が息を切らして家に走りこんできた。
たしか、歓迎パーティにいた気もするが、うろ覚えだ。
だいたい男の顔はまともに覚えないのが、私の悪い癖だ。
「あの村で何か起きたんですか?」
「すぐに来てほしいと、爺さんに言われて」
あの農業爺さんか。
村ではいろいろと教えてもらって、世話になったからな。
いかない訳にはいかないだろう。
「それでは、これから行こう」
「ありがとうございます」
街から街道に出て走る。
馬車の時間を待つより、走って行ったほうが早い。
若者はとにかく足が速い。
こういうときのために、伝達係として足の速い若者が重宝されるらしいから、その若者はそういう奴だろう。
「俊足だな。続けて走っても大丈夫なのかい」
「はい。まだまだ走れます」
普通に徒歩で村までいくと6時間はかかる。
だけど、休憩なしに走れば、この俊足君なら2時間半くらいだろう。
だけど、私がいるから急いでも4時間くらいか。
と思っていると。
「魔法使い様、そろそろ休憩します?」
「私は大丈夫だ。君?」
「私も大丈夫です。もっとスピード上げられます」
「上げてみようか」
「はい」
また、一段とスピードが上がる。
このペースだと2時間で着いてしまうんじゃないか。
それだけのスビードを出せる俊足君。
すげーーー、と思う。
だけど、それ以上にすげーーーと思うのは、自分だ。
なぜ、着いていける?
体力は正直自信ない。
戦闘があっても、ほとんど魔法に頼り切り。
いままで体力を使って物事を解決したことがない。
なのに、俊足君に追いついている・・・待てよ。
「もっとスピード上げるね」
「えっ」
さらに一段スピードを上げたら、俊足君を追い抜いてしまった。
必死になって追いつこうとしているけど、無理みたい。
「あれ?まだ余裕あるぞ」
自分の身体が自分ではない気がする。
何が起きているのか、身体の中を感じてみると。
「!」
なんと、魔素がぐるぐると巡っているのが分かる。
それも、土の魔素だ。
足底から大地の土魔素が上がってきて、身体中を巡ってまた足底から抜ける。
不思議な感覚だ。
「もしかして、こんなこともできたりして」
足に力をこめて、ジャンプしてみる。
「おおっ」
5mも地上から離れてしまった。
すごいな。
「あ、いけない。俊足君を置いてきてしまった」
少々待って、俊足君と合流し、村に向かって走って行った。
ただ走っています。それだけのお話だね。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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