第117話 光と影
「いよいよですな」
「巨大な敵が生まれたと解釈していいのですか?」
「うむ。間違いない。我々の邪魔をする存在なのは間違いない」
帝都のはずれの隠れ家にいるのは、全部で12名。
すべて頭からすっぽりと黒いローブを被っている。
眼のところだけくりぬいてあるが、そこからは表情は見えない。
「では、そうそうに障害は取り除くに限りますな」
「もちろんだ。争いのない世界を作るためには必要ない者は取り除く、それが正しき行いなのだ」
「御意」
この者たちがいる帝都は、帝国の首都にして、最大の都市。
帝国の主要な組織の本部がすべて集まっている。
どんなことでも帝都の中だけで完結する、とまで言われた帝国の都だ。
土魔法使いたちがいる街からずっと離れた場所にあるが、そこまでしっかりと影響を与えることができる。
帝都で決まったことが、帝国内部、そして土魔法使いがいる街のような属国においても実行される。
ただし、隠れ家にいた12名の者たちは帝国の中にあっても、籍すら存在していない者たち。
つまり、影の存在。
影から帝国を大きく動かす力を持つ者たち。
その者たちが、帝国の一番西のはずれにある属国のまたはずれにある街に注目した。
そこで起きていることは、帝国の運命すら左右する大きな力。
「なぜ、今頃、あのような魔力が沸いて出てきたんでしょうか」
「それは帝国の生み出した枠から外れた者たちが、人が手にしてはいけない力を得てしまったからだ」
「太古の神どもの力を、ですか?」
「それ以外にあの光は説明できまい」
ここから先は、あの地のエージェントを使うしかあるまい。
12名の影者たちの中心人物は、そう考えた。
エージェントとは、普段はその地の住人として生活しているが、いったん指示が与えられると訓練された影としての力を解放して指示を実行する。
影の中心人物は、魔通信で指示を飛ばす。
「あの者たちを手段を選ばずに取り除くように」
一瞬で指示は帝国の版図のはずれまで届き、行動を促した。
土魔法使いとミントは、影のエージェントの標的として認識されてしまった。
新章スタートです。ふたりの覚醒が時代を動かし始めます。同時に敵も動きます。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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