powder snow...2
粉雪がアスファルトに解けるように、ゆっくり、少しずつ、私たちは他人になっていく。
不意に吹き付けた風が、去ってゆく背中から、白い雪と、君の香りを運ぶ。
「まって」
思わず溢れた掠れ声。
景色が真っ白になってしまう前に、伝えなきゃ。
「ありがとう」
あたたかい手の温もりも、涙も、笑顔も。
幸せの結晶がそこにあったことを確かめたい。忘れたくない。
「こちらこそ、ありがとう」
それは、まるで付き合い始めた頃のような優しい声だった。
最近はすれ違ってばかりだったから、もう聞くことはないと思っていたのに。
その優しい声が、もう終わりなんだ、って、さよならなんだって突きつけて来ているような気がして、とてつもなく切ない。
心変わりを責めたって、仕方がない。私にだって、少なからず責任はある。
だけどね、私が描く未来にはずっと君が居たんだよ。
『あなたの未来に、私はいましたか』
声にならない、かじかんだ思い。
少しずつだけど二人で歩いてきた道に、雪が降り積もる。
帰れなくなる前に、お別れしよう。
「ばいばい」
うまく、笑えない。
「幸せでいてね」
溢れ出す涙。後悔。
「ああ。それじゃあ」
最後に、私たちはお互いの手を握る。
こんなにも、かじかんでしまった。
このとき、彼の頬に、雪がキラキラ光って溶けていくのが見えた。頬が濡れていく。
これは、私たちが確かに恋をしたという証だ。
もう一度、風が吹く。
それを合図に、私たちは手を離した。
そして、背中を向けて、君は歩き出す。
粉雪は、いつの間にか大粒になっていて、振り返ってみても私たちの不恰好な足跡はもう見えない。
ポケットに突っ込んだ手を一度「ぎゅっ」と握って、私は、雪がつもるのをただただ、眺めていた。




