表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
おかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―  作者: ほまれ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/28

第五・五夜「浅井千代、稲葉山に嫁ぐ」

いつも読んでいただきありがとうございます。

入れ忘れていたエピソードを第5.5夜として投稿します。

まだ道三が生きていた時の話で、時系列が前後しますがご容赦ください。

あたしは青年に、温かい色の梅酒をトンと置いてあげたわ。

「今夜はね……利尚様ご本人が語ったっていう、ちょっと特別な祝言のお話。

 ふふ、普段は豪胆なあの方が、珍しく“照れてた”夜なのよ。」

つまみに甘辛味噌のくるみも出して──

さあ、始めましょうか。


浅井家から嫁いでくる千代殿──

その名を聞いた日から、胸のうちのどこかが妙に落ち着かぬ。

千代殿は、浅井亮政殿の娘であり、浅井久政殿の妹。

柔らかい眼差しで、しかし芯を感じさせる御方だ。

祝言の場が整うにつれ、城の空気もどこか華やいだ。

戦ばかりの日々に、こんな春が訪れるとは思いもしなかった。


支度が整った千代殿は、紅梅の振袖がよく似合っていた。

まだ不安げな表情だが、その背筋は美しく伸びている。

その千代殿の肩に手を置き、久政殿は言った。

「千代……兄として誇らしい。

 利尚殿は誠の人だ。胸を張って嫁いでゆけ。」

千代殿の目に光が宿った。

「兄上……ありがとうございます。」

そう言った途端、久政殿は私のところへ歩み寄ってきて──

突然、肩をつかんで揺さぶってきた。

「利尚殿……妹を……どうか、どうか頼みまする……!」

声が震え、涙が頬を伝って落ちた。

戦に生きる者の涙は、重い。

その重さが、私の胸に深く沈んでいった。

「任せていただく。千代殿は必ず、私が守る。」

私はそう言って、深く頭を下げた。


久政殿の涙を見届けた六角義賢殿が、

杯を掲げて豪快に笑った。

「久政殿、泣きすぎじゃぞ。

 利尚殿は美濃の柱。天下の器よ。

 千代姫が嫁ぐのに、何の不足があるか。」

私に杯を差しながら、続けた。

「利尚殿。観音寺城で初めて会ったあの日、

 わしはそなたを“若き獅子”と見た。

 今日、それが証となった。誇るがよい。」

胸の奥が熱くなる。

誉め言葉に慣れたつもりだったが、

“父のような声音”で言われると……くすぐったい。

「義賢殿……かたじけのうございます。」


そして──父、道三が歩み寄ってきた。

老いてなお鋭い眼差しが、千代殿と私を見つめる。

「利尚。よくぞ……ここまで成った。」

その一言は、叱咤でも皮肉でもない。

生まれて初めて受け取った“父の褒め言葉”だった。

千代殿にも優しく頭を下げた。

「千代姫……不器用な息子だが、良き男である。頼むぞ。」

千代殿は深く礼をして答えた。

「はい。利尚様を……生涯、お支えいたします。」

私はもうどうしたらよいかわからないほど、顔が熱かった。


太鼓が鳴り、灯が揺れ、

私は千代殿の手を取った。

その手は少し震えていたが、

温かく、柔らかい。

「千代殿……嫁いでくれて、ありがとう。

 そなたを守り、共に生きることを誓う。」

千代殿は静かに、しかし確かな声で答えた。

「利尚様……わたくしも、利尚様の未来に並び立ちとうございます。」

春の風が、ふたりの誓いを包んだ。

その瞬間、乱世のざわめきが遠く消え、

ただ千代殿の微笑だけが残った。

──あれほど戦場を駆けてきた私が、

ここまで無防備になったのは、生涯であの一度だ。


「ね? 利尚様の語りって、甘くてまっすぐでしょ?」

あたしは青年のグラスに梅酒を足しながら笑った。

「この祝言がね、後の“美濃・近江連合”をぐっと強くしたのよ。」

青年は頷きながら、少しだけ頬を赤くしていた。

かわいいわねぇ。

しばらくしたら、時系列順に並び変える予定です。

これからもおかまバー〈ゴールデン戦国〉の夜話 ― 推し義龍様と転生ママ ―をよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ