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君と甘い一日を  作者: 凛蓮月@記憶をなくした孤独な妻発売!


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1/5

あなたと一緒なら、きっと甘い

元話

「あなたと一緒なら、きっと楽しい」

 

「エルーシャ、あーん」


 私を膝に乗せてから茶色い物を手に取り、にこにこしながらルクが私の口に近付けて来た。


 淑女たるものぱくりと食べる訳にはいかなかったけど、何故かルクには逆らえず。

 私は差し出された物を口にした。


 その時くちびるがルクの指に触れる。


「ん……甘いわ……」


 それはとても甘いものだった。

 口の中でもくもくしていると、とろりと溶けてしまう。


「ルク、これなぁに?……ルク?」


 それを飲み込んでルクを見ると、顔を真っ赤にしたまま固まっていた。


「……ルクー?おーい、大丈夫ー?」


 手をひらひらとルクの前で振ると、ルクは「ぶはっ」と息を吹き返した。

 そして、自分の指を凝視している。


「……どうしたの?」

 未だに顔を真っ赤にしたままのルクを見上げる。


「エルーシャ……あんたホント……」

 そう言って手で口元を覆う。


 どうしたんだろう?

 甘いお菓子を口に入れたのはルクなのに、何でそんな顔を赤くしてるんだろう?


 頭にハテナを浮かべたままルクを見てると、


「指に……あんたのくちびるが……」

 とかぼそぼそ言い始めた。


 それを聞いて、私は目を点にして。


 顔からぼふんと湯気を出した。


「それはっ、ルクが!」

 私に食べさせるから!!


 そんな指にくちびるが触れたくらいで赤くならないで欲しい。むしろ私が恥ずかしいわ!


「じゃ、じゃあ、これなら」


 私は先程ルクから貰ったお菓子を口に含み、ルクの口に付けた。


 ルクはびっくりした顔をして、お菓子を口にし。もくもくしながら再び顔を真っ赤にして固まった。


 わ、私に恥ずかしい思いをさせるからよ!



 そうして甘い空気を辺りに撒き散らしていたので、国王夫妻が嬉しい知らせを届けに来たのだが「またあとにしよう」と微笑んで退室した事はこの時の二人は知る由もない。



 ──────────

 君と一緒に、甘いモノを(ルク視点)



 いつも情報を貰う商人から、甘いお菓子を貰った。

 何でも口に入れると溶けるらしい。

『チョコレート』と言うそれからは甘い匂いがした。


 俺は甘い物は嫌いじゃないけど好んで食べるわけでもない。

 だが念の為味見と称して1つ摘んで食べてみた。


「甘っ!」


 喉がやけるように甘いそれは、なるほど女性なら好きそうだ。

 残りはエルーシャにあげよう。



 そうして婚約者であるエルーシャとの面会の日。

 いつものように並んでソファに座ろうとしていたエルーシャを横抱きにして自分の膝に乗せた。


「る、ルク……?」


 顔を真っ赤にして身じろぎしながら降りようとする彼女の腰に手を回して固定する。

 観念したのか頼りなげにきょろきょろしながら落ち着かないエルーシャが可愛くて、ついばむようなキスをした。


「ちょ、ちょっと、ルク?もっ、やめ」


 婚約して数ヶ月。

 今みたいに甘い雰囲気になる事はよくあるのに、いつも顔を真っ赤にするエルーシャに、もっと真っ赤にしたいという欲求が湧き上がる。


「もう!これ以上無理!心臓爆発するから!」


 はーーーー。

 何なのこの可愛い生き物は?

 オレールは何見てたんだろう?

 ……まぁ、そのおかげで俺がこうして堪能できているんだが。


 そう言えばオレール達はよく頑張っているようだ。

 リンボの砦に派遣されたオレール以下取り巻き達は甘やかされたのもあってすぐに音を上げると思われていたが、意外にも健闘しているらしく。


 さすがに気を抜けば明日をも知れぬ環境だからか少なくとも以前のような腑抜けでは無いらしい。これは俺の部下の談。


 まぁ。恋の病から覚醒したけど、「この戦いが終わったらまた婚約者に求婚するんだ」と揃いも揃って言ってるらしいから夢見る夢男は治ってないらしい。

 今はそれが支えになっているから真実を告げるタイミングを伺っている。


 取り巻き達の元婚約者の御令嬢達は、既に結婚してしまったからな……。


 という事を、エルーシャを膝に乗せたまま思案していたが、そう言えばと思い出した。


 使用人が運んで来たティーセットに、例のチョコレートも乗っている。

 勿論エルーシャに食べさせる為だ。


 まだ恥ずかしいのか時折居づらそうにしているエルーシャに

「エルーシャ、あーん」

 とチョコレートを口元に持って行った。


 きょとんとした彼女は、小さな口を開けて、はくんとチョコレートを含んだ。



 何なんだ今の、あむ、というような仕草。

 と言うか警戒心も無く食べ物を口にするなという言葉と、小動物のような可愛さとがぐるぐる回って俺は固まった。

 なにより、俺の指先に微かにだが確かに、エルーシャのくちびるが触れた。

 少ししっとりして、ぷにんと柔らかなそれは俺の足の爪先から頭のてっぺんにかけて電流が走る程の衝撃を与えた。


 エルーシャが何か言ってるけど頭ん中はショート寸前だ。

 いやむしろショートした。頭の中はエルーシャでいっぱいだ。


「指に……あんたのくちびるが……」


 小さな声で言うので精いっぱいだ。


 するとエルーシャは顔を真っ赤にして反論して来た。

 かわいいなぁ。


 そうしてにこにこしながら見ていると、今度はエルーシャがチョコレートを口に含み俺のくちびるに押し付けた。


 ぽろりと隙間からこぼれそうになるのを慌ててすくい、俺の口の中に入れてもくもくとする。



 何なんだ今のはーーーー!!!!


 エルーシャは真っ赤にしてにへらと笑った。


 はーーーー、もういいだろ?

 これエルーシャ食べていいよな?


 そうして遠慮なく彼女に口付けた。




 扉の外で兄上達がにこにこしながら見守っているのに気付くまで、あと──。


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