干し柿篇 【果物】について
(華やかな生バンド(所在不明)のOP曲が流れ、何処だかよくわからない草原の一角に二つの影が佇む)
「さて、栄えある第一回の解説対象は……ふむ」
「……最初から、此れか」
(二人の前に出てきたのは干し柿)
「ですが、此の果実は本文中で中の賢人公が解説していらっしゃった気がしますが」
「あれでは不十分、と云う事であろうよ」
「まあ、確かに、あの解説では何が怖ろしいのか解り難いかもしれませんね」
「其れでは、始めるとしようか」
「先ず、果実に感じての認識の差異を、人形姫の式から解説して貰いましょうか」
(言葉が終わるや否や瑠璃の蛍火が収束拡散し、小さな影を生み出す)
「お招きに預かりまして恐悦至極に存じます。主様の御許しを戴いた百科が参りました」
「(珍しい物を見る様子でぽつりと)片翼か」
「まあ、端的で言葉の少ない専科殿がいらしても話の進みは遅いでしょうから(苦笑)」
「北の棟梁殿の秘伝書殿、西洲の棟梁殿の宝剣殿、御久しゅうございます。主様の命により、百科がお手伝いすべく参りましてございます(にっこり無邪気笑顔だが何処か黒い物が渦巻く威圧感満載)」
「(笑顔でさらりと流し)では、先ずは果実の説明をお願いしましょうか」
「はい、承知致しました。僭越ながらご説明申し上げます」
「主様の命を受け、秘伝書殿の指示を受けました百科が申し上げます。
春香様にとって果実とは、
果物 の 実
と云う意味に他御座いません。
此の場合の果物、とは、樹木に生る 実 。そしてこの場合の 実 とは、樹木が己が子孫を世に残す為に生成した種子を果肉と呼ばれる有機物質で包んだ物体である事が大半で御座います。
此の実は春香様の世界では生体が活動するに必要な熱量を発生させる為の摂取可能な有機物でしかなく、土に撒けば樹が生える、と其の様な存在で御座います。
ですが。
我が国におきましては、
果実 は 実 の 果て
実 とは、まことであり確かに其処に在る力を指示します。
樹木が己の内に保有する力を外へと結集させた、謂わば力の結晶。樹木自体が長い年月をかけて力を有し大きくなる為、其の実とあれば、内包する力はとてつもなく大きく恐ろしい物で御座います。特に柿は実の生成に時間がかかりますので、他の果実に比べても力の内包量は大きく、扱い如何によっては其の身処か周辺の土地を巻き込んで抹消される事を覚悟しなくてはいけない危険極まりない物なので御座います。
主様の背の君様は、
「しかも、渋柿」
と仰せで御座いました。
此れは、渋柿は更に力の内包量が大きく、此の国の生き物であれば触れようとは考えない果実故の言葉に御座います」
「……なるほど。随分認識が違う(興味深げに頷く)」
「此処迄とは思っていませんでしたね……(苦笑)」
「確かに、森の竜女殿の認識であれば、何の恐れも無く実を集めようが……(苦笑)。吾が主の驚愕は察して余りある」
「此れを主が見なくて本当に良かったですよ(苦笑しつつ安堵)」




