神殿
翌朝、凍った道を滑らないようそろそろと進みます。やがて、こんな所に集落があったのか、と思うような場所に数軒の家が見えてきます。
「あれは、神殿で働く人たちの集落です」
フェイさんが教えてくれました。
岩と土で固められた壁、下界とを隔てる小さな楼門をくぐります。神殿は、ここからさらに登った山の中腹にあるのだとか。
私達は、ひとまず集落の広場で休憩を取ることにしました。
お茶を沸かし、暖をとる皆さん。私、不思議に思ったことを聞いてみます。
「あの、鳥族の皆さんは、元々この場所に住んでいたのですか?」
「・・・!」
一瞬の間をおいて、皆、大爆笑です。
「アハハ、こ、こんな事聞かれたのは初めてだよ!」
フェイさんまで笑います。だって、ここは鳥族の聖地でしょ?
「私たちは、元々各地に散らばっていたのさ・・・」
今回のまとめ役らしき人、詳しく教えてくれます。
「こういう姿だから、いろんな国で重宝されてね。あちこちを飛び回っていたのだよ・・・」
その時、ある鳥族の代表がこの場所を見つけ、自分たちの聖地にしないか? と鳥族達の集まりで提案したそうです。
「崇高な気が流れ、聖地にふさわしい。加えてこの高度、他の種族が訪れるには厳しい・・・」
他の鳥族の代表も訪れ、誰も文句を言う者がなかったそうです・
「それ以来、神殿祀るものを置き、我らの聖地として、こうして時々お参りに来るようになった」
今から、数百年ぐらい前の事だそうです。
「では、神殿に行きましょうか?」
皆に促され、雪が残る瓦礫の道を登ります。いよいよ、鳥族の神殿です・・・。
集落を取り囲むような山々の中腹、その神殿はポツンと建てられていました。集落と同じような、岩と漆喰で固められ、小さな扉があります。
突然、朗々と響き渡る祝詞の声。その声を聞くと、不思議と畏まる気分にならざるを得ません。祭祀を行う方の技量の高さがわかります。
中に入ると、洞窟になっているのか意外と奥行きがあります。神殿部分には、木材が意外と使われていました。
その奥にあの声の主、白い着物を着た祭祀を行う鳥族の方、御神体と思しき磨かれた石に向って、朗々と唱えを続けておられます。
そのまま暫く、静かに聞き入ります。やがて、区切りがついたのか、こちらを振り向きにこやかに私達を見渡します。
「ようこそ、鳥族の聖地へ」
一瞬驚いた様子で私をじっと見据え、意味ありげにおっしゃいました・・・。




