サバイバルなのに緊張感が欠けすぎだよね
寒くなってきました。
季節の変わり目といえば、急激な寒暖の差のせいで体調を崩される方が多いですね。
こういう時って、ちょっとだけ期待したりするんです。
私自身も体調不良になって欠勤したいなーなんて感じで。
今の今までスルーしてきたけど、この生まれたままの姿というのはかなり危険だと思う。いくら見た目が幼いからといって、その手の変態がどこにいるのか分かったものではない。
やっぱこんなにかわいい見た目をしているのだから、かわいい服を見繕いたいよね。
「作るのは私なんだけど?」
「作りたくないの?」
朱美の眼が怪しく光ったのを私は見逃さなかった。もしかしたら、一番ヤバいのって朱美かもしれない。
「なんか言った?」
「何も言ってません」
分かった上でこういう風に聞いてくるということは、踏み込まなければ大丈夫なことだと勝手に解釈してる。逆に、踏み込んだら何されるか分からないから踏み込めない。どんなに反応が気になったとしても、決して踏みこんではいけない地雷を踏み抜く可能性は常に存在しているのだ。
「……でも、作るのは明日になりそうね」
朱美の腕は……この子に千切られてしまった訳でして。一日で治るとは言ってたけど、この子に目立つ外傷は一つもないことから、朱美が一方的な被害者に見える不思議。
「服を着せるにしても、まずはそいつの身体を綺麗にしないことには着せたいものも着せられないわ」
確かに。
今までずっと裸で過ごしてきたのなら、全身が土とかで汚れてるはず。水浴びとかは一人でやってたのか、あんまり変な臭いはしない。
こんな場所にいれば、そりゃあ土埃とかで汚れるよね。
でも近くに水場があるとも思えないし、これは例え服を作ることができたとしても、朱美が着ることを許してくれないかもしれない。
「そんなの、スラに頼めば何とかしてくれるんじゃないの?」
「え?」
『出来る、出来る』
「え?」
「アゥ?」
「え?」
スラちゃんに汚れを除去してもらうと?
「そういうこと」
「スラちゃんって本当色々なことができるよね」
『出来る!』
でもさ、それってスラちゃんがこの子の身体を一度取り込むということだよね?
それって色々な意味で大丈夫?
「私たち以外に見てる奴もいないんだし、大丈夫でしょ」
「それもそうだね」
「ウゥ?」
樹里を視界に入れたくないがために私に抱き着いているこの子は、私たちの話の雲行きをよく理解していないようだ。
よし、もうこのままやってしまえ。
スラちゃんレッツゴーだよ。
合図と共に、スラちゃんは身体を大きくし始めた。
ちょっと待って。大きすぎない?私も一緒に飲み込めるくらいの大きさあるけど?スラちゃんの中にこんな質量隠されてたとか驚きなんだけど?
「折角だし、結愛も一緒に綺麗になってきなさい」
「え?」
「うん」
スラちゃんは朱美に言われるがまま私の服を触手で器用に脱がし始めた。
ちょ、まだ良いとも悪いとも言ってないんだけど?私の意志がそこには存在してないよ?なんでそんなにもノリノリで脱がそうとするのさ。
スラちゃんは私の扱い方を熟知しているのか、私が抵抗できない程度の刺激を肌に与えてくる。そのせいでろくに反撃できずに私の服は剥かれていった。
『結愛も綺麗に、する!』
「あぁ……うん……お願いしようかな……」
「アゥ?オゥゥゥ」
ケモミミっ子は生まれたままの姿にされた私をまじまじと見つめ、意味ありげな声を上げている。やけに一部分に視線を感じるよ。でも散々弄ばれた私の感度を舐めないでほしいね。視線でも軽く感じるくらいまでになったわ。
「ただの変質者じゃないの……」
「やめて。悲しくなるからそういうこと言わないで。私は変質者じゃない」
この異常な身体のせいであって、決して私が喜んでいるわけではないんだ。
樹里は樹里で私を無言で見つめてくるのをやめてほしいな。素直に怖いんだよね。舐めまわすようにではなく、視界に私の全身を入れて見つめ続けるみたいな感じで、変な圧を感じるから。
そんなことを考えていると、スラちゃんが私とケモミミっ子を足先から包み込み始めた。触手から水分補給させられた経験と、日頃からスラちゃんを抱きしめたり、色々してる身からすると、スラちゃんの身体って表面がスベスベなんだよね。
だから、擦られたりしてまた人には見せられないようなことされるのかなって警戒していたんだけど、今足先に感じているのは温水プールみたいなちょっとだけ冷たさを感じる水の感触だった。
今までの敏感な反応見せてしまうような感じ方ではなく、柔らかい布団に包み込まれるような心地よさを感じる。これが普通の気持ち良いだと思うね。
ケモミミっ子も初めは食べられると勘違いしたのか暴れそうになったが、されるがままになっている私を見て見様見真似で身を預けている。顔は私と正反対で新感覚に興奮している感じだけど。
足先から膝、太腿、お腹、腕、胸、首と徐々に私とケモミミっ子はスラちゃんに包み込まれていき、そこまでいって私は我に返った。
「ねぇ朱美」
「なに?」
「これってさ、頭まで包み込まれたら息できなくない?」
「止めればいいじゃない」
「え、ちょ、まっ」
有無をいう前に私とケモミミっ子の頭はスラちゃんに包まれた。
思わず息を止めて目を瞑ってしまったが、ケモミミっ子は大丈夫かな?水中で息を止めるとかできるのか分からない。いや、ここはスラちゃんの中であって水中ではないんだけどさ。
心配しつつ終わるのを待つしかないかと思った矢先、頭の方から開放感を感じた。
目を開けてみれば、スラちゃんが私とケモミミっ子から離れ、地面で元の形を形成している。かなり早く終わったねこれ。体感30秒くらいじゃない?
「まぁ、老廃物のみをスラが吸収したような感じだからかしらね。濡れてもいないだろうし、スッキリしたんじゃない?」
言われてみれば、自分が全く濡れていないことに気が付く。へぇ、スラちゃんってそんなこともできるんだ。本当に万能というか、何でもできるというか……ちょっと待って。
「何かしら?」
「スラちゃんが吸収したって言ってたけど?」
「言ったわね」
「それってつまり、今私とこの子はスラちゃんに食べられたってこと?」
「食べられたというよりも、体内に入れられて悪いものだけ除去して吐き出されたって感じね」
「食べるよりも嫌な答えなんだけど」
「綺麗になったんだから良いでしょ?」
……そりゃあそうなんだけどさぁ……。こう、前の世界の常識というか、偏見なのかもしれないけれど、口に入れたものを吐き出すってそこはかとなく汚いイメージが脳裏にこびりついているんですよね。
「そんな常識捨てなさいな。気にするだけ無駄よ」
「なんかそんな気がしてたよ」
『結愛!綺麗になった!』
「スラちゃんのおかげですごくスッキリしたよー。ありがとね」
「アゥ」
ケモミミっ子もスラちゃんに対しての警戒心が薄れているようだ。スラちゃんを指先でツンツンしている。
冷静に見てみると、やっぱ猫っぽい耳と尻尾を持ってるよなー……。でもこの世界の猫ってこんなにも馬鹿力を持ってるものなのかな?
あ、私のとこ来た。膝の上に乗ってきた。
「フアッ」
私を見上げて笑顔を作る、可愛い。そして対面にいる朱美が圧を伴う笑顔を向けてくる、怖い。
結局私には相当懐いてしまったという認識いいのかな?懐いてくれるのはいいことなんだけど、服を着ていない幼女を抱きしめていると恐ろしいまでの犯罪臭がして、私の中の罪悪感が刺激されるんだよね。
「そいつの自業自得だけどね」
「そうなんだけどさ?理論的にではなく、道徳的に考えるとどうしても、私は服を着てるのに、私よりも幼い子供に服を着せないという行為が虐待のように捉えられるのではないかと思いましてはい」
「虐待って言われてもねぇ……前の世界とは世界観がそもそも違うのよ?」
そこなんだよね。世界が違うんだから、それならばその世界の基準に沿って物事を考えたほうが楽なんだけど、事前知識を持った状態で、かつ精神的にも成長しきった状態でこちらに来てしまったからか、どうも前の知識が邪魔するよね。
奴隷とかが許されている世界なのかもしれないし、それだったら衣服とか制限されてしまうこともあり得る話になってくるよなぁ……。
こんなことを考えても意味はないと分かりきっているのにも関わらず、それについて考えるとついつい考え込んでしまう不思議。たまにある。
「結論を言えば、考えるだけ無駄で全て終わってしまうよね」
「そうね、賛成反対あるでしょうけど、それを体現できるだけの行動力がなければただの自己満足になってしまうわ」
「朱美は厳しいね」
「普通よ普通」
ケモミミっ子を撫でながら話していたが、いつの間にか小さな寝息が聞こえてきた。きっと、この子も寂しかったんじゃないかと勝手ながらに想像する。
「寂しいというよりも警戒が解けず、安心できなかったというべきだと思うわ」
「……朱美は厳しいね……」
「普通よ普通」
ところで、私は今日どのようにして寝たらいいんだろう?
この子を起こしたくはない。だから、なるべく今の姿勢を維持したい気持ちが強い。でも、正直この姿勢は辛い。せめて寄りかかって寝たい気分なんだけど……。
目の前で朱美がため息をついた。私が朱美を見ながら考えてたせいもあるんだろうけど、その身を起こし、私の隣まで来てくれる。
「これで寄りかかれるでしょ?」
「ありがとね」
朱美の腕に目を向けると、徐々に回復しているのか、さっきよりも腕が復活している。流石に指先まで戻らないとどうしようもないかもしれないが、戻ってきているのを見て安心した。
「そうだ、朱美」
「ん?」
「この子の名前どうしよっか」
「結愛がいいと思ったものでいいと思うけど?」
いやぁ……私ってネーミングセンスあるのかどうかは分からないし、全て和風の名前になっちゃうし……。
「特別感があっていいじゃない。私は結愛からもらった名前好きよ?」
「……なんか、面と向かって言われると恥ずかしいね」
『スラも!スラも!」
「スラちゃんもありがとね。すごく嬉しいよ」
樹里もそうなのか、私の視界で激しく頭部を揺らしている。
「樹里もいい子だね」
「いい子なのかしらね?」
そこに疑問を持ってはいけない。
じゃあ折角だし、私が名前を付けようかな。
綺麗な黒髪だけど、所々赤みがかった部分もある。これは種の特徴的な部分なのかもしれない。ねこーネコーねこー……うーん……裸だしな……。
この子に良さそうな名前って何だろう……?お姫様っぽい感じの可愛い名前がいいな。こんなにも愛らしいんだから。
「美子かなぁ……。美しい子っていうことで思いついたんだけど……」
安直すぎるだろうか?どうしても猫っていうのが頭に残ってしまい、呼び方が似てる名前にしましたなんて口が裂けても言えない。
「思考が駄々洩れよ」
でもバレるんですよね。
「でもいい名前なんじゃない?私は好きよ」
『スラも!』
樹里も頭を揺らしている。
まぁ、みんなからの許可?も得られたわけだし、あとはこの子が気に入ってくれるかどうかだけだ。
大したことやってないのに、一息ついたからか、急に眠気が襲ってきた。
「無理せず寝なさい。明日も移動しなきゃいけないんだから」
「うん、そうだね。おやすみ」
目を閉じた瞬間、私の意識は暗転した。
〇
良い匂いがする。何かが焼ける音も同時に聞こえてきた。多分肉だ。
瞼を開けてみると、朱美の身体が太陽から私たちを遮ってくれていることに気づく。
「起きたみたいね。作るものは作ったし、食事の用意もできてるわよ」
「……うん、おはよう」
胸元を見てみれば、まだ私に抱き着いて眠っている美子の姿がある。心地良さそうに眠っている。頭を軽く撫でると、気持ちよさそうに耳をピクピク動かした。
スラちゃんと樹里は肉を焼いているらしく、朱美は美子の服を量産しているようだ。
「腕戻ったみたいだね、良かった」
「ええ、調子も悪くないわ。とりあえず、美子のこと起こしてくれる?」
まだしばらく寝かせてあげたい気持ちがないわけでもないが、朱美も早く服を着せたいみたいだし、名前も早く伝えてあげたい気持ちもあるので、頬を指で突いてみる。
「ウゥ……ヤァ……」
若干鬱陶しそうな反応を示しているが、何度かやっているとゆっくり瞼を開けた。
「おはよう、美子」
「ウゥ?」
無論、返ってくる反応は首を傾げた?マークだ。まぁ、これはおいおい分かってくれればいい。
「今日から君の名前は美子だよ」
「アゥ?」
言い聞かせるように伝える。あとは時間が何とかしてくれるんじゃないかな。
美子がこの名前を気に入ってくれるかどうかは分からないけど、多分いい意味で受け取ってくれるんじゃないかと思ってるんだ。確証はないけどね。
まぁ、一度も体調不良になることなく健康的な生活をしていますけどね。
今更ながらではありますが、評価してくださった方々本当にありがとうございます。
今までこの小説の評価とかに無関心だったのですが、思いのほか読まれてるみたいでして、これからも頑張っていこうという励みになりました。
これからもよろしくお願いします。




