第106話 農村の苦悩
「とにかく耕地が足りないんです」
今は村長さんに村の悩みを聞いている。
この村長さん、40代後半くらいのおっさん。
「だから、この村の次男坊、三男坊は村を出るしかないんですよ」
この農村の問題点は耕地不足か。
子供が多く、人手より耕地が少ない。
「すると、耕地をふやせばいいんじゃないですか?」
「それはそうですが。開墾はすぐにはできないし、そこに人をさけるほど余裕がないんです」
要は開墾ができればいいのか。
それなら、土魔法でいけるかな。
「開墾できる土地はありますか?」
「それは、もちろん。いくらでもありますよ」
おっさん村長が村民の3人と私を連れて開墾予定地を見せてくれる。
「ここをどうしたら畑にできるんでしょう」
「まずは、切り株と大きい石を取り除くところからですね。力仕事だから大人の男にしかできません」
確かに、岩って感じの大きい石や、もともとは相当大きかったんだろう切り株とかがごろごろしている。
「この広場全体を片付ければいいんですよね」
「えっ、無理ですよ。そんなの。10人くらいでも何カ月もかかる仕事ですよ」
「そうでもない、じゃないです」
《振り分け:大物移動》
ぽんと、地面を叩く。すると、軽い地震が起きたように地面が振動を始める。
岩や切り株が大きく振動して、埋まっている周りの土が盛り上がってくる。
さらに振動が続き、岩と切り株が地面に浮き上がってくる。
「うわっ、何をしたんですか?」
「まずは、邪魔な物を掘り出しているんです」
「地面揺れてますよ」
「はい。これが一番簡単かな、と」
地面に露出した岩と切り株は隅っこの方に移動していく。
取り除かれた地面は、大きな穴がたくさん開いている。
「まずは、こんな感じですね」
「ど、ど、どういうことですか」
あれ、街長さん、ちゃんと説明していないのかな。
「街長さんから聞いてません?農村の悩み事を解決するようにって言われているんですが」
「たしかに、悩み事を教えてほしいとは聞かされていましたが」
「あれ?私のこと、なんて聞いています?」
「若いけどとてもすごい先生だから失礼がないように、と」
なんだよ。
ちゃんと説明していないかい。
「まぁ、いいか。大きいのどかしたら、どうするんです?」
「土を掘り返すんです。同時に中にある石はよけていきます」
「どのくらいの深さまで掘り返します?」
「30センチくらいでしょうか」
「それもやっちゃいましょう」
「えっ」
《掘り返し:石除き》
目に見えない鋤と鍬で、同時に開拓予定地全体を掘り起こしていく。
出てきた石は地上に上がり、隅に小山になっていく。
「できました」
「できましたって・・・どうやったんですか」
「土魔法です。土自体にどんな形になりたいか、教えただけですね」
あまりの簡単さにカルチャーショックを受けている様子。
土魔法は本当に便利だ。
「この調子で、いくつかの開拓予定地を耕したら、悩み解決しますか?」
「解決って!もちろん、解決です!!」
考えてみたら、農業って土づくりが大切っていうから。
土魔法が使いやすいのかもね。
開拓予定地はすでに耕している畑の3割くらいあるという。
そのひとつひとつを土魔法で耕していく。
さすがに丸々1日かかってしまったけど、悩みは解決できた。
「すいません、村長さん」
「なんでしょう」
「実は、ちょっと私、悩みがありまして」
おっさん村長さん、警戒した顔をしている。
一気に開拓できてしまうようなすごい魔法使い。
悩みの相談ということは、もしかしたら無茶なことを言われるかも。
こちらの悩みを解決してもらった後だから、無茶なことでも断れない。
連れてきているメンバーを見ると、女好きな人みたいだから、もしかしたら女か。
「えっと。私どもにできることなら協力しますよ」
こう言わざるを得ない。
そんな顔でおっさん村長は答える。
「実は、この村に来たのは1週間くらいかけて悩みを解決ようと思ってきたんです」
「はい」
「だけど、初日で終わってしまって・・・せっかく、メイドさん達連れてきたのに意味がないです」
「はぁ・・・それで?」
「メイドさんたちのお仕事、みつけてくれません?」
おっさん村長さん。
何をしたらいいのかピンと来なくて困ってしまった。
土魔法は農家のための魔法ですね。ここから田舎スローライフ物に路線変更・・・はないな。
今日はもう1話いきます。
楽しく書いて、楽しく読んでもらえたらうれしいです。
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