分からない世界で分からないが多発すると分からないが増します
寒いですね。
鍋が美味しいです。最近は炊飯器で圧力をかけながら料理をすることにハマってます。煮豚とか美味しんですよ。
明らかにあれは廃れているという表現が的を得ているかのような荒廃具合なんですけど。
これ本当に大丈夫なのかな?このまま進んで大丈夫なのかな?
割と真面目に人がいる気がしないし、あそこにいるとしたらそれはもう立派な人外しかあり得ないんじゃなかろうかとすら思えてくる。
「大丈夫よ。気配は感じないから何もいないわ」
……この世界の生物ってさ、気配消したりできる奴とかっているよね?
「もちろんいるわね。多分想像以上にいるわよそんな奴ら。私も気配を消してる奴は流石に分からないわ」
それ本当に大丈夫なの?私的にはあそこからゾンビが大量に出てきたとしても何ら不思議じゃないくらい何かがいそうな雰囲気だよ?
「仮に何かいるとしたら……何がいるのかしらね?まぁ、直接危害を加える感じの奴だったら守れるんだけど」
気配消してても?
「意志を持って何かを成す時には必ずそこに感情が生まれるわ。例えば、殺気とかね。その一瞬さえあればそいつを捕まえるくらいなんてことないわよ」
「さらっとほぼ不可能にしか聞こえないことを堂々とやれるって言い切る朱美は凄いと思う」
「それだけ大切なのよ」
そう言いながら頭を撫でるのはやめてほしい。照れる。
怖いのは山々だけど、この世界の人間の文化に触れられる機会は逃したくない。人がいないっていうのはむしろ都合がいいんじゃないのかと思えてきた。
朱美たちと堂々と行動を共に出来るわけだし。樹里が何をしでかすか分かったものではない。
一先ず心の不安に一区切りつけていこうと思う。
行先は朱美に任せっきりなところもあるから、私の一存で決めれるわけでもないしね。ホラー系が苦手な私の個人的な話を許可してくれるのであれば、あまり行きたくない気持ちがあったりなかったり。
ところで、朱美とスラちゃんと樹里がこの手の事に慣れてるのは何となく分かるんだけど、美子はどうなんだろう?
まだ小さいし、もしかしたら怖いの苦手かもしれないよね。そうだったら私と仲間だよ。
近づけば近づくほど、遠くからでは分からなかった現実が目の当たりになるというか、粉々になった家屋や半壊した建物がいくつも見えて、明らかに何らかの生物の襲撃にあった現場というのが分かりやすい表現だと思う。
この世界でこの惨状はどういう風に認識されてるんだろう。自然災害の一種と思われているのかな?仕方のないことで片づけられるような事なんだろうか?
これだけに限定して考えてみると、この世界は前の世界よりも日々の危険が多いって思うね。災害というくくりで考えてもいいのなら、生命を脅かす生物がすぐそばにいる生活なんて考えたくもないし。
逆に、朱美たちのように私みたいなのにも優しくしてくれるいい子たちもいるって意味じゃ……前の世界よりも良いのかな。コミュニケーションがとりやすいよね。
「現実逃避気味にどうでもいいこと考えてないで行くわよ?」
「私たちの足は朱美なんだから、気分次第で進行も停滞も出来るでしょ」
「緊張感が欠けるのよねぇ」
そう言われましても……生まれてこの方緊張する場面が少なくてですね、この世界では無理矢理緊張感溢れる生活を強いられることもあって、和める時に和んでおかないとすぐに疲れちゃうんですよ。
「まぁいいわ」
適当な言葉でのらりくらりしても、朱美の足が止まることはなく、私たちは廃村の入り口まで辿り着いた。うん、中入りたくないね。
凄いよ色々と。何故こんなにも分かりやすく崩壊の跡が残っているんだろうね。風化とかしないのかな?それとも、ここの村って結構最近に滅ぼされたとかそういう感じですかね?
「そこら辺はいまいち分からないわね……スラは何か分かる?」
『……触らないと分かんない?』
「それもそうね。とりあえず行きましょうか」
朱美が入り口から廃村の中へと足を踏み入れたその時、私の視界は白一色で染められた。
いや、白というよりも眩しすぎる光と表現した方が正しいのかもしれない。
突然の演出にももちろん驚いたわけだが、それ以上に光量が凄まじく、右腕で視界を守り、左腕で美子を強く抱きしめた。
朱美に乗せてもらっていたはずなのに、その感触が消え奇妙は浮遊感に包まれる。自分に何が起こっているのかも理解できないままどうしようかと考えている私に、何処からか声が聞こえた。
「世界への扉は開かれた。今ここに、君の魂を導こう」
魂?もしかして絶賛幽体離脱中ってこと?
正直意味が分からない。だが、光が少しずつ治まっていくのはいくのは分かった。身体の感覚も戻ってきているのか、私は美子を抱えたまま地面に座っていた。
……うん?地面?
とりあえず周囲を見回す……朱美とスラちゃんと樹里がいない。そして、ここはさっき入ろうとした廃村の入り口の目の前だ。
「……これはまた……キツイものがきたな」
「アゥ?」
恐らく私以上に何が起きたか分からないであろう美子がマイペースにいてくれることが唯一の救いか。独りだったらすぐにネガティブになっちゃうからね。
一通り美子を撫でまわして、軽く息を整える。これが現実なのか、それとも仮想現実なのかは分からないけれど、ほんの少し前までは廃村だった村が、襲われた痕跡一つ無い健全な状態で復活しているのは異常だと思うんだよね。
この世界の知識が浅いゆえに分からないんだけど、何この世界、こういうのも頻繁にあるわけ?
でも朱美たちがいないのが気になる。それに、さっきの声の主は誰なんだろう?もし人間ではなく、朱美と同じような生物だったら、意思疎通をとれて頭も良い生物に該当しそうなんだけど、そいつがこの現状を作り出しているとすれば、私たちをどうしたいんだろう?
朱美たちは危険そうだから除外したのかな?でも美子も凄い強いイメージが私にはあるんだけど……。
前提情報が無いから信憑性の不確かな仮定しか出来ない。無理だな。でも世界への扉は開かれたって、明らかにヤバい奴だと思うんだよなぁ……。
さっきの廃村よりも悪いイメージが定着してしまった村なわけだけど、これどうすればいいんだろう。入らなきゃダメなのかな?得体のしれないナニカがあるって私の中の第六感が囁いているんだけど。
「アゥアゥ、ウゥ?」
「朱美たち居ないのに気づいた?何でいなくなっちゃったんだろうね?」
「ン~……ウッ」
「え、やっぱ中に入った方がいい感じ?」
「ウ」
美子は村の中に何かがあると踏んでいるようだ。実は私もなんだよね。
美子はしっかりしてるなー。私なんてビビりまくって先に進みたくないって心が全力でアピールしているよ。
とりあえず立とうか。何時まで経ってもこのままじゃ進展しないし、行動してみよう。
もしかしたら案外簡単に朱美たちに逢えるかもしれないし。
美子を下ろして立ち上がる。美子も自分の足で立った。私の服の裾をつかんで離さあないけど。そんなところも可愛いから許す。
兎にも角にも、まずは村の中に入ろう。そこから全てが始まるのさ。入ったら、入った後の私が何とかしてくれるはずだからね。
こんな適当な思考にも突っ込んでくれた朱美がいないと寂しく感じてしまう。
村の入り口に足を踏み入れたら、さっきと同じ要領で元の場所に戻してくれないかなー。
そんなことを考えながら村の中に入る。無論奇跡なんて早々起きるはずがない。だって魂導かれてんだもの。凄く厨二チックな言い方だったけど、この世界だとそれがデフォルトの可能性大なわけで、マジであの言葉通りの展開の可能性が非常に高いと予想出来るわけですよ。
そうなったらどうなるのか?
もうこの課せられた試練的なものと割り切って頑張るしかないでしょうよ。せっかく死にたがりから少しは遠のいたかと思ったのに、何度もこう命が関わりそうな超常現象に巻きこまれていると死にたくなってくるよね。
「ウ?」
「なんでもないよ」
……まぁ今は死ぬ気ないんだけど。
村の中に入ってまず感じたのは、あまり活気を感じないところだ。そもそも誰かいるの?静かすぎない?
立派な家はいくつか見えるし。でも、村の中心部分にあたるのかな?そこには周りの家屋と比べて明らかに年代を感じさせるボロボロの教会があった。
大きさだけは他の建物より大きいけど、それ以外は全て劣っている感じ。でも取り壊されていないということは、この教会が存在している意味が多分あると思うんだ。宗教的な意味合いで。
怖いのは、さっきの声の主がこの異質なボロ教会の中にいるような気がしてならないんだよね。
綺麗な建物が点々としてる中、こんな廃墟みたいな教会があったらそりゃあ勘繰るよ。それに、村の中を軽く歩いて思ったけど、この村機能してるのかな?
湖のあった森から出てくるときにいた草原の生物よろしく一体の生物が生み出す空間とかそういうオチ?
こういう怪しいところをサクッと探索して終わるのが楽なんだろうけど、私はホラー苦手だしな……。
美子は……そうでもないみたい。
うん、やっぱり一旦家に人がいるかどうかだけでも確かめよう。畑とか牧場はあるんだから、人がいなきゃおかしいと思うんだよ。牧場にはなんの生物もいなかったけどね。
「美子、あっち行こうか」
「アゥッ」
そういって教会から離れようと後ろに振り返った時、
「あなたたち、この村の人じゃないですよね?」
寒気がした。
静かすぎる村の中、小さな物音一つ立てずに私たちの背後まで接近していた存在に。何よりも、美子が一切反応していなかったことに驚いた。
頭の中が軽くパニックになってしまったために、言葉を返すことが出来ず、私たちに声をかけてきた存在を凝視することしかできなかった。
そしてそれは、私が求めていた存在でもあった。
人間だったのだ。正確には人間の少女。前の世界で例えるなら中学生くらいの女の子だ。
赤みがかったショートヘアだが、ところどころ髪が長くかつそこが跳ねている。ミモレ丈のスカートに薄手の長袖。作業に適した服装であることが分かる。そして、全体的にスレンダー。髪の色とかはこの世界特有なんだろうか。白である私が言えたことではないかもしれないが。
そんな子が口元だけの微笑を携えながら私たちの前にいる。営業スマイルでももう少し表情を隠そうと努力するのではないかと思うレベルだ。
俗にいう目が笑ってない状態の子なわけだけど、こういう人からってやけに圧を感じるのは私だけなんだろうか?
一応、目は合ってるから何か返答した方がいいんだろうけど、頭の中が驚きの展開にこんがらがってるので無言の時間が過ぎていく。
マイペースな美子だけがこの状況に私と目の前の子の顔を交互に見つめるというシュールな光景が出来上がってしまった。
私って表情が変わりにくいから、基本無表情なんだよ。表情筋が凝り固まってるからさ。なるべくファーストコンタクトは印象良くしたいと思っていたんだけど、いざその場面に直面すると上手くいかないもんだよね。
無言の時間が過ぎる過ぎる。
多分目の前の子もどうしたらいいか分からないんじゃないの?
それとも私の返答ずっと待ってる感じ?凄く申し訳ない気持ちにさせられるねこれ。
でもさ、こういうのって時間が経てば経つほどに気まずくなるやつじゃん?そんな中私のような中途半端な奴に期待するだけ無駄というかですね……気弱な奴に刻一刻と気まずさが増す状況を良くしろと言われても出来るはずがないんですよ。
出来ることと言えば、美子の頭を撫でまくることくらいかな。気持ち良さそうに撫でられてるからさ、止めるタイミングを見失ったよね。本当にどうしよう。
誰か時を巻き戻してくれたりしない?というか、この空間がもしタイムトラベル的な時間軸だとしたら、ここに私を連れて来た奴ワンモアプリーズ。時を巻き戻してもう一回さっきの場面からやり直させてよ。
次はバッチリ決めてやるって。
まぁ祈るだけ無駄なんですけどね。顔も知らんし、そんな都合のいい展開が待ってるとも思えないし。
不味い。
見つめ合ってる時間がどんどん長くなっている。その間目の前の少女の表情は一切変わってない。多分私も。どっちにしろ軽いホラーじゃない。
体感数分以上は確実に経ってるよね。だって視界に映ってる美子が段々眠そうになってるもの。仕方ないよ。こんな静かな村の中でずっと動かない私たちだもの。ボーっとしてたら眠くもなるよ。
あ、美子が私に抱き着いてきた可愛い。これは抱っこするしかない。一回目線変えよう。
少女から視線を外し、美子を抱っこする。私ってそんなに力ないはずだけど、美子は軽いから案外抱っこ出来るんだよね。長時間はもたないけど。
その場的にもようやく時が動き出したって感じだよね。だからなのかは分からないけど、少女がもう一度声をかけてきた。
「あの……あなたたち、この村の人じゃないですよね?」
まぁ、相変わらず表情に変化は見られないけど、若干イラついた雰囲気は背後に感じるよね。
寒くなってきたと言えば、アイスがまた一段と美味しく感じる季節になりましたね。一日5~6個はペロリといけますよね。




