イキルサイノウ
レビュー執筆日:2018/11/10
●穏やかさと激しさが入り混じり、結果としてバランスの取れたアルバムに。
【収録曲】
1.惑星メランコリー
2.光の結晶
3.孤独な戦場
4.幸福な亡骸
5.花びら
6.プラトニックファズ
7.生命線
8.羽根~夜空を越えて~
9.赤眼の路上
10.ジョーカー
11.未来
これまでのTHE BACK HORNの楽曲は、荒れ果てた世界をイメージしたような、どこか退廃的な雰囲気を主軸としたものが多かったのですが、メジャー3作目となる本作は現代の日本を舞台とした、どちらかというとリアリティのある世界観を感じられる楽曲が多いように感じられます。例えば、『光の結晶』はこれまでにない爽やかな様相で「自転車で商店街を走る」「空だって 今 飛べる気がする」と青春を感じられる曲になっていますし、『孤独な戦場』は冒頭から「シブヤはまるで肉の海だ」と具体的な地名が出てきます。さらに、『羽根~夜空を越えて~』は穏やかな曲調でストレートなクリスマスソングとなっています。(ただし、「カミソリを喉に当て引いた」といったフレーズはありますが)
また、今作は『幸福な亡骸』や『花びら』、前述の『羽根~夜空を越えて~』やアルバムを締めくくる『未来』のように穏やかで物悲しい楽曲が多い印象を受けました。これら自体にはそこまでインパクトはありませんが、エロティックな世界観が繰り広げられる『プラトニックファズ』や力強くエネルギッシュな『生命線』や『赤眼の路上』、鬼気迫るボーカルでリスナーを圧倒する『ジョーカー』などといった従来の彼らのイメージ通りのインパクト溢れる楽曲の合間に収録されることにより、アルバム全体で見るとうまくバランスが取れているように思えます。デビュー当初の危うさから感じられる魅力が減退したのは否めませんが、彼らの個性をうまく保持したまま前作以上にバンドとして大きく成長したように感じました。
評価:★★★★★