37話 新入生代表
隣にマナリアがいるとはいえ、入学式は地味に過ごせそうだった。
同級生のディスト王子や先輩姫騎士の目をかいくぐり概ね平和だ。
王族といえば、何か引っ掛かるところはある……が、そんなことより式後に案内される寮のベッドは改良可能なのかそっちの方が気になる。
『最後に新入生代表よりご挨拶があります——』
へえ。
新入生代表といえば入学試験トップの成績を収めた者がするんだっけ。
よくまあ頑張るもんだ。
実技試験は眠くてだるくてかなり手を抜いたけど、それでもスキル【ヒモ】の恩恵で新入生の中でトップレベルの部類だった。
しかし筆記試験は本気で挑んで中の上あたりだった。現代日本の義務教育を受けておきながらこの体たらく、と思いがちかもしれないがソレは違う。
まず日本で受けた俺の教育は一般的なものだ。
それは労働階級と専門職を育むもので、いわゆる『言われたことをキッチリこなす働き蟻』を生産する教育がメインだ。
しかし、この世界での……というより支配層が学ぶ分野はまるで違う。
『どのような仕組みを作って富を築くのか』などの帝王経営学や、『どのようなルールを作り誰に稼がせるか、誰に力を与えるかを決める』権力支配学だ。
もちろん土台に算術な語学などの一般教養はおさえるものの、それらは基礎の一部に過ぎない。
要は自分で考え、自分で決断する分野の多い科目を勉強しなくてはいけない。
庶民と権力者では、努力の方向性が幼少期からそもそも違うのだ。
そんな帝王学のトップを取るには……睡眠重視で今世を渡り歩く俺には、土台無理な話だ!
というか地味にゆるーくヒモ生活をしたいので、寄生主の知識ぐらいは入れておく程度でいいんだ!
これは決してッッ!
言い訳でもないし、悔しいとかそういうのではない!
はっはっはー!
12歳のエリート子供どもに負けたからって何とも思ってないからな!
っさあ、清く正しく地味ヒモライフを目指そう!
「————であるので、妾は疑問に思うのです」
それで?
新入生代表が何やら粛々と壇上で偉そうに語っているようですが、どうせ大した話じゃないだろう。
「卑賎なジャポン小国の王族である妾が新入生代表としてこの場に立ち、貴国らの王族は何を成しているのかと」
おん?
ジャポン小国?
俺はふと新入生代表に目を向けると、和装に身を包んだピンク髪ツインテール美少女がいた。和服なのにピンクツインテールとか面白いな。
えーっと、どうやら『同じく新入生のディスト王子の成績が私より下だよ、何やってんの? 大国のくせに』とマウントを取ってるのかな?
「あまつさえ……妾の入学案内をする者が、約束の時間になっても一向に顔を見せず」
あっ、やべっ。
そういえば父上から、入学式はジャポン小国の姫君を迎えに行くようにって言われてたの……忘れてた!
「これが大国のやり方、外交手段なのでしょうか? 小国の者にトップを譲り、小国の者を軽んじる。怠惰で傲慢に思えます」
そこで新入生代表はキリっと俺の方を見た。
あれ、これって俺が案内役だったのバレてる?
「ネル・ニートホ・ストクッズ男爵令息、妾は貴方の無礼を、我が国に帰っても決して忘れません!」
俺を名指しで糾弾するジャポン小国の姫君。
ばっちりこの場の新入生全員が、俺をギョッとした目で見てくる。
はああああああああああああ!?
俺の地味モブ学園ライフがあああああああああああああ!




