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冒険者ギルドの職員が勇者パーティ候補を面接する話

作者: 夢園 梨楽

分割ってどうやるんだ。一話完結しか投稿の仕方が分からん。

なぜギルド職員が勇者パーティ候補を面接しなければならないのか。


これには浅い事情がある。

断じて深い事情ではない。浅い事情だ。

勇者の旅立ちにあたり王様が餞別になんでも用意すると言ったら

勇者がパーティメンバを要求した、それだけだ。

国中に出されたおふれを見た連中が城に殺到し、

手に負えなくなってギルドに選考の依頼をしたおかげで

我々職員はこうして休日にもかかわらず駆り出される羽目になったのだ。

高額な特別手当が出るけどメンドクセー。


面接といっても、希望してきた者全員に対して行う訳ではない。

先に書類選考があり、そこで不適格だとみなされた者は面接の対象にはならない。

この面接では5人以下に絞るように上から言われている。


では、1人目だ。

本人を呼ぶ前に書類に軽く目を通す。

『エントリーNo 103 ツダーナ 中級魔法使い』

対象者のスペックはありきたりな中程度の能力といったところだ。

まあこいつは合格しないだろう。

漫才コンテストのように最初の人は"基準"とかいう名目で異常に低い点数が付けられるからな。

面接の1人目がNo103ということは書類選考で100人以上落としたということだろう。

書類選考の担当も大変だ。

さて、書類の確認はこのぐらいにして呼び出すとしよう。

面接室のドアを開け廊下の座席で待つ受験者たちに呼びかける。

「エントリーNo103の方、面接室へどうぞ!」

面接室の座席に戻るとほどなくして30代前半ぐらいの男が入室してきた。

「魔法使いのシダーナです!」

あれっ、書類と名前が違う。もしかして書類選考担当がシとツを書き間違えたのか。

古典的なボケかましやがって。

まあいい。仕事をしよう。

「どうぞおかけください。魔法をある程度お使いになれるようですが、

 その他に何かアピールすることはありますでしょうか。」

男は着席するとゆっくりと答える。

「そうですね、まずは、トランプのカードをプレイヤーに配るスピードが速いことですかね。」

なんだその要らない特技。

「それと、自分字が汚いので"シ"と書いても"ツ"っぽくなります。」

お前のせいか。

それと、なんでそれをアピールした。マイナス評価にしかならんだろ。

色々と気になる点があるが、こいつ1人に時間をかけすぎても仕方ないのでそろそろ打ち切ろう。

「分かりました。最後に何かご質問はありますでしょうか。」

男は少し思案してから答える。

「仕事内容ってどんな感じですか。」

募集要項ぐらい読んでから来い!


男を面接室から帰した後、評価欄に記入する。

こいつが基準だな。40点とつけておこう。



さて、2人目。

『エントリーNo 24 タスケ 転生者』

エントリー番号順じゃないんかい。

そんなことはどうでもいい。

転生者か。そこまで珍しいものでもない。

大体どこの世界のどの国からやってくるのか決まっているから

こちらも転生前の世界のことは意外と情報がある。

面接のポイントは転生前に何をしていた人物かを聞く、という点だろう。

面接室のドアを開け廊下の座席で待つ受験者たちに呼びかける。

「エントリーNo24の方、面接室へどうぞ!」

面接室の座席に戻るとほどなくして20代後半ぐらいの男が入室してきた。

「日、いずる国よりやって参りました。」

転移前の出身は、案の定あの国だ。

「どうぞおかけください。前職、もとい前世はどのような仕事をなさっていたのでしょうか。」

男は着席して答える。

「赤松満祐という守護大名のもとで当時の将軍である足利義教を暗殺しました。」

凄いマニアックなところ来たな。嘉吉の乱・・・だっけ?

起きた出来事はデカいのに認知度が低い事件ランキングのトップ3に入ってるだろ。

男は自己紹介を続ける。

「転生後は大学で文学を学びました」

転生前の話終わりかい!どう考えても最大のアピールポイントだろ。

「アルバイトにはかなり力を入れました。様々な職種の経験があります」

せっかく大学行ったのなら大学で学んだことをアピールしろよ。

アルバイトより重要じゃない程度の学習内容なら金と年月の無駄遣いだぞ。

などと考えているとさらに男は自己紹介を続ける。

「自分を動物に例えるなら・・・馬です」

男はこちらに視線を向け反応を待っている。

大喜利の司会者みたいに普通にひとことを返せばよいのだろうか。

「・・・そのこころは?」

男は自信たっぷりに答える。

「自分、ウマれかわったので!」

メチャクチャ下手くそじぇねーか!


男を面接室から帰した後、評価欄に記入する。

今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます、と。



次は3人目か。

『エントリーNo 132 ネディ 町娘』

町娘って・・。なんでこんな奴が書類選考を通ったんだ?

武器屋で武器に詳しいとか薬屋で有用な薬を調合できるとかそういう感じだろうか。

まあ、会って話せばわかることだ。


面接室に呼ぶと少女が入ってきた。

「町で化粧ポーチデザイナー店を営んでいるネディです!」

いよいよをもってなんで書類選考を通った理由が分からない。

志望動機が素晴らしかったりするのだろうか。

「どうぞおかけください。早速ですが、なぜ今回の仕事に応募されたのでしょうか。

 志望動機をお聞かせください。」

少女は着席するとハキハキと答える。

「知名度が上がれば売上がアップすると思ったからです!」

志望動機も下の下じゃねーか。

合格要素ねーわ、などと考えていると少女は神妙な面持ちで語りかけてきた。

「この面接はいくらお渡しすれば合格になりますか?」

書類選考を通ったのはそういうことかよ!

だが、その手が通じるのは1次審査である書類選考までだ。

というか、一次審査でもダメなんだが。

「申し訳ありませんが、買収はお断りさせていただいております。」

少女はその答えを聞くと残念そうな表情を浮かべ席を立つ。

「そうですか。貴重な時間を割いていただきありがとうごいまいた。」

意外とアッサリ退くんだな。

少女はドアノブに手をかけると小さな声でつぶやいた。

「次はもっと上に掛け合わないとダメか・・・」

だめだこいつ、反省してねぇ。



次は4人目か。

『エントリーNo 81 ラウダ パーティを追放された盗賊』

最近流行りの追放系か。これはちょっと期待できそうだ。

基準を上回る人材であって欲しいものだ。


面接室には山のように大きなガッチリとした体格の男が入ってきた。

盗賊のイメージと全然違うな。その辺に追放された原因があるのだろうか。

「リアル盗賊のラウダです。」

リアルってなんだ。

「どうぞおかけください。

 あの、お聞きしづらいのですが、パーティを追放された理由は何でしょうか。」

男は着席すると自信満々な様子で答える。

「夜な夜な泥棒を繰り返していたからですね。」

ガチの犯罪者の盗賊じゃねーか!

よくパーティ追放だけで済んだな!

念のため志望動機を確認する。

「なぜ今回の仕事に応募されたのでしょうか。」

男は前のめりの姿勢になって答える。

「勇者パーティなら泥棒しても勇者行為として免罪になるからです!」

お前は刑務所に行け!



次は5人目だ。

それにしても全然いい奴いねーな。

基準最強説が急浮上してきた。

ふぅと息を吐いて書類を確認する。

『エントリーNo 66 ホイニン モンスター』

モンスター!?

とんでもないのが来たな。


面接室に呼ぶと、ふわふわ浮いた、黄色い触手が下方に数本生えたスライムみたいな質感の青いクラゲみたいなやつが入ってきた。

「ボク、悪いゴブリンじゃないよ」

見りゃ分かるわ。

まあ、別にモンスターはダメという決まりがあるわけでもない。

普通に面接を進めよう。

「どうぞおかけください。」

そう声をかけると、モンスターは触手の1本を横に振りながら答える。

「お気遣いありがとうございます。ただ、見ての通り私は常に座っている状態ですので・・・。」

それ座ってるの!?

気を取り直して面接を続ける。

「志望動機は何でしょうか。」

モンスターは落ち着いた感じで答える。

「私は人間とモンスターの架け橋のような存在になりたいと考えております。

 モンスターにも平和を愛する者がいるということを広く知ってもらうとともに

 同じ志を持つモンスターの希望となれたらよいなと願っております。」

志望動機はしっかりしてるな。などと考えていると

モンスターはさらに続ける。

「そして、ここからが本題ですが・・・。」

モンスターは視線をこちらに対してまっすぐ向ける。

「面接をパスするにはいくらお渡しすればよろしいでしょうか?」

お前もか。

むしろその一言が無かったら合格にしてたわ。他に人材がいなさ過ぎて。

「申し訳ありませんが、買収はお断りさせていただいております。」

モンスターは答えを聞くと丁寧にお辞儀をする。

「そうですか。失礼いたしました。では私はこれにて失礼いたします。」

モンスターは出口のドアノブに手をかけると小さな声でつぶやいた。

「次はもっと上に働きかけないとダメか・・・」

何もかもが町娘とネタ被りしてるんだよなぁ。



次の面接の準備をしていると、ギルドマスターが慌てて面接室に入ってきた。

「すまんが次はこの人を試験してやってほしい!

 形だけ面接は行うが結果は絶対に合格にしてくれ。」

とだけ言うと、書類を押し付けるように渡し足早に退出していった。

受け取った書類を確認する。

『エントリーNo 991 ネディ 町娘』

あの町娘本当に上司を買収してきやがった。

たまげたなぁ。



町娘への茶番の面接を終えてひと休憩していると、またもやギルドマスターが入ってきた。

「こいつも合格で通して欲しい。頼んだぞ。」

再び書類を押し付けるように渡すと足早に退出していった。

また買収か。

やれやれと思いながら受け取った書類を確認する。

『エントリーNo 992 ラウダ パーティを追放された盗賊』

こいつもか。

たしかにガチ犯罪者が書類選考を通るって普通じゃありえないもんな。

ていうか、ここまで面接した5人の内の過半数が買収か買収未遂かよ。

この国どうなってんだ。

ため息をつきながら犯罪者への茶番の面接の準備をしているとまたギルド長が入ってきた。

「追加でコイツも頼む!」

受け取った書類を確認する。

『エントリーNo 993 ホイニン モンスター』

知ってた。

「国王からの直々のご指名だ。くれぐれも頼んだぞ!」

と言うと、足早に退出していった。

この国の王様ってモンスターに買収されてんの!?



犯罪者の茶番面接を終えてモンスターの面接の準備をしていると

またギルド長が入ってきた。

「悪いが、最後に伝えたモンスターの面接はキャンセルだ。」

国王直々の依頼でも取り消されることがあるのか。

「一体、何があったのですか?」

こちらがそう尋ねると

ギルド長は面接済みの応募者の書類を漁り、

基準、つまり最初の面接者の書類を取り出した。

「つい先ほど、こいつに討伐されたからだ。」


基準最強説。

にゃーん?(はい/いいえ)

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