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85話 絶望の聖人


 俺は大衆の前で【王の覇気Lv3】を纏いながら堂々と歩いていた。

 一歩一歩と前に進む度に、誰もが俺を称賛しては歓声の嵐を巻き起こす。

 今まで何となくやってきたことが、自然と民を盛り上げるのに結びついて嬉しいと思う。

 この熱狂的な雰囲気であれば、民は将来の肥やしになるだろうと確信を持って言える。

 俺のヒモニートライフは安泰だ。


 だがしかし、俺は非常にマズイ状況に陥っていた。




 ……おしっこが漏れそうだ。


 おそらく先ほどまでガブ飲みしていた果実水が原因だろう。

 美味しすぎてやばかったが、おかげでお腹はたぷたぷだし膀胱(ぼうこう)がやばい……。


「何か問題でも? シモン殿」


 自分で問いかけておいて何だが、問題は大アリだ。

 なにせ異端審問や、目の前のシモン何某よりもよっぽどの強敵が俺に襲い掛かっているのだ。


 シャレにならない尿意に抗うべく、決死の膀胱(ぼうこう)防衛戦に徹する他なかった。

 ちきしょうがッ……接戦すぎるぞ……。


 か、仮にこの場で尿意に負けたとしよう。

 そうなれば全てが無に帰す。


 民は俺に失望し、侮蔑の眼差しすら向けるだろう。

 そして将来の肥やしルートは消失する。それだけは決して許されない……!



「し、しかしストクッズ子爵令息! このような前例などありません! 魔族を聖教に改宗などと!?」


 うるせえ! ゴチャゴチャ言ってんじゃねえ!

 シモンなんちゃらのクソが……! 俺のシモのお世話でもさせようか!?

 ったく、こっちは早く終わらせたいのにッ……チビっちゃうぐらいド迫力な魔族とストクッズ騎士団の混成軍を目の前にして、まだ喰ってかかるか!?


 ヘリオの分析だと、公爵家をも凌ぐ圧倒的な戦力のはずなのに……シモンなんちゃらは俺の膀胱(ぼうこう)を容赦なく攻め立てる。

 さ、さすがは第九使徒なだけあった。


 だが、ここで俺もただ油汗を滲ませるだけではない。

 一秒でも早くこの場を離脱して、弾圧されし膀胱を解放するために……そうっ、これは自由を勝ち取るための聖戦なのだ……!


 漲る想いでシモン何某をねめつける。



「シモン殿は神を冒涜しているらしい」


 俺の膀胱もな!


「こ、この私めが、神を冒涜と!? 何を根拠に言っているのですか!?」


「シモン殿。貴殿の思想は、【聖域教会】の素晴らしさは人間にしか伝わらないと言ってるに等しい。神のご威光はそんなちっぽけなものではない! 人間以外のあまねく存在に、神の素晴らしさを説くのもまた! 貴殿の使命ではなかったのか!?」


「なっ……確かに、広く神のご意思を伝導するのが……私めの使命でもあります……しかし、邪悪な魔族に神を説くなどと……」


 早く納得しろよ、この頭でっかちの妄信女がッ!

 アナからちょろっと聞いてたけど、シモン何某は使徒の中でも非常に熱い信仰心を持っているのだとか。

 神を妄信するのはいいけど、俺の放尿を妨げるとなれば話は別だ。

 その変な信仰心をこの場で叩き潰してやろう。


「魔族の改宗、これは聖女様もお認めになった『奇跡』だが?」


「き、奇跡……だとしても! このような魔族を善良なる民と共に住まわせるなど、危険極まりないのです!」



 ふぉぉぉぉおおおうっ!

 マッジで勘弁してくれよな!?

 シモン何某の言葉は胸に1ミリを刺さらなかったが、俺の腹には激しい便意が突き刺さった。

 まさかのここで尿意の大援軍、大便意(クソ)までもが参戦し始めた。


「……そこまでシモン殿が言うならば、お見せしよう……ふぅぅぅ……」


 俺は絶対に力み過ぎず、深く呼吸しながらスキルを発動しようとする。

 そんな俺の様子に、シモン何某はこれから何か奇跡的な大事件が起きるのではと身構えた。

 

『グウ、今ってちょっと大丈夫か?』


 俺は【聖なる洗礼】を授けてパスを繋げてあった【聖銀都市(シルバス・)を運ぶ海神(アトランティス)】のグウに連絡を取る。


『んー? どうしたぐうー? 腹痛ぐう? あっ、今にも出ちゃいそうぐうね。ネル、おしっこーもーうんちーも我慢は身体に良くないぐうよ? ぐうはいつも海ぱや~って自由にやるぐうよ~』


 うらやま……。


『そっちの心配はいい。ところでちょっと会いたいんだけどいい?』

『いいぐうよー』


『じゃあ呼ぶね』

『はいぐうー、本当にお腹は大丈夫ぐう?』


 シモン何某もさすがに動く島を見せれば納得してくれるはず。

 

 ふうううう、いいか俺。

 絶対に漏らすなよ。

 しかし便意にだけ集中するのも良くない。便意に塗れて手元が狂ったら、グウの召喚座標をミスッたら街がプチっと潰れてしまう。

 街から少し離れた場所にグウを召喚して、力み過ぎずに冷静に【降臨魔法】を————


「我が聖なる呼び声に応えよ、聖域にして神獣、そして我が朋友よ——【降臨魔法】」


 ギュルルルルルゥゥゥゥッ……!

 瞬間、万雷が全身を駆け巡る。

 スキルの発動と同時に、腸の不調は悪魔が紡ぐ演奏のように激しくかき鳴らされた。


 しかしそんな重低音も、グウが街はずれの平野に突如として出現した轟音でどうにか誤魔化せた。

 俺のライフは確実に削られているが……まだ、まだいけるはず。

 どうにかこうにか引きつり笑顔を浮かべては、シモン何某に問いかける。


「ふぅぅぅ……シモン殿、見えるかな? 神々しい我が友が。シモン殿が魔族を我が領地に住まわすのを是としないのなら、よかろう。我が友の背の上に住まわせればよいな? 聖国のご意思を尊重しよう」


「なっ……聖獣、いや、聖域の召喚……?」


「新聖教徒のユートピアにふさわしいだろう」


 街のすぐそばまでズシンズシンっと近寄ってくるグウ君の迫力は、もはや歩く天変地異に等しい。とてもお腹に響くので、ガリガリと俺の体力が削られてゆく。

 そして巨大なグウくんの頭が俺たちを見下ろせば、もはや畏怖以外の感情など沸き起こるはずもない。

 

 さすがの民衆もこれにはパニックを起こすかもと心配になったが、ただ静かに俺に祈りを捧げているだけだった。

 マナリアやアナが予め、『ネル様は神獣を従えし聖君である』だなんだとプロパガンダ? 洗脳教育みたいなものを施しているとヘリオからうっすら聞いていたが……いつ踏みつぶされてもおかしくない状況下で、俺を妄信する姿はちょっと異様だ。


 だが今は……!

 少しでも早く便を解放できる後押しになるなら、この際何でもいい!


「死からの復活や魔物どもを改心させた偉業だけでなく……聖域の召喚など……いや、いや、しかし、いや……」


 早く認めてくれよシモン何某ぃ……。

 なんかマジで憎たらしいなコイツ。

 しかもどっかで見たことある顔だし、無性にソレがまたイラつくというか……ああっ、今は物事を深く考えられねえっ!

 とにかく早く出したいんだよコッチは……!


「し、しかし! し、使徒である私めの出迎え人を……このような平民にさせるなどと! 聖国をッ、聖教を軽んじておられるのでは!?」


 くほおおおおおお!? 尿道と肛門がああああああ!?

 いい加減にしろてめえええ!?


 俺の中で何かがブチ切れる音が響いた。

 それは多分、道であり、門であり、そして悲しい現実の慟哭だった。

 ほんの少し、そう……まだほんの少しではあるがッ、その道が開き、そして門は打ち破られた。


 俺は怒りと羞恥の中で、シモン何某が指したヘリオを見る。

 ヘリオは『自分が相手に責められる弱みになってしまった』と、自責の念が顔に出ていた。しかしそれはほんのわずかの間で、即座に顎を上げては胸を張り、賓客を出迎えるにふさわしい姿勢を保っている。

 ストクッズ子爵家の顔としての品格を、全身からみなぎらせているではないか。


 そうだ。

 ヘリオもまた多くの困難に耐え、俺の傍で仕えてくれている。

 尿意や便意など恐るるに足らん。


 見ろ、ヘリオのあの堂々たる姿を。

 自分が大役を任されたのを誇りに思っているのだ。

 現にこの数週間は俺に代わって、暴れ馬ヒロイン共の手綱を握り、上手くバランス調整してくれていた。


 そんな彼に一瞬でもあんな顔をさせてしまったのがひどく許せなかった。

 命じたのは俺だ。


 もちろん一連の流れを任せられるのはヘリオしかいなかった。

 だからこそ使徒の出迎え役もヘリオがふさわしいとの判断だった。しかし俺は、身分が如何に重要視されるかを失念していた。



「ふむ。気に入らないな」


 俺は尿意と便意と、そしてシモン何某に全ての怒りを込めた。


「第九使徒である私めの言葉が気に入らない、ですと? 聞き間違いでしょうか? ストクッズ子爵令息は、神の代弁者たる使徒の言葉に! 何かご不満がおありのようだ!」


「全く以ってその通りだ。我が右腕を愚弄したな、貴様!」


 これまで抑えてきた怒りを全て解放するがごとく、俺は全てを吐き出した。


 …………。

 ……。



 ふあああああああ、きもちぇええええ……。



 地獄から解放された俺はしかし、即座に浄化魔法を施す。

 そうだ、最初からこうしていればよかったんだ。

 どうして俺は気付かなかったのか。


 あふれ出す尿意と便意を自由に解き放ち、そして出る先から浄化魔法でことごとくを洗い流す。

 俺の周囲は過剰な浄化魔法によって、多少のキラキラエフェクトが漂っているだろう。

 元は浄化された尿や糞だと思うとオウェッてなるが、匂いもないのでここは我慢だ。


 そして瞬間的にとはいえ、【王の覇気Lv3】を纏った俺の全力の怒りをぶつけられたシモン何某は及び腰になっていた。


 ヨシッ!

 まだ放尿脱糞の途中だが、せっかくだから進めてしまおう!

 俺は快楽に身を任せながらも次の言葉を放った。


「貴様らの出迎えに、我が右腕がふわしくないと……? 身分に不満があるなら、致し方あるまい。貴様らには納得してもらおう」


「……私めが納得? と、というと?」


「彼にふさわしき身分を与える。ヘリオ、前へ!」


「はっ」


 これはヘリオが組んだ出迎えプランにはなかったものだ。

 しかしヘリオは俺に全幅の信頼を寄せているのか、自然と俺の前に出た。


「ひざまずけ」


「はっ」


 俺は未だ道から溢れる果実水の成れの果てを解放しながら、浄化魔法を発動しつつ厳かに抜剣する。

 それからさらに【聖なる洗礼Lv2】と【騎士の儀式(ロイヤルナイツ)Lv2】の複合スキルを発動。



「聖なる御手の名において————」


 そして静かに剣をヘリオの右肩に乗せる。

 するとヘリオは何かを察したのか、俺を見つめる瞳が潤み始めた。

 やべっ、もしかして放尿脱糞してるのバレたか……?

 でも、もうこの儀式は止められないっ。


「そなたを騎士とする————」


 俺は次いでヘリオの左肩にゆっくりと剣を乗せる。


「厳父の名において————」


 王国民の父である国王の許可は、後々ディスト王子のコネでも使って取ればいい。


「そなたを、罪なき者の守護者とする」


 そしてアナにチラリと目配せをすれば、アナもまた驚きながらも頷いてくれた。


「七聖の虹女神アルコ・イリスの名において————そなたを聖なる者とする」


 ここまで言うと、ヘリオは感極まったのか人目を憚らずに涙を流していた。

 俺の煌めく糞尿の中で騎士爵を叙爵したのはさすがにひどかったか……。


 にしてはヘリオの奴、とても誇らしそうだな?

 もしかして度重なるブラック労働の末、ドMにでも目覚めたのか?

 

 まあヘリオの内心はあとで聞くとして、今は最後の仕上げだ。

【聖なる洗礼】と【騎士の儀式(ロイヤルナイツ)】のおかげで神聖な輝きに包まれたヘリオの肩より剣を外す。

 そして重々しく命じた。


「立て、ヘリオ・トロープ。ストクッズ子爵家の【聖騎士】よ!」


 ヘリオは周囲に見せつけるように堂々と立ち上がる。

 そして俺から剣を授かり、その剣を天高く掲げた。

 

 ここに王国貴族位の序列としては騎士爵より上の爵位を、聖国の序列としては大司教と同等の名誉を賜った……新たな貴族が誕生した。


 その瞬間から、民は惜しみない拍手喝采を贈ってくれる。

 

「トロープ家のサーヘリオ!」

「ストクッズの聖騎士に万歳!」

「新たなる聖騎士に祝福を!」


 これにはさすがの神殿騎士たちや使徒も大目玉であった。

 なにせ【聖なる洗礼】は基本的に聖女しか発動できない代物である。対象に強力な聖属性を付与し、しかも恒久的なパスを繋げるわけで、だからこそ聖女は重宝されているのだ。

 さらに騎士の能力と叙勲まで同時にこなすのは、今のギャル聖女でも難しいだろう。


「……今はなき、伝説の身分……聖域の守り手として語れらた【聖騎士】を、復活させた、ですと……!? そんなっ、ありえん!」


 そんな神聖さに満ちた場で、ただ一人が狂気に身を堕とした。

 第九使徒のシモンだ。


 彼女は咄嗟に受け入れがたい事実に、あろうことか大衆の前でヘリオに剣を抜いた。その速さは神速で、周囲の多くが反応しきれない速度だった。


「神を偽りし者に断罪をッ!」

「——ネル様(かみ)を信じぬ者に罰の証を」


 しかし二人の剣が結べば、神がどちらに味方したかは一目瞭然だった。

 もともとLv50代後半のヘリオは、強力な聖属性と騎士属性を付与されたので、その力は低く見積もってもLv70前後だ。

 いくら強力な使徒とはいえ、簡単にはヘリオを下せない。


 そして第九使徒シモンの神聖魔法の技量がどれほど優れているかは知らないが、俺はヘリオの剣の腕前なら知っていた。

 なにせ才能お化けのシロナに追い付こうと、今ですら激務の合間に剣と槍の鍛錬をこなし続けているのだ。


 第九使徒シモンは動揺に呑まれて剣を握り、そしてヘリオは確固たる信念で剣を振るう。

 どちらが勝利を掴み取るかはわかりきっていた。


「かっ……はっ……」


 第九使徒シモンは肩から腹部にかけて大きく切り裂かれ、もはやそれは誰が見ても致命傷だった。

 それはもちろん彼女の背後に控えていた神殿騎士たちも理解していたので、すぐに回復に取り掛かった。


「シモン様!?」

「シモン様に回復魔法を!」

「【偉大なる治癒(グレーターヒール)】!」


「傷が塞がらないぞ!? 状態異常か!?」

「それなら【賢者の百味薬(ヴァイス・ヒール)】!」


「これもダメだ! おそらく呪系統の斬撃だ!」

「聖騎士が呪系統を放つか!?」

「でもソレしかないだろう!? 現に傷が治癒しないんだぞ!?」

「よし! 【正しき霊魂へ(ソウルヒール)】!」

「……どうして治らないんだ!?」


 さすがは聖国が誇る神殿騎士たちだ。

 多種多様な回復スキルを習得しているらしい。

 しかし、そのどれもがシモン何某の傷を癒すには至らない。


 そんな中、チラリとヘリオを見れば……なぜか全てを承知した顔になり、意気揚々と語り始める。


「ネル様より授かった聖なる剣を異端なく発揮させていただきました。神を冒涜せしこの異端者に、咎人としての罰を斬り刻んだのです」


「ふむ、聖騎士ヘリオよ。どのような罰だ?」


「死の導きを辿る運命、それこそが【咎人刻(とがびときざ)み】でございます」


 えっ、さっそく聖騎士の特性を使いこなしてるヘリオこっわ。

 こいつ運命属性のスキルで、必ずシモンが死に至る傷を残してるやん。


 うっわ。

 さすがにここで第九使徒に死なれても困るしなあ……。

 えーっと、うーんと、ちょうど放尿し終えたし、今なら集中してソレらしい文言を考えられそうだぞ。


「我が聖騎士による罰は下された。しかし我が聖騎士は優しすぎるな……死は解放を意味する。真に罪深き咎人に解放など許されない」


 そうだ。

 俺をここまで苦しませ、便意の解放を許さなかった輩を……簡単に解放するなんてありえない……!


「生きて、その罪を贖い続けるのだ!」


 あとはギャル聖女のヒモスキルで習得した【癒しの聖人Lv1】で、運命属性にも干渉できる回復魔法を行使しておけばいい。


「汝の運命に癒しをもたらさん————【定められた癒し(フェイト・ヒール)】」


 ごっそり魔力を持っていかれたけど、どうにか第九使徒は血の気が戻るまでに回復してゆく。

 そして混濁する意識から即座に目覚めると、シモン何某が血走った眼で俺を見つめてきた。


 それから急に身体を大地へと投げ打って、ドウッと倒れ込んだ。

 うわっ、あれ顔面からぶつかってるからけっこう痛そうなんだけど。せっかく回復したのに————



「神殿騎士のみな! 全身全倒の祈りを捧げよッ!」


「えっ」

「シモン様?」

「全身全倒の祈りを゛ッ! 【聖人ネル】様に捧げよッ!」


 それから俺が止める間もなくシモン何某は、神殿騎士300人に自らの身体を地面に投げつける苦行を強要し出す。


「数々の゛ッ! ご無礼ぶぉっ! 申し訳ゲッ! ございませんでじだッ!」


 倒れるたびに言葉を発するシモン何某。

 めっちゃ怖い。

 


「貴方様わ゛ッ! 神が遣わしだッ! 聖人でございまずッ!」


「いや【聖人】って……えーっと、確か今はなき身分で【使徒】を束ねる役職でしたっけ?」


「はい゛ッ! 長きに渡り゛ッ、聖人にふさわしき人物ガッ! 現れなかっただめッ、廃止された身分ですガッ! ネル様は聖人に違い゛ッ、ありまぜんッ……! 聖女アナスタシア様も゛ッ、そうは思いませんガッ!?」


「んーたしかにー、ネルっちってばヤバすぎ☆ うちができないこともやってたしー、凛々しすぎッて感じ」


「いやいやいや」


「【聖人】認定されちゃえばー、うちら聖国でもよく会えるっちね?」


「えっ? いや、俺は聖人なんて面倒なレッテルは……大それた称号なんて分不相応ですよ」


「なんて謙虚でッ! 敬虔なる信徒かッ! みなッ、この者こそがッ! 神に祝福されじッ! 【聖人】である゛ッ!」


「「「うおおおおおお!」」」

「魔族と共に生きる道を示した奇跡!」

「不死身の奇跡!」

「神獣を従えし奇跡!」

「聖騎士を誕生させた奇跡!」

「使徒を瀕死から救った奇跡!」

「「「聖人ネル様ああああ!」」」


 まじかよ。

 民衆の前で糞尿を綺麗にまき散らしただけなのに、拍手喝采じゃねえか。

 もう『聖人』認定じゃなくて、特殊性癖のある『性人』扱いされた方が百倍納得いくんだが。






~あの日の魔女集会~


ミコト姫「具体的には、ストクッズ子爵令息に華麗な復活配信を発信してもらい、むしろ奇跡の人であり聖人演出で勝負するのがよいかと」


アナ「だったらうちとグウで、ねるねるねるっちが聖人だって証明するのがいいかも? それまでストクッズ領民に、聖教の教えをしっかり施してー☆ 洗脳しておかなきゃって感じ?」


マナリア「……他にも……魔王ロザリア様、なる人物を説得しないとです。……ネル君のためなら滅私奉公、させるデス……」




新作始めました!

【下級兵のおっさん、転生したら『天空の城』だった~遥かな高みから全てを見下ろして、闇深少女たちと最強スローライフを楽しみます~】


伝承を集めるおっさんスローライフ系です。

ヒモ貴族とは空気感がだいぶ違いますが、よろしくお願いいたします!

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