宰相殿の影
大臣殿、早速双六の盤木を抱え、宰相殿の部屋を訪れます・・・。
「宰相殿、お待たせしました。今年の初手合わせを願えますかな?」
そう言って、賽を振る真似をする大臣殿。しかし宰相殿、双六に目もくれません。
「大臣殿、そんな事よりカヌマ氏はどうなっておる?」
「先日、負傷の知らせの後、連絡を取っておりませぬ。暫くは休養が必要であろうと・・・」
大臣殿の答えに、宰相殿、苛立ちを隠せません。
「カヌマ氏を連行していただきたい。ユミル王に対する反逆罪の容疑だ!」
「何をバカなことを! 貴殿おかしくなったのか・・・?」
大臣殿、呆れて物が言えません・・・。
「少なくとも、何か企んでいるのは間違いない。アルシュやザムを唆し、バルバクに攻め入らせ、その火消を自分達が行う。上手くいけば、近隣諸国での猿族の評判を高められる・・・」
「何を根拠にそんなことを・・・?」
「根拠など不要だ。それから、龍を御するような奇瑞を表す人物がどこかにいるはず。その人物も連行せよ! この国を脅かす恐れがあるだけで十分だ・・・」
宰相殿、大臣殿の顔はもう見ていません。この国と王を守る! その決意と共に、背中から黒い影が立ち上り、ゆらゆらと怪しく蠢きます・・・。
一刻後、大臣殿、猿王殿とアルシュ藩王ルドラ殿に鷹便を出します。猿王殿には、まとまった金子を送り、この国を急ぎ出ろと。そしてルドラ殿には、龍を御するものを匿え、と言伝を。
「宰相殿、双六に見向きもしなかった。あれは、儂の知っている宰相殿ではない」
大臣殿、窓辺に向かって呟きます・・・。
・・・・・・・・
一方こちら、宮殿の占い担当官殿、若く美しい女占い師がいる酒場に、昨秋から度々足を運びます、
「あら、お兄さんも占いに詳しいの?」
占い担当官殿、自分の占いは国の命運を左右するのだ、と酒の勢いもありその女占い師に自慢します。
そして、新年が明けた日の夜も・・・、
「いらっしゃい、待っていたわ・・・」
さっと、腕を組んで席に案内する若く美しい女性占い師。二人で意気投合して話し合い、やがて話題は、鳳凰出現へ・・・。
「鳳凰と言えばね、私トゥルクで遺跡の調査の手伝いをして事があったの。そしたら、そこの壁画で面白いもの見つけちゃった・・・」
「へ~、どんな?」
「内緒にしてくれる?」
「・・・ああ」
若い女占い師、担当官殿だけに聞こえるようそっと囁きます。耳元をくすぐる甘い声、頭の芯が痺れます。妖しい香り漂う酒場、静かに夜が更けて行きます・・・。




