アサイラム
レビュー執筆日:2018/12/25
●変わり続けるTHE BACK HORN。今回のテーマは「混沌」。
【収録曲】
1.雷電
2.ラフレシア
3.戦う君よ
4.再生
5.羽衣
6.海岸線
7.ペルソナ
8.太陽の仕業
9.閉ざされた世界
10.汚れなき涙
11.パレード
前作から約二年と、彼らにしては久し振りのリリースとなったTHE BACK HORNのメジャー8thアルバム。前作と同様に、今作もインパクトのあるアップテンポの楽曲が中心となっていますが、シンプルな作風だった前作と比べて今作は様々な工夫を凝らしている印象があります。例えば、冒頭を飾る『雷電』ではお経のような歌い方をしたかと思えばサビでボーカルや楽器が暴れ回りますし、『戦う君よ』では「Aメロ」→「サビ」→「Aメロ」→「サビ」というよくある構成かと思えば最後に違うメロディの新しいサビが出てきます。また、『太陽の仕業』ではメロディアスな歌い方とまくし立てるような歌い方が混在した独特な雰囲気を放っています。
このアルバムを一言で表すならば「混沌」でしょうか。一曲の中に様々な要素が詰め込まれており、予想もつかない展開にこちらを引き込むような魅力に溢れています。もちろん、途中に『海岸線』のような悲しげなナンバーを挟んだり、最後に『パレード』といった比較的シンプルで爽やかな楽曲を持ってきたりと、全体を通してのバランスは充分に考えられており、混沌としていながらもしっかりとまとまりのあるアルバムになっているというのも彼ららしいと言えるでしょう。その点では『ヘッドフォンチルドレン』に似ているかもしれません。(まあ、一曲一曲を見ればかなり作風は異なりますが。)
ストレートな雰囲気だった前作と比べると、悪く言えば「小細工」をしているように見えるかもしれませんが、今作でもそれを踏襲すると焼き直しになりかねないので、この作風の変化は充分に「あり」と言えるでしょう。そもそも、今作に限らず彼らはアルバムごとに少しずつ作風を変えていっているので、わざわざ取り沙汰されることでもないかもしれません。これまでかなりの枚数のアルバムをリリースしてきた彼らですが、それでも一つの作風に留まらずに「攻め」の姿勢を持ち続け、それでいて傑作を連発する彼らには驚きを禁じ得ません。
評価:★★★★★