第109話 据え膳はおいしくいただきましょう
「あとはよろしく頼む」
リーダーに軽く状況を伝えておいた。
据え膳があってさ、って感じで。
「それは、それは。モテる男はつらいねぇ」
「そんなことはないんだけどね」
「まぁまぁ。他のメンバーのことは俺がなんとかするから、楽しんでおいで」
やっぱり、こういうときは男同士だな。
話が早くてありがたい。
「こっちよ」
村娘が手招きする。
ちょっと他の家から離れたところにある家だ。
「ここは?」
「恋人たちの家、なの」
「へぇ」
「恋人たちはここで逢瀬を楽しむのよ」
そんな家が用意されているのか。
誰でも使えるのかな。
まぁ、どうでもいいか。
今はこの村娘とふたりきりっていうのがすごい。
「本当に街に行ったら、訪ねていってもいいですか?」
「ああ。どこまで協力できるかはわからないけど、困ったことがあれば言ってほしい」
「うれしいっ」
抱きついてきた。
ふたりでベッドに倒れこむ。
この部屋、恋人たちの部屋というだけあって、ほとんどベッドしかない。
あとは小さなテーブルがひとつで、椅子はない。
ベッドに腰かけてちょっとだけ何か食べたりするのだろう。
「私ね。自分の可能性を信じて街に行きたいの」
「何をしたいんだい」
「まだ、わからないの。何ができるかは」
「でも、ウエイトレスとかなら、引く手あまたになりそうだな」
「あ、それ考えてた。ウエイトレスだと正直、容姿って関係あるんじゃないかなって」
この村娘は、自分の評価、ちゃんとわかっているな。
そして、チャンスは貪欲に手に入れようとしている。
「うん。君はかわいいね。その大きな瞳は吸い込まれそうだ」
「ありがとう。でも、こんなことするの、初めてなのよ」
「えっ、じゃあ・・・」
「あ、エッチは初めてじゃないわ。初めて会った人とって話」
ちょっとがっかりしたような、安心したような。
微妙な気持ちになる。
だけど、こんなかわいい村娘に言い寄られて嫌な気がする男はいないよな。
仮に目的がチャンスをつかむためだったとしても。
この日は、しっかりと据え膳をいただきました。
お代わりもしちゃいました。
とってもおいしかったです。
身体も、気持ちも。やっぱり、素人さんだなぁっていうのも。
セミプロの女性にはお世話になっているけど、ちょっと違うなって。
もちろん、今夜限りの恋人ってことでね。
リゾートラバーじゃないけど、ビレッジラバーかな。
一度だけだから、思い出になるって、あれ。
楽しい思いをして、ぐっすり眠れた。
おかげで朝、すっきりした気持ちで目覚めると、村娘はすでに部屋にはいなかったんだ。
据え膳はおいしいらしいです。はい。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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