おばあちゃまとおじいちゃまの誕生日にはいつも皆私にケーキをくれるの。お母ちゃまは甘いものを摂取しすぎて砂糖が口から出ると言って子供だからと嘘をつきまちゅ。疑ってすみませんでしたわ
転生した先にはあの俳優に激似の美男子が。
全力で愛をぶつけたら甘党な夫になりました。
なんてことでしょう、あのデレなかった夫が。
今では愛で宝石を作るまでに。
醜いものはわざわざ作り出さなくてもいいのですよ、旦那様。
あなたは宝石の原石。
研いて、私だけのたった一つの輝きを胸に下げさせてください。
私の愛であなたの胸元を埋めたらきっと、最後は二人で手を繋いで蝋燭の火を消しましょうね?
「お兄ちゃまケーキ食べないの?」
「僕はいいや。あげるよ」
「やったー!」
「どうせお前も将来食べられなくなるしなぁ」
「そんなことないもんっ」
「いや、お前も今みたいに自分の子供に今だけ食べまくれというぞ」
「言わないもんっ」
あの時、教えてくれたお兄様。
言わないもんとか言ってすみませんでした。
私が生まれた時には、既に我が家をお菓子の家と呼ぶ声がありましたね。
砂糖過多により胸焼けの二代目候補が只今隣で家族全員分のケーキを爆食いしていますが、いかがお過ごしでしょうか。
まさかこんなことになるなんてね。
今日は誕生日。
毎年毎年、幸せで。
始まりを思い出す。
見慣れない、豪華絢爛な部屋で目を覚ました時。
前世の記憶が洪水みたいに流れ込んできたんだから、そりゃもうパニックだ。
だって、普通のOLだったはずなのに、気がついたら公爵夫人ですよって。
しかも、お相手の旦那様ときたら、この世界じゃ醜いって噂。
でも、ちょっと待って。
鏡に映るその人を見た瞬間、目は釘付けになった。
確かに、世間の言う「美形」とは違うかもしれない。
髪の美しさ、憂いを帯びた瞳。
それに何より、醸し出す雰囲気がたまらなくセクシー。
前世で俳優イケメンに鍛えられた審美眼に狂いはない。
むしろ、この世界の人たちの美的感覚が時代遅れって、言いたいくらい。
時代は塩系なんだよ?
「おはようございます、旦那様」
すかさず好感度を上げていく。
ぺかぺかな笑顔でそう声をかけると、彼は驚いたように目を丸くした。
そりゃそうか〜。
昨日まで冷たい視線しか送ってこなかった見知らぬ女が、いきなりデレデレしてるんだから。
失敗失敗。
「ああ」
ぶっきらぼうな返事も、こっちからしたら、可愛いったらありゃしない。
照れてるんだもん、絶対。
ツンデレだ。
それからというもの、旦那様を全力で甘やかすことにした。
美味しい手料理を振る舞ったり(この世界の食材は美味しい)。
一緒に庭園を散歩したり。
前世で培った女子力をフル活用。
出たとこ勝負になってるけども。
最初は戸惑っていた旦那様も、徐々に心を開いてくれるようになった。
ヘンゼルとグレーテルの魔女、とか聞こえてくるけど、無視無視。
時折見せる優しい笑顔とか、作ったお菓子を美味しそうに頬張る姿とか。
もうキュンキュンが止まらない。
可愛い、可愛いよ。
世間の噂なんて気にしない。
妻とって、彼は世界で一番魅力的な男性なので。
あしからず。
いつかきっと、この気持ちが彼に伝わると信じてる。
あれからしばらく経つけれど、旦那様との関係は蜜月、ってやつに入った。
あのぶっきらぼうだった彼はどこへやら、今ではすっかりこちらにデレデレ。
ビフォーアフター。
毎日「愛してる」って囁いてくれる。
まあ、その十倍愛してるを囁くのだけどね。
ふふ、可愛い人。
もちろん、周囲の反応は色々ある。
「奥様は一体、旦那様のどこに惹かれているんだ?」
みたいな、訝しむ視線は日常茶飯事。
でも、そんなのは全然気にならない。
彼の本当の魅力は、一緒に過ごすうちに自身が一番よく、知っているのだから。
ある日、舞踏会で他の貴族の奥様たちがヒソヒソ噂しているのが聞こえてきた。
「あの方の旦那様は、やはりお醜い」
って。
まあ、陰口なんてどこにでもあること。
フライパンで、頭を殴りつけてやったっていいんだぞ?
でも、その時、隣に立っていた旦那様が、手をそっと握り返してくれた。
そのおかげで、彼らは墓行きにならなかったので感謝しに行ってね。
夫にな。
温かさが、何よりも雄弁に彼の気持ちを物語っていた。
「旦那様?」
「気にするな。君が美しいと言ってくれるだけで、私は満足だ」
「んーっ!」
彼のその言葉に、胸は熱くなった。
「そんなことより、手を離さないでくれ」
「んんんんん!」
唸る。
ああ、この人を好きになって、本当に良かったって心から思った。
それに、最近気がついたんだけど。
旦那様が、前世で好きだった俳優さんにちょっと雰囲気が似てるのだよ。
もちろん、顔立ちは全然違うんだけど。
「好き!」
醸し出すクールな感じとか。
ふとした時の優しい笑顔とかが、もうそっくり。
「そ、そうか。わ、私も、す、す」
「す?」
「す」
「す??」
運命って、本当に不思議なもの。
「す〜?」
夜会を終わらせて、密室の馬車で言わせた悪い妻はこの私だが?
二人で色々な場所へ出かけた。
領地の視察に行ったり、美しい景色を見に行ったり。
どこへ行っても、彼はいつも気遣ってくれる。
「疲れていないか?」
「何か欲しいものはないか?」
って。
そんな優しい言葉一つ一つが、心をじんわりと温めてくれる。
夜には、二人で書斎で過ごすのが日課になった。
寄り添って。
「キスして、旦那様」
「え」
日本の小説を彼に翻訳して聞かせたり、彼がこの国の歴史や文化について教えてくれたり。
言葉を交わすたびに、深く補え合えるようになっていくのを感じる。
そうそう、この前。
素敵な宝石の髪飾りをプレゼントしてくれた。
深い青色の宝石がキラキラと輝いて、本当に綺麗だった。
「君の瞳の色によく似合うと思って」
って、照れくさそうに言うんだから。
もう可愛くて仕方ない。
もちろん、大切に大切にしている
宝石箱の中にある。
心が安らぐような、そんな最愛の人に出会えたのだから、本当に幸せ者だと思う。
これからも、二人で手を取り合って、どんな困難があっても、彼となら乗り越えられる気がする。
「エミリー、孫達が来たぞ」
「マックス様、今行くわ。あなたにもらったアクセサリーがたくさんありすぎていつも、迷ってしまうのよ」
「なんでも似合うから、迷わなくてもいいさ。明日も見せてくれれば迷う時間も明日に回せる」
「マックス様ったら、ふふ!」
「お母ちゃま、おばあちゃま達、いつもラブブラねー」
「そうね?お母さんはもうお腹いっぱいだから、デザートはなしにしておくわ」
「じゃあ私にちょーらい!」
「今のうちに食べておかないと、のちのち食べる機会をなくすから、お腹がはち切れるくらい食べときなさい」
「はーい」
甘ーいという方も⭐︎の評価をしていただければ幸いです。