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カートノリョウ

作者: プルコギ

 これは私が小学六年生の頃。国語の授業の出来事である。前日に教科書で学んだ物語の感想を作文に綴り、次の日にクラスの皆の前で発表する形で行う国語のオリエンテーションを行った。

しかし、私は昨日書いた作文を忘れてしまった。先生が言う。


「作文を忘れた人は、かーとのりょうを読みなさい」


かーとのりょう、とは? 疑問符が頭に浮かぶが先生はそのまま授業を続けてしまった。『かーとのりょう』がよく分からない私はそのままイスに座っているしか無く、じっと同級生の発表を聞く他なかった。そのようなことをしていると肩を叩かれた。先生である。


 「何もしてないで早く、かーとのりょうを読みなさい」


きつい声で叱られた私だが、やはり『かーとのりょう』としか聞こえない。先生は「読みなさい」と言った。つまりは『カートの量』と考え「ある程度の量を読め」の意味だと勝手に脳内変換する。教科書の一ページを開き、黙読する。

 読み進め十ページに差し掛かったところで肩をたたかれる。先生だ。小声だがしっかりと私には「廊下に来い」と聞こえた。指先は入り口に向いている。死刑宣告をされた気分だ。足取りは重く、たかが五~六メートルがとてつもなく長く感じられた。


 廊下に出た。先生がいる。寒かった。恐怖で頭の中がぐちゃぐちゃだった。

 「なぜ読まない!」

かーとのりょうが分からないからです。

 「先生の言うことはちゃんと聞け!」

かーとのりょうの意味を教えてください。

 「今度はちゃんと読め!」

訳が分からなくて鼻水と涙でぐちゃぐちゃだった。


 ……地獄から解放はされたが『かーとのりょう』については分からず仕舞いであった。このままではまた地獄へと舞い戻る羽目になる。


 「川とノリオを読むんだよ」


不意に隣から声がした。


カートノリョウ


かーとのりょう


かわとのりお


川とノリオ


謎が、解けた。教科書を開く。少し探すとあった。『川とノリオ』だ。さっそく読み進める。











……怒られない。正解だったようだ。


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