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命を継ぐ者(ラシル)の旅-逃亡編  作者: みのりっち
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洗礼1

それは、ザムに入って十日目、ようやく村らしい場所に到着します。私は、村長さんの家を訪ね、ユミルから来た行商の者なのでここで商いをさせて欲しい、と許可を貰います。すると、村長さんの奥様らしき方、隣近所に声を掛けて下さいました。


「ところで、何があるんだい?」

「はい、湯の花の軟膏です。少し匂いがしますが、肌荒れにいいと評判の品です!」

「見本はあるかい?」

「はい・・・」

村長の奥様に、商品を渡し試してもらいます。すると、周りの人達から、私も見本が欲しい、とせがまれる始末。見本は一つしかないので、それを使いまわしてください、と言ったら、


「あら、もうなくなっちゃった!」

「・・・」

(え? もう?)

見る間に、皆、手やら足に塗りたくって、あっという間になくなります。


「私、まだ試してないのよ!」

しつこくせがまれるので、仕方なくもう一つ商品を渡します。


「これいくらだい?」

「はい、代金は一つ銅貨三枚です」

「え~?」

途端に、奥様方から不満の声が上がり、この間来た行商人は銅貨二枚でおまけもしてくれたわよ、と口々に(はや)したてます。


「他にはないのかい?」

あるにはあるのですが、ちょっと値段が高いので。言い淀む私に、いいから見せなよ! と迫る奥様達・・・。


「これ、何だい?」

それは、つやの出る洗い粉です。でも値段が銀貨三枚もするので、流石にここでは売れないかな、と出さなかったのです。


「いいから、試させて!」

強引に商品を奪い取ると、早速水場で試す奥様。


「あら、これなかなかいいわ!」

すると、私も、私も、と手が伸びてきて、あっという間になくなります。


「見本もっと出しなよ!」

流石に、私も腹に据えかね、お買い上げいただけるのですか? と聞いてみます。すると、


「皆の分まとめて、軟膏五個と洗い粉を一つ買うよ、でも代金は半額でいいだろ!」

「さすがにそれは・・・」

「いいじゃない、最近景気も悪くてね。せっかくユミルから来てくれたんだ。買ってあげたいけど、それしか出せないんだよ・・・」

そうよ~、と周りの奥様方も(うなず)きます。


「すみません、それだと原価割れです。残念ですがお売りできないです・・・」

「いいじゃない、安くしてよ!」

私が、すみません、と繰り返すと、なんだい、お高く留まりやがって! と罵声を浴びせられます。


(もう、無理・・・)

荷物をまとめ、逃げるようにしてその場を後にしました・・・。



私の行商初日、いきなり厳しい洗礼で幕を開けました・・・。

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