表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

おいていかれる

作者: みりん

おいていく側の気持ちは、まだ知らない。

好きだな、とか。

憧れる、とか。


大抵そう思う相手は、私よりも年上の人だ。


例えば家族。

私に弟や妹はいない。


例えば先輩。

大きな背中で、振り向いて引っ張ってくれる。


例えば友達。

生まれが遅い私の周りには私より早く歳を取る人が多い。


例えばテレビの中の人。

輝いて見えるその表情、未来に夢をくれる。


例えば音楽を作る人。

一目惚れするような素敵な曲が溢れて、私を生かしてくれる。


勿論、例外もある。

それに私が歳をとれば、それだけ私の後ろに人が増えていく。

年下に憧れたっていいじゃない。



だけど、どうしてだろう。

憧れる人は大抵、私よりも先を生きている。

遅く生まれても、私よりも先を生きている。


理不尽じゃないか。


こう、どうしようもなく、だらだらと、生きているだけの、醜い自分が。


どうして。


もっとゆっくり進むべき人が、なんで。


傷つかなくてはならないのか。


何かを失わなければならないのか。


永遠の眠りに囚われなくてはならないのか。



耳にする度に泣き叫びたくなる。

なんで、どうしてと。

ずるい、ずるいと。

どうして私じゃないのかと。


私ばかり生きてずるいじゃないか。

私ばかり貰ってずるいじゃないか。


皆ばかり眠るのはずるいじゃないか。

私ばかり泣かせてずるいじゃないか。

私をおいていくのはずるいじゃないか。



眠ってほしくない。

生きていてほしい。

生きつづけてほしい。


代わってほしい。

見せないでほしい。

私にほしい。

私を醜くしないでほしい。


なんて醜いんだろう。

人の眠りを悲しみながら。

勝手に傷つき、無責任に願望ばかり抱いて。


でも、だって、理不尽じゃないか。


生きたい人が、生きるべき人が。

生きてほしいと言われる人が。

そんな人ばかりが眠りについて。


代わらせてくれという自分が生き残るなんて。

おかしいじゃないか。

理不尽じゃないか。


私は沢山のものを与えられてきた。

それなら此だって欲しがったっていいだろう。

同じように与えられたっていいだろう。

私が欲しがるものは、きっと相手も欲しがるものだ。

私ばかり得する話じゃない。


どうして叶わないんだろう。

理不尽じゃないか。


そんなこと考えても。

こんなこと叫んでも。

なんにも代わりやしない。


相変わらず生きてる私のままだ。



醜い私をおいていく人たちは。

そしてその存在をおいていく。


例えば、子孫。


例えば、記憶。


例えば、絵画。


例えば、映像。


例えば、声。


例えば、曲。


色んなものをおいていくから、まるで生きているみたい。

ほら、生きているみたいじゃないか。

生きているじゃないか。

まだ、生きているじゃないか。


おいていかれたものたちを、私は手にしていく。


まるでその眠りを実感できない。

まるで生きているようにしか思えない。


だからこそ、生きていたことが分かってしまう。

生きていた過去が分かってしまう。

眠っている今が分かってしまう。



なんでだろう。

叫ばずにはいられない。


おいていかれたものたちばかり生きつづけて。

おいていった者たちばかり眠りつづける。


おかしいじゃないか。

理不尽じゃないか。



私はおいていかれるために生きているんじゃない。

私は失うために生きているんじゃない。

私は生きてほしいと思っているだけなのに。



今日もまた、おいていかれたものたちをかき集めて。

理不尽じゃないかって泣きながら。


また私も、おいていかれる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 心に響くものがありました [気になる点] 意味が良くわかりません。 [一言] スヌーピーの名言で、なんかそれっぽいのあったので、 もしご存じないのなら 検索してはいかがでしょうか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ