別れ
こちら、ザムを旅する私。若旦那さんが借りた老朽船に乗って、都ラーヴィまで行く事になりました。
「よう、猿の大将!」
もう隠れる必要のない龍達、堂々と騎士の姿を現します。若旦那さん、再び口をあんぐり。しかし、気にすることなく赤い騎士、猿王さんと何やら話し込んでいます・・・。
すると、猿王さんと赤い騎士、二人揃ってこちらへやってきます。
「ラシル殿、急な話だが頼みがある。我が儘を言って申し訳ないが、ここで別行動をとらせてもらえぬか?」
「姐さんの護衛、俺たちで十分だよ、なあ兄貴」
青龍もそれに同意します。猿王さん、ザムに来た本来の目的は、猿族の将来に役立つ商品を探しに来たとか。ルドラさんから、ザムの北方へ行くよう助言ももらっているそうです。
私、お婆様に、猿王さんが乗船せず別行動をとる事を説明します。
「なるほど、話はわかったよ。だが、同行者を一人つけさせてもらうよ」
猿王さんも同意したので、ここで私達は別れる事になりました。
「猿王さん、同行してくれてありがとう、元気でね!」
「ラシル殿も達者で・・・」
赤い騎士と青い騎士、猿王さんに手を振ります・・・。
こうして私は、ようやく老朽船に乗り込みました。すると、船長さん、傍にやってきます。
「アイツを追い払ってくれて助かったよ!」
「え? どういうことですか・・・」
「縁起担ぎだが、猿を船に乗せるのは良くないのさ・・・」
私、そんなつもりじゃありません。猿王さん、商品を探しに行くって言ったから・・・。
「まあ、いいじゃないか」
船長さんは、そう言って去っていきます。
「よくない! ちょっと、赤龍、このこと知っていたの?」
「・・・」
赤龍、無言でするりと指輪の中に消えて行きます・・・。もう!
「姐さん、猿の大将が気を利かしたのも確かだが、奴なりの理由もある・・・」
青龍曰く、時間のあるうち、一刻も早く猿族の復興を目指したいそうです。そんな事を、ルドラさんと話していたとか・・・。
「そうだったのね・・・」
私は、寂れた猿族の街を思い出し、やるせない気持ちに包まれました・・・。
そして、夕方、ようやく船が錨を上げて出港します。しかし、水平線には黒い雲が立ち込め、風がますます強くなってきます。
「大丈夫かしら?」
私の呟きに応えるように船長さん、大声で叫びます、
「途中、避難できる島もあるから問題なし。 出航~!」
角笛が、長く低い音を響かせます。老朽船は、ゆっくり港を離れていきました・・・。




