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リロード〜二度目の魔王は世界を巡る〜  作者: ハヤブサ
過ぎ去りし罪の唄〜一章『謎の少女』〜
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【アイの謎】


 アレフは露骨に面倒くさそうな顔をしたがマリンは構わず彼を部屋に引き戻した。

 そして冷静さを取り戻すためか、眼鏡の位置を調整する。


「私の依頼を受けなさい」

「……なんだ、依頼って」

「実はアクアリアの長官は伝統として年に2回ある場所にお参りに行くのよ」

「お参り?」

「ええ、私たちは先祖に感謝を伝えるって聞いてるけど。とにかく、そのお参りはここから東に進んだ場所にある【アクア殿】と呼ばれる小さなお寺のような場所でやるの。普通なら冒険者とかを雇って護衛をさせるんだけどね。実はそろそろ行くのよ、ちょうどよかったわ。アレフ、護衛してちょうだい」

「なんかどこかで聞いたような話だな。というかお前に護衛なんていらないだろ」


 アレフのその指摘にマリンはギクリと冷や汗を垂らした。実は普段、彼女は護衛をつけることなんてしていない。「めんどくさいし、1人で十分」という理由で特に護衛をつけず、秘書と2人でお参りに行っていた。事実、

 彼女の実力は高いため、窮地に陥ったことなどなかった。


「そ、そんな事ないわよ! というかあんたに拒否権なんてないわ! 私に貸しがあるんだからすぐ返しなさい!」

「ま、まぁ……仕方ない。わかった」


 流石のアレフも、有無を言わせぬマリンの物言いに押し切られる形となった。


「で、いつ行くんだ」

「正確な日にちなんて決まってないわ。今日行くこともできるけどもう暗くなってきてるし、明日にしましょう」

「そうか、ならどこか泊まる場所を探してくる」

「こ、ここに泊まればいいじゃない。お仲間と一緒にね」

「ありがたいが、いいのか?」

「ま、まぁ依頼をしてる立場だし別にこれくらいはいいわよ」

「そうか。だが1つ注意して欲しいんだが、俺はあくまでも人間のアレフとして生きてる。くれぐれも俺が元魔王だってバラすなよ?」

「それはわかってるわよ」


 というわけでアレフ達は泊まることになった。一階二階は仕事部屋だが、三階はマリンの私室のみのため、アレフ達はそこで寝ることになる。

 寝る前に料理がもてなされた。


「うわー、凄い! ここの料理美味しーねー」


 アイは楽しそうに料理を食べていた。


「アレフさん、どんな手品使ったんだよ?」


 ガンズはアレフにそう尋ねるが、「色々あった」とお茶を濁して彼は答えた。


「アレフは、どうやってその2人と出会ったの?」

「アイは記憶喪失で倒れてたところを俺が拾ったんだ」

「えっ、そうだったの!?」


 マリンに聞かせたはずがガンズが驚いていた。


「そういえばお前に言ってなかったな」

「初耳だぜ。だからこいつ時々常識ねーのか」

「うるさいよガンズ! ガンズだって馬鹿でしょ」

「誰が馬鹿だ!」


 アイとガンズがキーキーと喧嘩し始めたのを尻目に、マリンは少し驚いていた。


「え、じゃあそのアイちゃんの記憶を戻してあげようとしてるの?」

「まぁ……旅のついでだ」

「随分お優しいことで」


 マリンは笑みを浮かべて、からかうようにアレフにそう言った。アレフはバツが悪そうに何も言わなかった。


 流石にアイとアレフ達が一緒に寝るのはまずいということで、アレフとガンズが、アイとマリンが一緒に寝ることになった。

 ベッドは1つなので、アレフとガンズが一緒のベッドで寝るのだが……。


「うがー」

「寝れやしないぞ! なんでこいつこんな寝相悪いんだ!」


 しきりに頭を蹴飛ばしてくるガンズに苛ついて、アレフは寝れなかった。アレフは夜風にでも当たろうと、外に出た。

 街明かりはすっかり消えている。ふとアレフは先ほどマーメイドバーで貰った住所の事を思い出した。


(どうせ寝れないし、遊びに行くか)


 と、彼は覚えていた住所に向かい、家の戸を叩く。少しして戸が開くと、そこには頬を赤らめ、目をとろけさせた人魚の女の姿があった。


「き、来てくれたんだね」

「暇つぶしにな」


 アレフはそのまま家の中に入った。さすが人魚族の家というか、部屋には至る所に水路がある。

 アレフがあたりを興味深そうに見ていると、その女はアレフをベッドへと押し倒した。もちろんアレフはわざと押し倒された。


「私から離れられないようにしてあげるよ」

「そいつは楽しみだな」

「私はヤーリン。あなたは?」

「アレフだ」

「そ、アレフ……楽しみましょう」


 そう言って、彼らは生まれたままの姿になったのだった。

 そしてそれから数十分後。


「ちょっ、待って無理! もう無理だってぇ! ほんとにっ! こんなの、聞いてないぃ!」


 乾いた音とヤーリンの弱々しい声が部屋に響いた。

 そして更に数十分後。


「ひゅっ……ひゅー……」

「おーい、俺に天国を見せてくれるんじゃなかったのか?」


 ペチペチとヤーリンの頬を叩くアレフだったが、彼女は恍惚な表情をしたまま意識が飛んで、口から隙間風のような呼吸をするのみだった。


「ま、久々にスッキリしたし、これで寝れるか」


 そう言ってアレフはスヤスヤと寝たのだった。そして次の日。ヤーリンが起きた時にはアレフは既に家からは去っていた。


「あ、あんな凄いの、初めてだった……もう一回、来てくれないかなぁ……」


 本気で焦がれる人魚族なのであった。

 一方その頃、アレフはマリン宅に戻っており、出発の準備をしていた。寝ぼけたガンズがあくびをしながら起き上がっている。


「あれ、アレフさん。もう起きてたんだ」

「貴様、寝相はもう少し直した方がいいぞ」

「あ、それ孤児院のみんなにも言われた。へへ」


 ガンズは悪びれる様子もなく笑った。


「全く。さっさと支度をしろ。そろそろ行くぞ」

「へーい」


 ガンズの準備も終えて、アレフ達はマリンと合流した。そのまま彼らは家を出て、街の外まで歩く。

 外には既に馬車が待機していた。マリンはそれに乗り込み、アレフ達も続いて乗っていく。


「目的地まではどれくらいかかるんだ?」

「んー、まぁ40分ってところかしら」

「なるほど。というか本当に護衛必要か? ここって盗賊とか出るのか。出たところでお前がやられるとも思えんが」

「ま、まぁいいじゃない! 必要なのよ! 必要ったら必要なの!」

「まぁ別にもういいがな」


 そんな会話をしつつ、アレフ達は目的地に到着した。アクア殿は、石でできた小さな建物で建物を囲むように四つの柱が建てられていた。そこには人の名前がたくさん書かれている。


「うわー、すごいいっぱい人の名前が書いてあるね」


 アイが感心したようにそう言った。


「このアクア殿を作った人たちの名前がその柱には書かれてるの」

「ほう……」

「こっちよ」


 マリンは石造りの建物の中へと入っていく。中は特に装飾などなく、中央に石碑がそびえ、それを囲むように部屋に水路が巡っていた。


「あの石碑に祈りを捧げるの」


 マリンはそう言って水路の上にかけられた小さな橋を渡り、石碑の前へに着くと、そこに跪き、目を瞑って両手を握り祈りを捧げる。

 アレフは石碑に書かれている文字を見た


(こいつは……古代文字。間違いない、誰が何の目的でこんなものを……)


 アレフがそう思っていると、不意にアイが口を開いた。


「『夢は覚めない。まだ覚めない。貴方はまるで水の精霊のように眠る』……」


 急に喋り始めたアイに対し、マリンとガンズがぽかんとしている一方で、アレフは目を見開いてアイを見た。


「アイ、お前! 古代文字が読めるのか……!?」


 アレフはアイに詰め寄ってそう尋ねる。だがアイは、困惑していた。


「え? な、なんかわかんないけどアイ、あの文字読めたよ……?」

「どういう事だ……何故読める。記憶を失う前に読めたというのか? この歳で? そんな馬鹿な……!」


 アレフは驚愕していた。そして更に驚愕の事態が起きる。アイの言葉に共振するように、石碑が淡く光りだすと、石碑から青い玉が現れ、アイの手元に吸い寄せられるようにして収まった。


「なんだろう、これ?」

「アイ、お前いったい何をした?」

「え? な、何もしてないよ。アイあの文字読んだだけだもん」


 アレフはアイの持つ青色の水晶のような玉を見てみるが、何もわからなかった。

 そんな彼を見て、マリンが尋ねる。


「ど、どういう事? アレフ」

「わからん……この石碑に書かれている古代文字をこいつは読んだんだ。俺以外にまさか読めるやつがいるとは」

「古代文字。あっ、そうか、アレフならこれ読めるんだ。水の精霊……神話では確かに敵にやられて眠っていた期間が長いとは言われてるけど」

「マリン、お前はこの石碑について知らないのか?」

「ええ。伝統的に祈りを捧げていただけだもの。でもそんな事が書かれてたのね」

「ちょ、ちょっと待った。アレフさん古代文字読めんの!? どういうことだよ!」


 ガンズが驚いていた。アレフは面倒そうに説明した。


「知り合いに研究家がいて、俺も教わったから読めるって事で納得しろ。いいな」

「いや、無理やりすぎない?」


 ガンズは無理やり納得させられたのだった。

 アレフはそんな事よりも、ぽけーっとしているアイを見て、1人思案していた。


(アイ……こいつ、一体……)

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