聖山
再び飛行を開始して、数時が経ったでしょうか? いつの間にか下界は陸地に変わり、やがて目の前に白く輝く山が大きく現れます。
(老朽船を祀った時と同じ姿です・・・)
神殿道場から仰ぎ見た時と、眺める方向が違うのか、こちらの方がより雄大に感じられます。
そして、山の麓にある鳥族の発着所に無事到着しました。
「ここから暫く登山道を行くのよ・・・」
ザムから同行してきた巡礼の鳥族の方、暫し休憩を入れて登山道を登っていきます。私も、背負い袋を抱えて、フェイさんと彼らに続きます。
登山道は、鳥族の発着所から暫く出店が続いた後、林の中へと入っていきます。所々に雪が残り、寒さを感じますが日差しが木漏れ日となり差し込みます。
半日程登ったでしょうか? 辺りの気温が急に下がり異なる精妙な空気感が漂います。まるで、ここから結界の中に入ったよう・・・。
その日は、夜通し飛んできたので、麓から一番近い山小屋で早めに休むことになりました・・・。
翌日、さらに翌々日と、登山道は何もない荒野を進みます。空気が薄いのでしょうか? 一歩登るごとに息が苦しくなります。
「口で、ふっふっと息を吐きながら呼吸をするといいのよ」
同行している鳥族のお年を召した方、杖を突きながら教えてくれます。
「ありがとうございます。すごくお元気ですね?」
私は、高齢の女性の体力に驚かされます。
「あら、若いころはもっと元気だったのよ。東の海を何度も渡ったわ!」
「そうですか、私、東の国から来たのです」
懐かしくなり、道々その女性と話し込みます。
やがて、辺りは雪に覆われた白一色の世界へ。日の光が地面に照らされ眩しく感じます・・・。
「あなた、眩しくない?」
私達はいいけど、人族の方は大変よね。そう言って、木の板の真ん中を薄く開けた遮光眼鏡を貸してくれます。
「ありがとうございます」
それを掛けると、確かに和らぎます。見た目はこの際気にしません・・・。
「フェイさんは・・・?」
振り返るとフェイさん、しっかり遮光眼鏡をかけていました・・・。
「峠が見えたよ!」
先頭を行く鳥族のまとめ役らしき方、皆に声を掛けます。見上げると、青い空の向こうに白いお椀を被せたような頂きが見えます。
「・・・峠だ」
あの峠を越えれば、暫くは下りだそうです。ふっふっ、はっはっ、と口で呼吸しながら峠までの道を上ります。もうひと踏ん張りです。
その日の夕方、私達は無事峠を越える事が出来ました・・・。




