第119話 女冒険者の受難
「どうして、誰も協力してくれないのよ」
B級ライセンスを持ったんだから、もっとバリバリ冒険したいのに。
誰も協力してくれない。
「どう?私もパーティに参加させてくれませんか?」
先輩のB級冒険者の人に声をかけても。
「今は剣士は揃っているから」
と断られてしまう。
なかにはもっと直接的に断ってくる人もいる。
「あ、B級と言っても実力がない奴はお断りなんで」
きっと、みんな影では言っているのよ。
「あいつ、土魔法使いに取り入ってポイント稼いだ奴だろ。あいつをパーティに入れると、手柄もっていかれてしまうぞ」
「本当にそう。命がけの現場に、信頼できない奴はいれてはダメだ」
分かっているのよ。
B級だと言っても、B級の力がまだないってことくらい。
だけど、そうでもしなければB級になれないじゃない。
「B級になったら世界が変わると思っていたのに」
C級ライセンスのときに見た、B級ライセンス持ちの扱いの良さ。
「ええっ、B級なんですか。どうぞ、この席使ってください」
「何言ってるんだよ。先に来たのは君だろ。待っているから、先に注文すればいいじゃないか」
「いえいえ。B級の方の時間を取らせるなんで無駄です。もしよかったら、ちょっとだけお話いいですか」
「そうかぁ。悪いなじゃあ先に座られてもらうよ。で、何が聞きたいんだい」
「どうやってB級になれたんだてすか?」
まだ駆け出し冒険者にB級ライセンスを持っているとあこがれの目で見られる。
もちろん、同じ冒険者だけではない。
貴族だって、指名依頼をしてくる。
名前を憶えてもらえて、身分は違っても同列で話ができる。
収入だって大違い。
B級ライセンスのパワーはC級とは桁違いだ。
「な、はずだったのになぁ」
現実は全く違う。
パーティを組んでもらえる人がいなくなった。
B級もC級も、誰も協力してくれない。
指名依頼なんて、なりたてB級にはありえないし。
初心者冒険者だって、なんかこそこそ陰口を言っているだけ。
「なんで、B級になんてなりたかったのかな」
ずっとB級になりたいだけで突っ走ってきた。
やっとB級になって、目的がなくなってしまった。
A級になれっこないことくらい自分で分かる。
努力だけでなれるのは、C級まで。
B級にすらまともになれなかった私がA級なんて無理。
「お金はそこそこあるのよね」
B級の依頼をこなしてきたから、持ち金はぜいたくしなけれど数年は暮らせる。
がんばってお金のために依頼をこなすことも必要ない。
「なんか、血、わき上げるような依頼でもないかしらね」
そんな気持ちでいつもの居酒屋の片隅で飲んでいると。
「すみません。B級剣士の方ですよね」
「ええ、そうよ」
「実は、折り入ってご相談があるんですが」
身なりがずいぶんと良い男。
どうみても、貴族にしか見えない。
「相談って、依頼ってこと?」
「そう思ってもらってかまいません」
心の隙があるときは、魔が入りやすいとよく言われる。
女剣士も、そんな状況にあった。
その男が女剣士の運命を大きく変えるとは、この時は全く分かっていなかった。
どうして誰も協力してくれないのよ・・・あんたのせいでしよ。 あ、お話が終わってしまう。
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