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リロード〜二度目の魔王は世界を巡る〜  作者: ハヤブサ
魔王と勇者〜六章『儚き過去に想いを重ねて』〜
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【ロキの覚醒】


 ロキ達はオロロ遺跡から馬車を使い急いで王都へと戻った。

 だが既に王都は火の海となっていた。


「な、なんだこりゃあ」

「この前の王都襲撃よりも酷いぞ……!」


 城下町は既に至る所に銀の槍の構成員達がおり、町を破壊して回っていた。

 プロ勇者達もそれに対抗はしていたが数が足りていない様子だった。


「敵が多過ぎる……プロ勇者が全然足りてないぞ」

「どうするロキ。城もやばそうだがこっちを放って置くわけにもいかないんじゃ……」

「くそ、そうだな……どうすれば――」

「あっ、あんたは鮮烈のロキじゃない!」


 ロキが悩んでいると彼らの後ろから声がかかった。声の人物はちょうど王都に到着したばかりのクレアだった。


「魔女クレア! それにアリスも。君らも来たのか!」

「そうよ。ちょうど良かったわ! あんたら城下町の方をお願い! 私達は城の方に行くから! じゃあ頼んだわよ!」


「よろしく頼んだ」とアリスもロキの肩を叩き、そのまま走って城の方へ向かってしまう。


「えっ、ちょおい! 僕はまだこっちを受け持つとは……あ、もう行っちゃったよ」

「仕方ねえやロキ。俺達はこっちの市民を守ろう。出世はしづれえがこれも大事な仕事だ」

「それはそうだが……なんか釈然としないな。まぁいい、やるか」

 

 そう言うと、ロキは走り出し苦戦しているプロ勇者達の元へ行くと敵を斬り伏せながら指示を飛ばす。


「僕は勇者レベル4のロキ=サザンクロスだ! 今からこの場は僕が指揮する! レベル3以上の勇者はドラゴンクラスの敵を相手する時は相手より多い数で! 多対一の状況を作れ! レベル2でも自信があるものはスライム状の魔物を倒せ! 胸の中心を破壊すれば死ぬ! 騎士団は自分の実力を考えそれぞれ配置につけ! それ以外のものは市民の避難を急げ!」


 ロキの指示が駆け巡るとバラバラだった騎士団やプロ勇者たちが見違えるように動き始める。

 ロキは家の屋根に登り辺りを見渡すと、一番強敵がいそうな場所を見つけた。


「あそこは、貴族院か!」


 ロキは走り出し、貴族院へと向かった。

 豪華で煌びやかな貴族院の景色は既になく、あたりは燃え盛る炎と転がる死体で酷い有様だった。


「おい、やめろ!」


 ロキが向かった先には震える貴族を剣で串刺しにして楽しんでいる魔族の姿があった。

 魔族はロキの方を振り向く。彼はロキとクレアが二人掛かりで挑みやっと倒した白狼族ホワイトウルフのザードだった。


「あぁ? おぉ、お前はあん時の奴じゃねーか」

「ちっ、やはり君はいたか。他の二人もいるのか? 虎族ワータイガーとミノタウルスの魔族は」

「あぁ、あいつらは死んだよ」

「死んだ……?」


 ザードの台詞にロキは動揺する。


「あの時お前らに惨敗した俺たちは新たな力を得るためにゼロに“改造”してもらったのさ。だがその改造にあいつら二人は耐えられなかった。だから死んだ」

「へぇ……それじゃあ君は更に強くなったってことかい?」

「やってみれば分かると思うぜぇ。はっはー! ホワイトスピア!」


 ザードから放たれた氷の槍がロキを襲う。明らかに以前戦った時より槍の速度も大きさも大きくなっていた。


(これはまずいぞ……!)


 ロキはなんとかそれを避けるが焦りを隠せなかった。


「よく避けたなぁ。でもこれはどうだ? ホワイトスピア!」


 ザードはなんと自身の体の前に浮遊する氷の槍を無数に出した。


「死ねぇ!」


 そしてそれをロキに向かって投げつける。


「くそっ。風属性位階中! 業風タイフーン


 ロキは腰に差したダンジョンから持ち帰った聖剣らしきものを抜き取りそれに風を纏わせてそれらを撃ち落そうとしたが、やはり全ては撃ち落とせず、氷の槍がロキの肌を引き裂いていった。肌から滴る血が剣にも落ち、刀身を赤く染める。


「ぐぅ……!」

「はははは! どうしたどうしたぁ!」

「くそっ……これが本当に聖剣か? 全然役に立たないじゃないか!」


 ロキはそう叫ぶ。

 するとその時、どこぞから渋い老人男性のような声が響く。


「儂に向かって役に立たないとは、随分な口を利くのう。小僧」

「はっ? まだ敵がいたのか!?」


 ロキは咄嗟にその場から離れ、辺りを見渡すが人影は見当たらない。


「どこを見とる。こっちじゃ、こっち。お主が握っとる剣じゃて」

「え? ……剣?」


 ロキは思わず自分が握る剣を見る。するとさっきまで普通の剣だったはずのそれは、何故かつばの部分から目玉が2つ現れていた。


「ぎゃあああああ! け、剣に目があるっ!?」


 思わずロキはその場に剣を落とす。


「おいこらっ、儂を落とすんじゃない! はよ拾わんか!」

「ぼ、僕こういう気持ち悪いの駄目なんだ」

「早よせんと敵の攻撃が来るぞ!」

「何やってんだてめえ、さっきから一人でよぉ。さっさと死ねぇ! ホワイトスピア!」


 ロキの行動に苛立ちを覚えたザードが氷の槍を再び大量に召喚し、それをロキ目掛けて投げた。


「ほれきたぞ! 早く拾え」

「く、くそっ」


 ロキは剣を拾う。


「魔法を唱えろ! さっきと同じやつでいい」

「いやでもそれだと防ぎきれない――」

「はよせい!」

「あぁ、もう! 風属性位階中、業風タイフーン!」

「おほぉ、久々の魔力じゃ! いくぞぉ!」


 剣に風を宿らせると、剣が光り出し纏った風が徐々に大きくなっていく。


「な、なんだこれ。これが位階中の魔法?」

「感想はいいから早く放たんと槍が来るぞい!」

「っ! うおおお!」


 ロキは半ばヤケクソ気味に剣を迫り来る氷の槍に目掛けて振るうと、辺りに巨体な旋風が巻き起こり、氷どころか辺りの家も粉々に砕いた。


「なっ、ちょ――待て」


 ザードが焦る間も無く風は彼を襲った。


「ぐあああああっ!」


 旋風はザードを巻き込むと彼の身体を一瞬にして引き裂いていく。彼の身体のあちこちから血が吹き出し、そして風が過ぎ去るとザードは地面に叩きつけられた。


「あが……が……」


 ザードは意識を失いかけていた。

 ロキは今起きたことにただ驚く。


「な、なんなんだこの威力は」

「儂のお陰に決まっておろうが」

「き、君ってやっぱり聖剣なの?」

「当たり前じゃろ。儂こそ聖剣【ラミア】」

「聖剣って喋れるのか」

「別に聖剣なんじゃから喋るくらいしてもおかしくなかろう」

「そ、そういうものかな? それよりこんな力があるならなんで最初の攻撃で助けてくれなかったんだよ」

「寝てたんだから仕方あるまい」


 全く悪びれる様子のない聖剣ラミアにロキは呆れていた。


「寝てたって……」

「お主の血で目覚めたのよ。久しぶりに“良い血”に会えたからな」

「良い血て、吸血族ヴァンパイアみたいだね」

「それよりお主名は?」

「ロキだ。ロキ=サザンクロス」

「ふむ、ロキよ。あの白狼族ホワイトウルフはまだ息があるぞ。早く仕留めろ」

「あ、ああ……」


 ロキはラミアに言われるがままザードの元へと歩く。ザードは息こそあるものの、身体中から失血しておりもはや動ける状態にはなかった。

 ロキが仰向けになっているザードを見やると、ザードは朦朧とした意識の中ロキを睨め付けた。


「ちっ……なんなんだ、その化け物じみた力は……くそっごほっ。俺の改造した力で歯が立たないなんて……」

「悪いが僕が一番困惑してるんだ。さて、時間もない。何か最期に言うことはあるか?」

「最期にねぇ……はぁはぁ。相変わらず腹立つぜ。その自分が正しいと信じてやまない偽善者の目がよ……」


 ザードの言葉にロキは答えない。


「……せいぜい城の中で何が起きてるのか自分の目で確かめるんだな……。はぁはぁ、くそ……生まれ変わりがあるなら、人間のいない世界に生まれたいもんだぜ――」

「そうだと良いな。じゃあね」


 ロキが剣をザードの心臓に突き刺そうとする。


「ああ、そしてお前も……死ね――破滅を奏でろ輪廻の花。自己破壊連鎖オーバードライブ!」


 瞬間、ザードの身体が光り輝き出す。


「早く殺せロキ! 自爆魔法じゃあ!」

「なっ!?」


 ロキは即座にザードの心臓を突き刺したが彼の輝きは止まらない。


「儂を盾にしてお主の最大魔法を唱えろ!」

「風属性位階上! 斬斬舞きりきりまい!」


 ロキは剣を構えて防御の姿勢に入る。剣から溢れる風はロキを包み込むようになり、巨大になっていく。


 そしてザードの輝きが頂点に達すると共に巨大な爆発が辺りを覆った。その衝撃は辺りを破壊し尽くし、貴族院の殆どが全壊した。


 爆発から少しすると辺りには何も残っていなかった。


 かろうじて逃げのびていた貴族たちも瓦礫に埋もれ、うめき声をあげる。

 

「う、うぅ……」


 ロキはというと爆発した位置から遥か遠くに吹き飛ばされはしたものの大きな傷はなく、無事だった。


「どうやら無事だったみたいじゃの」

「じ、自爆魔法食らってこの程度で済むとは思わなかった……」

「魔力が完全に行き届く前にお主があの魔族の心臓を刺したからな。爆発自体は不十分だったのじゃ」

「あ、あれで不十分か。本当だったらやばかったな」

「死んでるわ」


 ロキは自分に被さっている瓦礫を押しのけると、立ち上がった。


「立ち止まってはいられない……とにかく埋もれた人達を助ける為にも指示を出さないと」

「元気じゃの」


 そうしてロキは再び指示を出すために城下町に向かって走り出した。

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