悪だくみ
都ラーヴィのタルム寺院から、若旦那さんの店に行った私。情報のお礼、といって隣国についていくつか重要な話を教えてもらいます。
「あの国は、多数の部族の集まり。一枚岩ではありません」
互いに反目させれば、戦いどころではなくなるとのこと。
「好戦的なドゥルチ族、砲撃術は侮れません。ただ、火薬は他所から原料を仕入れています」
そこを押さえれば、長期戦には耐えられないとか。
「硫黄ですか?」
火薬の原料、ユミルから買っているのかしら?
「もしユミルから買っているとしても、恐らく北のパルバク王国経由ではないでしょうか?」
「え・・・?」
「ザムを通らずに仕入れる、としたらの話ですが」
あくまでも想像です、と若旦那さん。
「若旦那さん、お願いがあります」
私は、ダメもとでアルシュのルドラさんに言伝を送ります。ドゥルチに送られる荷を、一時的に妨害することは出来るかしら?
そんな中、お婆様から連絡が入ります。内容に目を通す若旦那さん、
「あなたを直ちに拘束して欲しい、だそうです」
「そうですか・・・」
私は、何処へ逃げてもお尋ね者なのね。
「あと一月もすれば、山の雪解け水で川が氾濫します。そうなれば、戦は膠着状態になるでしょう」
大軍の移動が制限されるので、敵は短期決戦を仕掛けてくるはずだとか。
「ラシルさん、私、ドゥルチと敵対する部族の協力者に知り合いがいます」
私、若旦那さんと大まかな手筈を決め、龍に乗り夜の闇に紛れザムの北の国境へ。
一方、こちらアルシュ国藩王ルドラさん、久しぶりにラシルさんからの連絡が届きます。
「どうします?」
ルドラさん、座主様と相談です。
「しかし、ドゥルチとはまた」
「ザムを手助けするなんて・・・」
ラシルさん、何を考えているのかしらね?
「荷の動きはどうじゃ?」
「ええ、結構な規模の隊商が組まれているそうです」
「敗戦を聞きつけ、向こうもザムを叩くなら今が好機とみておるのか」
座主様、ニヤリと悪い顔・・・。
「フホホホ!」
「何ですか?」
座主様、ルドラさんに何やら耳打ちします。
「価格を吊り上げるのはわかりますが、隊商を襲うというのは?」
「奪うのは、荷駄馬だけじゃ。荷だけ残されても、どうしようもあるまい」
ルドラさん、呆れ顔です。
「それで、奪った荷駄馬、どうするおつもりですか?」
「ユミルに買い取ってもらう、或いは猿王に下げ渡すか?」
猿族にも報いてやらねば、それでも賠償金の一部にはなる、とお婆様 呟きました。




