これほど役に立たない転生があっていいものだろうか
王立学園の食堂で、お友達のキャロルとランチを食べていた。
大好きなお肉だったので、「お肉~!」と喜びながらお肉だけを食べていた時に、「あらいけない、三角食べしなきゃ!」と口に出した。
「え?」
キャロルがきょとんとする。
私もきょとんとする。
「さんかくたべ…ってなに?」私が聞くと、
「こっちが聞きたいわよ!」と怒られた。
「さんかくたべ…? って何だっけ。たしか、こう、肉食べたら、スープ飲んで、パン食べて…みたいな…」肉やスープをフォークで順番に指しながら記憶をたどる。…ハッ!
私は電撃に撃たれたような衝撃を受けた。
(こ、この記憶は! 転生前のもの…!)
「アリス?」
ぼけっとしてたせいでキャロルが心配している。
「ああごめん! なんかその、急に昔のこと思い出したみたいで…」
「昔のこと?」
「うん、なんか、前世っていうか」
「前世!?」
「お、おかしいよね。なんか違う世界の知識が浮かんでくるのよ」
あああ、こんなこと言ったら、頭おかしくなったと思われるよね~どうしよう~~~と思いながらも正直に話していたら、意外にも
「ううん! そういうの聞いたことある!」と受け入れられた。そういうものなのか。
「三角食べっていうのはね、主食と汁物と副菜をこう、順番に食べることなの。1種類だけを一気に食べるのは、あまり良くないって言われてて、そう教わった」
「へー! すごいね! 別の世界の教えなんだ!」
すごいと言われてちょっと嬉しくなる。そうよねすごいよね! 別の世界の知識があるんだもん!
『特別な人間』になった気分!
「他には他には? どんな知識があるの?」
こんなふうに求められたら期待に応えなくては! 私は記憶の糸をたぐりよせる。
「他には…『食事の前にはいただきますを言う』とか…」
「……」
「食事の後には『ごちそうさまをする』とか…」
「……どこの世界でも、あいさつは大事ってことね」
あれ? こんなのしか浮かばない? なんで? なんか難しいことなかったっけ? えーとえーと、あっそうだ!
「卑弥呼の歯がいーぜ!」
「わあなにそれ!? なんかの呪文みたい!」
良かった喜ばれた!
「これはね、よく噛んで食べることが、どんなにいいかってことを教える言葉でね! 『ひ』が肥満予防、『み』が味覚を鍛える、っていうふうに、いろんな利点の頭文字なのよ」
「へー…」
明らかにテンションが下がっている。期待外れの情報だったらしい。
(おかしいなあ、なんかもっとすんごい知識ないのかな。医学とか科学とか数学とか料理とか文学とか…あっ! むこうで読んだ本! 思い出した!)
「はらぺこあおむし!」
「なにそれ?」
「むこうの世界の、絵本…」
「へー…」
(なんでだろう…絵本しか思い出さない…。本が読めないくらいバカだったのかな…?)
いや違う! 私の脳裏に、転生前の自分の手元が浮かび上がった。幼稚園のスモックを着て、小さい手で絵本のページをめくってる!
「私、まだ小学校行ってなかった! 6歳でこっちに転生してる!」
「小学校?」
「そうなのよ! 前の世界は、6歳で、小学校っていう学校に通う国だったの! そこでいろんな知識を教わるんだけど、入学直前に生まれ変わったから、何も知らないんだわ!」
「そうなんだ…」
わあ、テンションだださがり。そうよね…6歳の子供の知識なんて、おままごと程度だもんね…。
「あの、でもね、他にも、『まごわやさしい』って教えもあって…これはあの、体にいい食べ物のことで…」
「なんか、食べ物のことばっかり思い出すのね」
「そ、そう言われてみれば! 私、どんだけ食い意地のはった子供だったの!?」
うわー恥ずかしい! とジタバタする私に、
「アリスらしい」と笑ってくれた。いいお友達で良かった。
その後も、社会に貢献できるような知識は何も思い出さないので、「なんだろうこのムダな転生は」と思いながら、普通に暮らしていた。でも、とても健康で長生きできた。
たぶん「卑弥呼の歯がいーぜ」と「まごわやさしい」の教えのおかげだと思う。
なんで6歳までの記憶しかないかというと、転生した時に神様が「社会を混乱させないために」6歳以降の記憶を消しただけで、元の世界では102歳で天寿を全うしてます。
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で2位になってましたーーわー嬉しいーーありがとうございます!( ;∀;)




