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弄りが絶妙に上手い人って愛情に溢れていると思います

少しだけ復活してきました。

暑さに弱いせいで、調子がイマイチな日が続いていましたが、最近の気温はそこまで身体に害を与えてこないため、快適に過ごすことができました。

 見渡す限り、国だったとは到底言えない現荒れた野を前に、私はある不安を感じた。


 こんなヤバそうなところの近くに果たして人が住む場所など存在するのだろうか、と。


 逆に、あったらあったで道徳的に大丈夫なのかと真剣に問い合わせたいような場所くらいしか、私の小さな脳内メモリ―では想像を膨らませることが出来ない。


 流石に動物もいなさそうだし、生物もいないのかもしれない。


 空は赤みがかってきており、もう少しで今日という一日が終わることを示唆している。


 この荒野での野宿が決定された。


「げんなりした顔してるけど、大丈夫?」

『大丈夫?大丈夫?』

「いや、ここで野宿かと考えると流石に気が滅入ってね」


 焚火くらいは何とかなりそうな気がするけど、食料水源共に視界から姿を消していることから、今日はご飯無しという現実も直視しているため、余計に気が滅入る。


「悲観しすぎよ。食料くらいあるわ」

「え、あるの?」


 この生命が活動を停止したみたいな荒野に?


「スラと樹里もいることだし、食料の調達くらいは出来るに決まってるでしょ」

「それは本当に食べられるものだよね?私が食べられるものを指して言ってるんだよね?」


 スラちゃんと樹里ってどっちも雑食のイメージがあるから、そこら辺の地面とか枯木とか岩とか持ってきそうで怖いんだけど。


「流石にそれくらいはスラたちも考えるわよ」

「なら良かった。ところで、ここにも生物的なのがいるってこと?」

「的なのではないけど、いるわよ。地面が変に陥没したり、盛り上がったりしてるでしょ?」


 言われてもう一度荒野を眺めてみると、確かに自然現象では考えられないような大きな穴とかが地面に開いていたり、小さな山みたいに隆起したりしているのは確認できた。


 ……嫌な予感がするな。


 あの穴なんてかなりでかいぞ?まさかとは思うけど、あのどでかい穴を開けた奴が今晩の御飯ですよーみたいなボケをかましてくるとかないよね?


「そのまさかよ」

「私簡単に丸呑みされる気がするんだけど」

「結愛は私と居ればいいわ。狩りはスラと樹里に任せればいいのだしね」


 いや、その子たちも簡単に丸呑みされそうな見た目の穴ですけど?


 朱美の言葉だから信頼しているけど、本当に大丈夫なんだよね?信じるよ?


「大丈夫よ」

「なら信じる」


 とりあえず話は一段落ついたので、野宿の準備をしなくてはならない。そんなにすることは無いけど、焚火をするための薪とかを集めておかなければならない。


 それくらいは私でも出来ることだし、スラちゃんたちが狩りに行っている間、朱美と行けば危険もないだろう。


「それはつまり、私と二人で共同作業をしたいのね?」

「なんで勘違いするような言い方に変換したの?」


 意味ありげに言わないでほしい。ついでに首元に顔を近づけないでほしい。くすぐったいのも軽く感じるんだよ。


 さんざん抗議しているのに、私の言葉に耳を傾てくれないのはなんでなの?


「弄りがいのある結愛が悪いわ」

「私のせいかよ」

「反応が良くてついついいじめちゃうことってあるでしょ?」


 私をそっち側に誘うな。前の世界と総合しても一度たりともなったことはないわ。


「つれないわね」


 やられる側の立場にもなってみてよね。こう言っちゃなんだけど、私だって体力が無尽蔵にあるってわけじゃないんだから、ずっと弄られると疲れるって。


「でも疲れた結愛を独占できるのはいいことよね」


 私はよくねぇよ。


 こんな不毛な会話は早々に区切りをつけるに限る。


 スラちゃんと樹里が戻ってくる前にやることはやってしまいたいし。


 熱心で意識的な私は、それでも無意識に朱美の頭を撫でていることに気づいた。無意識って怖いね。


 朱美は頬を緩ませながら私の手を無防備に受け入れ、片目で私に何かを訴えている。


 まるで、だから弄られるのよとでも言いたいかのように。


「だから弄られるのよ」

「ねぇ、私の思考読んでるなら再度口にする必要は無いよね?ね?」

「無意識的な行動が恥ずかしいからって怒るのは理不尽だわ。結愛の自業自得でこうなったっていうのに」


 ぐぅの音も出ない。でも、撫でる手も緩めない。こんな私は優柔不断な半端ものです。


 表情はあまり変化しないけど、そのほかの部分が過剰に反応するのが私だから、これ以上顔を朱美に見られたくない。絶対弄られるから。


「結愛ちゃんはかわいいわねぇ~」

「うぅぅぅぅぅぅぅ……」


 そうだ。朱美にはこっちの思考が筒抜けなんだった。学習しようよ私。思わず変な唸り声あげちゃったじゃないか。


「かわいかったわよ?」

「うるさい」


 ここまでコケにされて何も思わないほど私は温厚ではない。朱美のことを無視して薪探しを始める。


 といっても、朱美は後ろからニヤニヤしながらついてきていることが分かるので、まぁ、要するに私自身が脹れているだけだ。


 私も前の世界ではいい大人だったはずなのになぁ……身体が若くなると精神も若くなってしまうのかもしれないねぇ……。


 若々しいことは良いことだ。


「結愛、結愛」

「なに?」


 薪拾いを始めた私に朱美が声をかけてくる。今度は何だろう?私はまだ脹れてたいんだけど?


「そんなことはどうだっていいのよ」

「いや、良かないよ」

「スラたちの方見てみなさい」


 その前に私の話にも少しは興味持ってよ。


 言っても無意味だと悟ったので、少し距離があるがスラちゃんと樹里の姿を視野に収める。


 ここら辺一体の地形を変化させるやばい奴を狩りに行った、私の大切な仲間たち(もっとやばい奴等)


 これから何が起こるのだろうと疑問に思っているのはおそらく私だけだろう。


「これから面白いことが起こるわ」


 朱美に言われるがまま、スラちゃんたちを注視する。


 その時、前の世界でも何度も体験した自然現象に類似した揺れを感じた。


 簡単に言うと地震だ。しかし、自然発生する地震とは違い、揺れはそこまで酷くなく、むしろ微々たるものだ。


 でも、着実にその揺れが大きくなる……つまり、何かが近づいてきていることには私でも気がつけた。


 スラちゃんと樹里がいる場所の揺れが徐々に大きくなる。


 理性的な反応をするとしたら、この揺れを起こせるような巨体が地中を縦横無尽に駆け巡ってるのはファンタジーすぎるなって感じなのだろうか。


 でもね、この反応をするには条件があると思うんだ。スラちゃんたちが無事にその巨体を打ち倒すという安寧に満ちた確信がなくてはできない反応だと思うんだよ。


 何が言いたいかってさ、私的にはまだ見ぬ地中の誰かさんにスラちゃんたちがパックリいかれるんじゃないか心配ってこと。


 大丈夫だよね?大丈夫なんだよね?という意思を込めた視線を朱美に送る。


 筍なんて目じゃないくらいの化け物が地中からこんにちはしてきそうなんだけど、本当に食料というカテゴリーに当てはめて見て良いんだろうか?


 朱美から返ってきたのは無言のサムズアップ。だめだ、さっきまでのコミカルな雰囲気のせいで朱美がボケているんじゃないかと疑ってしまう。


 焦っても意味無いのは分かるけど、そりゃ焦るでしょうよ。


 無慈悲にもタイムリミットは迫り、揺れはその激しさを増していく。


 スラちゃんと樹里もなんで平然としてられるんだろう?この場でおかしいのは私だけなんですかね?


 頭の中が軽いパニックに支配されている最中、揺れがピタリと止まった。


 今の今までその勢いを増していた揺れは、一瞬の間にその鼓動を止められたかのように鳴りを潜めた。


 静寂が辺りを支配する。はいもう分かりますね?これは嫌な静寂ですよ。


 明らかに獲物の真下まで到着したから、あとは獲物を確実に捉えられるように微調整とかの間でしょうこれは。


 なんて考えていたら、スラちゃんと樹里の足元の地面が爆発した。


 正確に言うなれば、爆発にも似た勢いで地面から何かが飛び出してきた。


 その姿はこの距離からでも把握できるくらいには巨体で、アナコンダをさらに巨大にしたような出で立ちだ。


 胴体の幅は5メートルくらいあるのではないだろうか。スラちゃんたちを捕食するために身体の一部を出してきた感じなので、全長を見ることは出来ていない。この距離では細部まで観察することができないけど、間近で見たら見たで精神に支障が出そうなのでできれば見たくない。


 ただ分かることは、いやいやいくらなんでもでかすぎんだろという心からの突っ込みである。


 ついでに、前の世界のあの手の生物でワームとかいうファンタジー版のミミズみたいなのがあったなーと現実逃避気味に思考をそらす程度。


 まぁ、いま目にしてるのは思いっきり蛇よりなんだけどね。


 ところであのでかすぎる巨大蛇。やたらと目が良いようで、私と朱美をバッチリロックオンしている。


 威嚇のつもりなのか、口を開いて今から食べてやるからなみたいなアピールをしてきているように思える。


 勘弁してほしい。あの蛇の口って上下開閉型ではなく、蕾から花が開くように360度全方位に開く口らしい。


 ここからでは見えないけど、あの口の中は無数の牙で埋め尽くされているに違いない。


「ねぇ朱美」

「どうしたの?」

「スラちゃんと樹里は?」


 さっきの爆発みたいな出現のせいで土煙が舞い、スラちゃんと朱美の姿を隠してしまっているのだ。まさか、丸呑みされたなんて落ちは早々ないだろうし、大丈夫だとは思うけど、姿が見えないとやっぱり不安になっちゃうよね。


「丸呑みされてたわよ?」

「ん?」

「丸呑みされてたわよ?」

「はい?」

「だから、丸呑みされてたって言ってるでしょ」

「……really?」


 オーマイガーってやつじゃないそれ?


「何言いたいのか大体察しはつくけど、まぁ見てなさいって」


 なぜそんなにも落ち着けるのか理解に苦しむんだけど、流石に丸呑みされたらどうすることもできないんじゃないの?


 いくらスラちゃんや樹里がすごい存在だからといっても限度があると思ってるんだよね。そりゃあ、私としても死んでほしくはないし、悲しくなっちゃうし、寂しくなるからあれなんだけどさ。


「結愛は少し勘違いしてるわね」

「どういうこと?」

「私たちは()()の確保を任せたのよ?」


 それは分かっている。でも、狩りとはいえ命を落とす確率って少なからずあるはずだから、念入りに準備をして望まなきゃ危険なんじゃないの?


「それはよっぽどの危険が伴うときに限定されるわ」

「マジ?」

「マジ」


 おいおい、じゃああそこにいる巨大な蛇さんは朱美たちには警戒する必要もないくらい安全に狩れる食料ということになるんですか?


「そういうことになるわね」

「でもスラちゃんたち食べられたんでしょう?」

「そうね。でも食べられたなら、腹を掻っ捌いて出てくれば問題ないでしょう?」


 その言葉とほぼ同時に、蛇の胴体の一部が不自然なほど大きく膨れ上がったのを私は見逃さなかった。いやまぁ、誰も見逃さないと思うけどさ。


 余裕ぶってたように見える蛇は、自分の体の異変に気が付いたのか、頭に?マークを浮かべているように思えたけど、時すでに遅しというか、今度こそ本当の爆発を私たちは目の当たりにしたのだった。


 蛇の胴体の爆発は、大量の血飛沫を荒れた大地にまき散らし、爆発によって千切れ、宙に放り出された巨大な首は、相も変わらず自身の身に何が起きたのかを理解する前に命の灯を絶たれた事実を如実に語っている。爆発による推進力を失くした首は、重力によって地面に強制送還を余儀なくされ、巨体に想定される通りの地響きを大地に与え、巨体に似つかわしくない程力なく地面に平伏した。


 即死だったのだろう。


 やったのは多分スラちゃんだ。爆発を起こした胴体の部分からひょっこり抜け出してきているけど、スラちゃんってこんな強そうなのを一捻りできるんだね。


「面白かったでしょう?」

「ヒヤヒヤしたよ」


 朱美はスラちゃんたちの力量を私に見せるいい機会だと思ってたのだろうか?守護する力はしっかり持ってると私に教えたかったのだろうか?


 今までよりもずっと安心できるのは確かなんだけど、もう少しヒヤヒヤしないように教えてくれてもよかったと思うのは私だけなのかな?


「そんな怖い視線を向けないで結愛」

「だったらもう少し私に色々教えてくれてもいいんじゃないの?」

「まぁ、聞くよりも実際に自分の目で見て確かめた方が確実性があるでしょ?」

「それはそうだけど」


 のらりくらりと躱してもう。まぁ、無事スラちゃんたちが狩りを終えてくれたのは良かったよ。これで食料も手に入ったし……そういえば、あの蛇を食べるってことになるのか……。


 筍の時はまだ良心的だったようにも思えるけど、急に食欲が失せてきた気がするよ。


 タイミングを見計らったようにお腹が小さく声を上げた。


「……朱美、そのむかつくニヤケ顔を今すぐやめろ」

「あら……ごめっ、ん、んんっ。あれだけあればお腹いっぱい食べれるから大丈夫よ」


 顔が治ってないぞこの野郎。

暑さに負けじと激辛系の料理や鍋を好んで食べていたのですが、暑さに熱さをぶつけるのは非常に無謀なことなのだと認識させられました。

汗が止まらず脱水症状気味になるので、我慢大会の特訓中の人に薦めたい生活です。

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