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自動販売機を悪用していると

作者: Hora

 時は平成に入り数年が経過した頃。私がまだ小学生の頃の話です。当時、小学生だった私はレアコイン集めをしていました。何万円もするようなレアな物ではありません。ギザ十を集めていました。ギザ十とは中川祥〇さんとは関係なく、昭和26年~昭和33年の間に製造された十円玉で縁がギザギザになっているものです。一般的に流通している十円玉は縁がつるつるなので、たまに財布の中にギザ十を見つけると別の缶に移すようにしていました。

 また昭和64年から平成元年に年号が変わったのが1月7日。昭和64年は7日しか無かったので、昭和64年発行のコイン集めもしていました。今にして思えば昭和64年のコインは昭和63年に作られているので数は少なくないのですが、当時は貴重だと考え見かけては同様に缶に入れていました。

 1989年の平成元年4月に消費税3%が導入され、財布の中の小銭が増えた事もレアコイン蒐集(しゅうしゅう)に拍車をかけたのだと思います。


 効率良く10円玉を集める方法として考え出したのが自動販売機ガチャです。C〇CAC〇LAや

SUNT〇RYのように自動販売機には種類がありますが、私が探していたのはDyD〇の自動販売機です。

C〇CAC〇LAやSUNT〇RYの自動販売機では10円玉を入れ、そのままお釣りのレバーを下げると、入れた10円玉が返ってくるのに対し、DyD〇の自動販売機では入れた10円玉と、返ってくる10円玉が違うのです。更にDyD〇では10円玉を5枚入れ、お釣りのレバーを下げると両替のように50円玉が1枚返ってきていました。これは10円を集めている自動販売機ガチャにおけるやらかしになるのですが。


 最初に入れる10円玉の年代を4枚程憶えておいて、ガチャを開始。ギザ十や昭和64年が出たら回収しつつガチャを継続。憶えていた年代の10円玉が4枚が順に出てきたら終了。といった具合です。行為としては迷惑この上無い気がしますが、1人でも友人とでも遊べます。友人となら1枚ずつ回し、ギザ十や昭和64年が出たら勝ち。周りからお菓子を奢ってもらうといった具合です。


 日曜日のある日、隣町の友人の家に遊びに行きました。しかし、その友人が3時頃に家族と出かける用事があるということで3時過ぎに一人で帰る事になりました。時間が空いていたので、そこからDyD〇の自動販売機を探し、しらみつぶしにガチャることにしました。そこの近所で位置を把握している自動販売機から始め、その隣の町、更に隣の町と自動販売機の位置を確かめながらガチャを進めていきます。


 そしてとうとう未踏の町に足を踏み入れます。遠くに自動販売機が3つ連続で設置されている場所を見つけます。「何かのお店かな?」と近づいてみると、お店ではなく民家の玄関のすぐ横に3台置いてある違和感のある配置がなされていました。3台の内1台はDyD〇の自動販売機。辺りに人影は無かったのでさっそく年代を憶えた10円玉4枚入れて、お釣りレバーを下げガチャを開始します。最初の4枚のお釣りの中で早速1枚ギザ十を引き当てテンションが上がります。続けて十円玉4枚入れ、お釣りレバーを下げ、お釣りを取り出した時


「おい」


と、真後ろから呼びかけられ、心臓が止まる程驚きました。罪の意識…とまではいきませんが褒められた事はしていないのでマズイと考えます。振り返ると白髪交じりの50歳後半のおじさん(に見えた)でした。


「何やっとっか?」


と問われとっさに「いや、別に…」と、答えそのままその場を足早に去りました。しばらくして振り返ると、遠くに白髪のおじさんがまだこちらを見ています。

「ふぅ・・・・、あ~、びっくりした。」

移動しながら、

(さっきの民家に住んでる人だったのかな?じゃないと、突然声掛けたりって普通しないしな。)

 曲がり角を曲がって結構進んだので後ろを振り返っても白髪のおじさんはいません。すでに知らない町の知らない場所を歩いていますが、おおまかに大きい道路に出る方角は憶えているのでそこまで不安はありませんでした。そのまましばらく進むと今度は道の脇に2台の自動販売機。1台がDyD〇だったのでさっそく、10円玉を4枚取り出す。周りを見渡し誰もいないことを確認し、投入していると


「おい」


と、真後ろから声をかけられる。全く同じ抑揚。バッと振り返ると先ほどの白髪交じりのおじさんが間近にいます。

(絶対にあり得ない!)


「うわぁ!!」


 2枚投入した10円玉をそのままで全力で走って逃げます。後ろで「何やっとっか?」と聞こえます。見てはいけないもの・逢ってはいけないものに逢ってしまった恐怖と、しかも何故か僕がつけられているという恐怖で足がガクガクに震えます。

「早く家に帰らないと」

大きな道路に出るべく走りますが走っても走っても見覚えの無い小さい路地から出られません。さらに日がかなり傾いてきており、角を曲がったらまたあの白髪交じりのおじさんに会うんじゃないかと恐怖の中を無我夢中で走りました。

 

 しばらくして、ようやく見知った道路に出る事ができ、家に帰ることができました。ただ、数日間はどこに居てもあの白髪のおじさんの「おい」という声がいつ聞こえるかしばらく気が気ではありませんでした。


 現在でもあの出来事が人によるものなのか心霊によるものなのかは分かりません。11円の価値のギザ十を得るにはあまりにも重いトラウマを背負ってしまったのです。しかし、今では昭和61年後期の10円玉に価値があるということを当時の私が知らなかった事の方がショックなのでした。(2023/3に20万円で落札歴あり)

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