舞
私は、祭祀を行っていた方へ、ただ微笑を返します。
「それでは、準備がありますので暫くお待ちください」
祭祀を行っていた方、そう言ってその場を後にしようとします。すると、巫女の方が静かにその場に入ってきて、何やら耳打ちします。
「そうですか・・・」
静かにそうおっしゃると、何か考えておられます。そして、私の方へ向き直ると、
「少し、お手伝いをお願いできますか・・・?」
「はい・・・?」
私、別室に行くよう促され、説明を受けます。
「舞手が一人都合で来られなくなりました。出来ればその代わりを務めていただけませんか?」
「ええ、かまいませんが、でもどうして? それに、私が舞ってもいいものなのでしょうか?」
ある方が、貴方の舞を所望されておられるようです、とその方は意味ありげな言葉を口にします。
「追儺の舞です。それほど難しいものではありません。二人舞で相手と対になる動きをします」
巫女の方、ゆっくり舞い始めます。確かに、それほど難しい舞ではなさそう。これなら何とかなりそうです。
巫女の方に手伝ってもらい、慌ただしく衣装の用意をします。色鮮やかな着物に、花鳥の文様が施されています。
「では、これを・・・」
「え・・・?」
巫女の方、手にするのは奇怪な表情の面。うっ、予想外・・・。
今更できないとも言えず、椅子に腰かけ面をつけてもらいます。やはり、視界が遮られます。
「それでは参りましょう」
いつの間にかもう一人の舞手、舞台へ進みまじめます。それに続く私。
(ああ、外側に目がついてれば・・・)
笛の音が高らかに鳴り響き、舞が始まります。私、ともかく記憶を頼りに舞を始めます。
(あれ? そういえば白龍が癒しの雨を降らせたとき、私、龍が見ているものが見えた・・・)
全神経を、ただ対手の踊りに合わせることに集中します。いえ、触るといえばいいのかしら?
(目を皿のようにするって、こういうことね・・・)
私、面の下でひたすら呼吸を図ります。やがて、今まで何も感じられなかったのに、突然流れが現れます。まるで遥か昔からここにあったようです。
私はその流れに、ただ寄り添うように舞を続けます。いつ体をどのように動かすかではなく、体の奥深い所から生まれる律動に、舞の型合わせることに全てを捧げます。
一体、どのくらいそうやって舞っていたでしょうか? いつの間にか舞が終わるところでした。私は、対手の方の後を静かに歩き、ホッとしてその場を後にしました・・・。




