軍服の男
一方こちら、フェルの船着き場で別れた猿王さん。同行者さんと一緒に、北を目指して歩いています。そして、とある街の手前まで歩いて来た時でした。
「猿王殿、遠回りになるが、次の街には入らず、一旦西へ迂回して下さい」
「それは何故?」
同行者さん、口を濁しながら、見て欲しくないものがある、と答えます。そういえば昨日から、街道を巡回する兵士に度々出会います。
「軍事的な理由か?」
「・・・」
曖昧に頷く、同行者さん。
「なるほど、では一旦、西に向かうか」
「助かります」
そう言って、街道を脇にそれようとした途端、
「おい、そこの!」
後ろから巡回の兵士の一人、猿王さんを呼び止めます。
「お前だ、猿! そんな荷物抱えて何処へ行く?」
すると、慌てて同行者さん、間に入ります。
「待ってくれ、この方はお婆様の客人だ」
「ふん、都ならいざ知らず、こんな田舎でそんな言い訳通用するか!」
邪険にあしらわれ、兵士が猿王さんに近づきます。
「儂は、北のグラニスで開かれる新春市に行く」
「そうかい、でも生憎と今年の市は中止だ。とっとと国に帰りな!」
兵士は、にやにやと笑いながら答えます。
「そうか、それなら近くの村まで行って商談するさ」
「なんだと、人が親切に教えてやっているのに、逆らうのか?」
そう言うと他の兵士達、猿王さんを取り囲みます。
「おい、いい加減にしろ。その方は、本当に、うぐっ・・・」
「おお、これはすまん、肘が当たっちまった!」
止めようとした同行者さん、兵士から肘打ちをくらい悶絶します。しかし猿王さん、顔色を変えません。
「何が目的だ?」
「ああ? 俺らは、怪しい奴らを捕まえるだけだよ」
猿王さんの問いに、兵士はそう言って、剣を抜こうとします。
「おい、待て!」
後ろを振り向くと、馬に乗った軍服の男。階級が違うのか、巡回の兵士達、慌てて姿勢を正しその男に向き直ります。
「怪しい奴を見つけたので、調べておりました」
一番先に猿王さんに声を掛けた兵士、威勢よく答えます。
「だから、このお方はお婆様の客人だ」
腹を抱えながら懐から書類を取り出し、軍服の男に見せる同行者さん。
「なるほど・・・」
そう言って、馬上から猿王さんを覗き込む軍服の男。
「どちらへ?」
「グラニスの市へ」
そう答える猿王に、街を通るがいい、と軍服の男が答えます。
「よければ、お茶でもいかがかな?」
「お招きに預かろう」
猿王さんがそう答えると、同行者さん、頭を抱えていました。




