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おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―  作者: ほまれ


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第二十三夜「京・東洞院に響く龍 ― 天下の器、密やかなる影」

どうも、今夜はちょっと、

いつもとは違う空気にしたくてね。

今日はねぇ、ちょっとだけ、いつもより静かな夜。

ジャズも少しゆったり、グラスの中の泡も静かに立ちのぼってる。

で、今日来たお客さんが、ちょっとした「大事件」を抱えてるみたいなんだけど――

何かの節目ってさ、なぜか不安と期待がごっちゃになるじゃない?

それがよく分かる夜よ。

大きな変化の前に立つって、誰だって不安になる。

でもさ、何かを背負ったその時にどう進んでいくかで、

その後の景色が変わってくるのよ。

今日はね、そんな**「不安と成長」**の話をしようと思う。

義龍様が、名を改めて天下を目指すその瞬間。

そして、それを支える者たちがどう動くか。

――ある意味、みんなが背負ってるのは、

 同じように「不安」だったりするのよね。

さあ、グラス片手に、少しだけ勇気をもらいながら、

一緒にこの夜を過ごしていきましょ。

夜の〈ゴールデン戦国〉。

今日はね、いつものジャズより、少しだけテンポを落とした曲が流れてる。

カウンターに、青年がふらりと現れた。

ネクタイはちゃんとしてるのに、肩だけが妙にこわばってる。

ああ――

この感じ、分かるわ。

「ママ……

 俺さ……会社の社長に、正式に就任することになって……」

グラスを拭く手を止めずに、続きを待つ。

「嬉しいんだけど……

 不安のほうが、でかくて。

 正直……怖い」

来たわね。

アタシは黙って、

シャンパングラスを二つ並べて、

淡いロゼを静かに注いだ。

細かな泡が、ゆっくり立ちのぼる。

「はい。

 まずは――“おめでとう”の乾杯」

「え……?」

「就任祝いと、

 不安を一回飲み干すための一杯よ」

青年は半信半疑で口をつけて、

小さく息を漏らした。

「……うま……」

その顔を見て、アタシは笑う。

「ね。

 じゃあ今夜は――

 失敗だらけで、不安だらけだった青年が、

 “国を背負う龍”になった夜の話をしてあげる」

グラスを鳴らして、

アタシは語り始めた。

――利尚様が、“義龍様”へと名を改めた夜を。


三好長慶様、義興様、

そして足利義輝様との会談を終え――

利尚様は、

光秀、利家、そしてアタシを連れて、

六角家が用意してくれた東洞院邸へ戻っていた。

夜の京は、驚くほど静かだった。

さっきまでの緊張が、嘘みたいに。

瓦屋根に月が落ち、

遠くで虫の声だけが響いている。

「……それにしても、利家」

廊下を歩きながら、

アタシはぽつりと言った。

「三好の兵を見て、

 “戦だ!”って即飛び出すの、

 あれ……勇気っていうか……」

「勢いですよね!?」

利家が顔を真っ赤にする。

「いやもう、

 自分でも後から冷や汗でしたから!」

光秀が、苦笑しながら助け舟を出す。

「……利家殿らしい。

 だが、あの一瞬の判断力があるからこそ、

 彼は先陣に立てる」

「そ、そう言われると……」

やがて邸に入ると、

灯りの奥から声がした。

「利尚! 無事であったか!」

「お戻りなさいませ、利尚様」

信長様と、半兵衛ちゃん。

張りつめていた空気が、

そこでようやく緩んだ。


ひと息ついたところで、

利尚様が尋ねられた。

「朝倉の後始末は?」

光秀が一歩進み、静かに答える。

「はい。

 浅井久政様、賢政殿に委ね、

 我らは京へ戻りました」

アタシも、ちょっともじもじしながら続ける。

「……あの……賢政くんなんですけど……

 なんかこう……

 判断が、ちゃんと“大人”になってて……」

利尚様が、ふっと目を細めた。

「ほう」

「真柄直隆殿とも、

 正面から話してて……

 あれ、完全に“成長イベント”踏みました」

半兵衛ちゃんが、穏やかに頷く。

「元より素質はありました。

 ヨシエ殿の支えが、

 彼を一段引き上げたのでしょう」

胸の奥が、少し温かくなった。


数日後。

三好長慶様より、使者が届いた。

――京の治安見回りへの加勢要請。

利尚様、信長様、光秀、半兵衛ちゃん、

そしてアタシも同行することになった。

夜の京を歩く。

細い路地、静かな市場、武具屋の前。

その途中で――

長慶様が、歩を止められた。

「利尚殿……

 少し、聞いてほしい」

声は低く、慎重だった。

「松永久秀、三好三人衆……

 儂が義輝様に臣従したことを、

 快く思わぬ者が多い」

空気が、ひとつ冷えた。

「畠山を焚きつけたのも、

 やつらかもしれぬ」

(……来た。

 これ、絶対“後で回収されるやつ”)

でも利尚様は、迷わなかった。

「三好殿が幕府と手を携えるのは、

 国のためです」

そして、まっすぐ言われた。

「ならば俺が、

 その証になります」

長慶様は一瞬驚き、

やがて、柔らかく笑われた。

「……そなたは、

 つくづく情の人よ」


二条御所。

香の薫る、静かな広間。

足利義輝様が、

厳かに告げられた。

「今日より、

 そなたは“義龍よしたつ”を名乗れ」

場の空気が、張りつめる。

「“義”は、我が字。

 “龍”は――

 マムシの子が天に昇るがごとく、

 国を背負う者となれ、との願いだ」

アタシ、

本気で泣きそうだった。

(……正式改名イベント……

 重い……尊い……)

さらに――

「一色家の名跡を継ぎ、

 相伴衆に列するがよい」

義龍様は、深く頭を下げられた。

「義輝様の御ため……

 この身すべてを、尽くします」


数日後。

官位叙任が伝えられた。

・六角義賢様:正五位上・中務大輔

・一色義龍様:正五位下・近江守

・六角義治様:従五位上・大内記

・織田信長様:従五位下・左兵衛佐

合同の祝宴。

笑い声と盃が交わされる。

義賢様は上機嫌で、

義龍様の肩を叩かれた。

「義龍よ!

 そなたは天下を支える器よ!」

長慶様も頷く。

「……人の心を結ぶ天稟、

 確かに持っておる」

信長様は杯を傾けながら、

「立派なもんだな。

 わしも負けてられん」

と、笑った。

――でも。

長慶様と義興様が、

時折されている小さな咳だけが心に引っ掛かった。


話を終えると、

青年は、しばらく黙っていた。

「……義龍さんって……

 最初から強かったわけじゃないんですね」

「そうよ」

アタシは、シャンパンを軽く叩く。

「不安も、迷いも、

 ぜんぶ抱えたまま進んだ」

青年は、照れたように笑った。

「じゃあ……

 俺も、龍とはいかないけど……」

「一歩でいいの」

グラスを差し出す彼に、

ロゼを注ぐ。

「それが、ちゃんと“天下への距離”なんだから」


◆今夜のお酒とおつまみ

◆ロゼ・シャンパン(祝杯)

・新しい名、新しい役目のための一杯

・泡は“不安と期待の混在”

◆サーモンとクリームチーズの生春巻き

・軽やかで、しかし芯がある

・門出の夜にちょうどいい、優しい味

さて、今夜の話、どうだった?

不安っていうものが、意外と力になっていく瞬間って、あるでしょ?

自分の中で迷ってるとき、何を信じるべきか分からなくなるけど、

一歩踏み出してみると、それが未来に繋がってるって気づくの。

この夜は、義龍様が正式に「義龍」として名を改め、

新しい役目を背負う瞬間。

だけど、その裏で、静かに広がる「影」の予感。

あの宴の中で、長慶様と義興様が感じ取ったものが、

これからどう影響してくるのか――

そう、次回がますます楽しみね。

青年も、そんな義龍様みたいに、

不安を抱えながらも**“一歩踏み出す”**勇気を見つけてくれたかな?

だって、社長だって、最初はみんな失敗だらけなのよ。

でも、それでも立ち上がる力が「本当の強さ」だって、

義龍様が教えてくれたようにね。

それじゃ、また次回。

お酒を片手に、次のステージを見据えて、

一緒に歩いていこう。

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