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72話 修羅の道


「エッッッッッッッッッッッッッッ」


 ろおおおおおおおって口に出しそうになった俺だが、即座に冷静になる。


 ふっ、なるほどなミコト姫。

 おそらく彼女は模擬戦でボッコボコのボコにされたことや、最近では俺を通して父上がジャポンに『三種の神器(大豆・鶏肉・卵)』の輸出を迫ったりと、色々やりこめられてる感が強いのだろう。


 あらゆる面で俺には勝てないからこそ、直接的な作戦で俺を倒そうってわけか。

 さすがは隠しヒロイン。危険でしかないぜ。

 危うくハニトラで死に晒すところだった。


 ディスト王子が退場した今、このバルコニーに残るのはパワード君、マナリア、姫騎士、そしてギャル聖女だ。

 ここで俺がもしミコト姫の誘いにノリ、ミコト姫だけを調整したら……恐らく婚約者が俺をヤりにくるだろう。


 それを好機と見た姫騎士は、未だに剣闘大会でのボッコボコのボコや船上パーティーでの攻防を根に持っているのでさらに加勢。

 ギャル聖女はなんだか楽しそー☆ ってノリで加勢。

 ここでミコト姫も手のひら返しで俺に襲い掛かる。


 この場で俺の味方はパワード君だけだ。

 つまり2対4であり、敵にはメインヒロインが3人もいる。


 恐らくギリギリ勝てるかどうか……いや、マナリアさんの火力が未知数だからけっこう怖い。パワードくんもマナリアさんだけにはビビってる感じがするし。


 ミコト姫は父上の葬儀の際、口では俺に感謝していると言っていたが……やってることは明確な殺人未遂だ。

 そこで俺は緊急かーいひっ!


「かしこまりました。ただし、今はパワードもいるのでミコト姫の二つのご象徴を、不用意に人目にさらすのは得策ではないかと存じます。そしてこの機会にマナリア伯爵令嬢やアリス姫殿下のサイズも調整いたしましょう。ですのでディスト王子殿下がいらっしゃる際でもよろしいでしょうか?」


 王子、感謝してくれよ。

 再び同級生のお乳を拝める機会を設けてやったぜ。


「べ、別に……それでもいいです……!」


 ミコト姫は途端に不機嫌になり、子供みたいにそっぽを向いた。

 皇姫といってもまだまだ13歳になるかどうかの年ごろだし、わかりやすい罠でよかったぜ。




 

 明くる日。

 巨乳育成論に夢中なディスト王子とブラのサイズ調整を終えた俺は、パワード君に案内された豪華客船で優雅に釣りをしていた。

 この豪華客船、全然揺れないからマジで居心地がいい。


「しかしミコト姫の成長率は目を見張るものがあるな……まさかこの短期間でダブルAからのCに迫りそうなBだぞ……?」


 姉のツクヨミ姫もバインバインで、隠しヒロインでの登場時もボインボインの巨乳遺伝子を持つ成長期ですからねえ。


「ブラの効果が現れ始めてますね、殿下」


 俺はテキトーに相槌を打って、ぽへーっと釣りをする。

 するとヒモスキルが発動してくれた。


『スキル【ヒモ】が発動。アイテマ・テマが情熱を込めて【水平線に沈む(ウォーターベッド)】を開発』

『【条件:年上女性から夜の極眠アイテムを開発してもらう】を達成』

『スキル【夢遊探索(むゆうたんさく)Lv1】習得しました』


 しゃああああ!

 さっすがアイテマちゃん!

 やっぱりサポートキャラはメインヒロインや隠しヒロインなんかと比べようもないほど安心感があるぜ!


 何せ命の危機を感じないのが素晴らしい!

 どうやらディスト王子と構想を練っていた『ぱいぱいホールド初号機』の派生形、というよりは一般使用向けのものだろう。

『ぱいぱいホールド初号機』では全身をぱいぱいに包まれるような感覚ってコンセプトをクリアしなくてはいけなかった。つまり高等技術が必要だけど、こっちは副産物で普通に作れちゃいましたよってやつだ。


 しかもこのスキル【夢遊探索】が万能でやばすぎる。

 なんと!

 寝ている間に自分の分体を使ってダンジョンなんかを攻略できるらすい!


 素晴らしすぎるぜえええええ!


 そう言えば最近、冒険者業はすっかり放置していたな。

 ランクも鉄級(アイアン)のままだし、ここは自分探しの旅に出るのも悪くない。

 昼間はヒモニート貴族令息として優雅に過ごし、夜は夢の中で冒険だ!

 まさに俺が思い描いていた、ゆるゆるなのに冒険心もくすぐられるワクワク怠惰ライフじゃないか!?


「ふふっ……決めたぞ!」

「おっ、おう、どうしたネル」


 隣で退屈そうに釣り糸を垂らしていたパワード君がちょっとビックリしていた。


「パワード! 俺はこの夏を遊び倒す!」

「なんだと!? じゃあ俺様も一緒に付き合うぜ!」


「いいのか? でも遊ぶのは毎回、皆が寝静まった深夜だ!」

「夜遊びってやつか。いいじゃねえか! やっぱ海の男たるもん女の一人や二人———いや、待てネル。ストレーガ伯爵令嬢はどうすんだよ……」


「女遊びじゃないぞ、パワード。冒険者だよ。魔物と戦い、ダンジョンで未知との遭遇、誰も見たことのない財宝を手にするんだよ」

「え……」


 パワード君はなぜか俺を化け物でも見るみたいに愕然としていた。

 何を驚いてるか知らんけど、ディスト王子が言ってた【七国の英雄杯】が始まるまでの暇つぶ————準備でいいんじゃないか?


「いや……おう、ネルについていくには……戦友として並び立つにゃあ……寝ずにそれぐらい実戦で腕を磨かなきゃ……危険に飛び込まなきゃ……わ、わかってる。わかってるけどよ……でも、いつ寝りゃいいんだ? 昼間だって貴族令息として色々こなすことがあって……え、マジで言ってんのかネル?」


 ふあああああ。

 楽しみだあああ!

 あっ、そういえばジャポンの四季神(しきがみ)術を上手く活用できないか?


国会刀弁(こっかいとうべん)】が全ジャポンに生配信されてた技術を転用して、あれを多くの冒険者に販売したり……冒険配信を視聴できる端末をジャポンと共同開発できれば、ものすっごく儲からないか!?

 しかも人気冒険者なんかも出てくるだろうし、スポンサーとして抱え込んじゃえば……その影響力を活用して、裏から世論だって操れるんじゃ!?


 いいじゃんいいじゃん!

 うちと契約した冒険者は、優先的に配信端末に映像が出やすいですよーとか裏で調整しちゃえば! 勝ち確!


 げっへっへ。

 そしたらジャポンも豊かになるし、俺の財布だって潤う!

 黒い笑みが止まらねええええ!


「ネ、ネルが……笑っていやがる……きちぃ修行を自らに課し、笑っていやがる……ちっきしょお……俺様を置いてくな、ネル!」


「おん?」


「お前、マジでやるつもりなのか?」


「おん」


「そ、そんな平然と……それに比べて俺様は……クソッ……わ、わかった週二でどうだ!? それなら貫徹(かんてつ)でも—————」


「よっしゃあああ! そうと決まればミコト姫! ミコト姫はいらっしゃいますか!?」


「へっ? どうしてここでミコト姫が出てくんだよ……?」


 もちろんいきなり配信はできないだろうから、ミコト姫から配信系統の四季神術を工面してもらって、俺たちで何回も実験してテストケースを作らないと。


「ほら、いくぞパワード! 一緒にやるんだろ?」


「おっ、おう!?」


 筋肉バカと怠惰なダンジョン配信なんていいんじゃないだろうか?

 ついで筋肉布団の寝心地をレビューして、投げ銭5万以上のリスナーには『パワード君の筋肉布団体験』ってサービスつけたらわりと稼げるんじゃ?


 やっべ、アイディアがどんどん出てくっぞ!


「なんか知んねーけどネルがそこまではしゃいでんだ! 修羅の道だろうが一緒に行ってやるぜええええ!」


 修羅の道?

 まあ、パワード君も燃えているようで何よりだ。




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