第103話 街長の悩み
「これは、これは。よくお越しくださいました」
「なんですか、急用って」
街長さんに呼ばれて、街庁区に来ている。
1街区であるここは、ほかの街区と違って番号では呼ばれず、街庁区と呼ばれている。
街の主要な機関が集まった役人のための街区。
その一番真ん中にある大きな建物が街長がいるところだ。
「実は困ったことがおきまして」
「というと?」
「食料が足りなくなっていまして」
「どうして、そんなことになるんですか。不作でもないですよね」
「ええ、なかなかの豊作の予定なんですが」
話を聞くとちょっとややこしい。
食料のうち、備蓄できる穀物とかの値段が高くなっていて、量も減っているというのだ。
ただ、街に入ってくる食料は変化しておらず、穀物が高くなる理由はないという。
「でも、高くなっているんですよね」
「はい。どうも買い占めが起きているみたいでして」
穀物は備蓄できるから、買い占めをすれば足りなくなって値段が高くなる。
それは当然の話だ。
ただ、買い占めまでして備蓄する理由がない。
戦争が近づいているなら、ありえるがそんな兆しもない。
「何か、最近、変化したことがあるんですか?」
「それが来てもらった理由です」
「と、いうと」
「穀物が上がっている理由が、新しい街の壁のせいだというんです」
「えっ、私のせい?」
どうも、新しい街ができると人口が増える。
だけど、周りで収穫できる穀物は増やすのは大変だから、時間がかかる。
すると、遠くから買い付けしないといけないし、そこも穀物が足りているとは限らない。
新しい街ができると、食料不足が起きる、と噂されているらしい。
「おいおい。もう、ずいぶんと壁ができあがっているらしいぞ。秋には完成するってよ」
「そんなに早くか」
「なんでも、土魔法の天才がいて、ガンガン壁を作っているってよ」
「こりゃ、俺たちも穀物を備蓄しておかないと食べるものがなくなるかもよ」
そんな噂が噂を呼び、食料価格が高くなってしまっているそうだ。
「なら、いい方法を思いつきました」
「どんな方法だい」
「壁を作るのをやめればいいんです」
「ばか!そんなことできるかっ」
いい方法だと思うんだけどなぁ。
そりゃ、壁作れば金貨が増えるけど今は使い道ないし。
ミントの借金はもう返したから、貯蓄が増えるばかり。
「いっそこと、新しい街は冗談でしたと・・・」
「そんなことを発表したら、領主様に私が殺されるぞ」
尊い犠牲になってもらう・・・じゃなくて。
他に方法はあるのだろうか。
「そこで土魔法の魔導士に相談なのですが」
「はい」
「まず、壁つくりはいったん延期します」
「延期じゃなくて中止でよくない?」
「ダメです。延期です。その代わりにやってほしいことがあるんです」
「なんでしょう」
要は新しい街を作るより前に、付近の農村の収穫量アップの手伝いをしてほしいとのこと。
土魔法なんだから、土いじりは得意だろうって。
「たぶん、できることはあるとは思うんですが」
「思うだけ?」
「実は農業はやったことなくて、何ができるかはわかりません」
「えーー、そうなんですか」
「ただ、現地にいけば農家の人と協力してみつけることできるかなと」
うれしそうな顔になる街長。
だけど、釘さしておこうかな。
「だけど、そうなると村での生活になりますよね。なんかなぁーーー」
「あ、そういうと思って、実はその生活をお手伝いするメイドさんを集めてみたんです」
えっ、メイド?
やっぱりメイドかぁ~。こいつ、それしか考えてないと思われているぞ。正解だけど。
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