第10話 秘境の探検をしてみた
「食うこと」と「寝ること」。
もうひとつ、人には欲求がある。
それは「エッチなこと」。
異世界に転生して、住んでいる人がどんな人なのか全く分からず避けてきた。
1か月は、ほとんど一人で生きてきた。
転生特典でもらった土魔法は便利な物で、サバイバルに必要なことはすべて土魔法で対応できた。
水も食料と寝る場所も土魔法でなんとでもなった。
だけど、ひとつだけ、どうしようもなかったこと。
それが「エッチなこと」。
実は転生前は40歳になっていて、そっちの面ではそろそろ落ち着いてきていたところだった。
ところが転生したら19歳。身体が求めるんですよ、身体が・・・。
なんて、誰に言い訳しているのか分からないけど、街についたら行ってみたいこと。
「エッチなこと」ができる場所。
もちろん、情報収集はきちんとやりました。
居酒屋に来ていたおっさんに聞いてみた。
「それなら西通りのさらに西の一帯がピンクゾーンさ」
おっさん、ありがとう。おかげで僕は秘境に冒険に来れました。
西通りを一本入った裏通り。
そこからピンクゾーンは始まっている。
どんなお店があるか、まずは状況把握が大切だ。
一本入った裏通りは、お姉ちゃんがいる酒場が中心。
店の扉の前に椅子を置いて、羽飾った女性が客引きをしている。
「あら、おにいさん。よって行ってよ」
最初はどんなお店か分からず、扉を開けてもらって中をのぞかせてもらった。
扉の後ろは黒いカーテンがあって、そこを少し開けてくれた。
お客さんはおっさんが数人いて、露出度が高い服のお姉さんと一緒にソファーに座って飲んでいる。
たぶん、おさわりくらいはオッケーだろう、と予想を立てた。
だけど、今日の目的は一緒にお酒を飲むことじゃない。
男の欲求の爆発だ!
もう一本入った裏通り。
そこは、もっと怪しさ爆発している。
看板もなく、何屋さんなのか、全く語っていない。
でも、男の勘で、目的地がそこなのが分かってしまった。
しかし、どのお店に入るべきか。
それが問題だ。
その通りの端から端まで歩いてみる。
ただし、お店の扉から少し離れて歩く。
「ほら、お兄さん。こっちおいで」
近くに行ったらお店に引きずり込まれる。
逃げられる自信がない。
砂漠でハイエナに襲われたときでも、冷静に土魔法で撃退した。
でも、ここでは撃退することも、逃亡することもできない気がする。
君子危うきに近寄らず・・・十分、近寄っている自覚はあるが、最後の一線は大切にね。
一通り歩いて、距離を持って観察した。
その結果、一店だけ「ここは」ってところがあった。
客引きをしているのが男ではなく女で、それもタイプの女だった。
他のお店も女の客引きはいたけど、色気ぷんぷんって感じ。
もうすこし薄味なのがいいんだけど。
そのお店の女は、ごく普通に見える。
かわいい女の子。
歳の頃は20をちょっと超えたくらいかな。
そこまで、戻ってお店の扉に向かう。
「あ、いらっしゃいませ。どうぞ」
彼女が扉を開けてくれる。
中は真っ暗で全然見えない。
虎穴に入らずんば虎子を得ずだ。
危険があると分かっていても飛び込むのが男だ。
彼女がエスコートして、お店の中を進む。
扉があって、その中に。
そこで待っていたのは・・・モンスターだった。
ごめんなさい。ちゃんと女性でした。だけど・・・モンスターだった。
それでも、一か月もしてなかった私は、してしまった。
「また来てね」
モンスターに送られて裏通りに戻った。
銀貨1枚の料金。
それはいい。だけど・・・もう来ることはない。
秘境を探検するのは、まだ私のレベルが低すぎることを実感した。




