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平和な時間は次へのフラグみたいなとこありません?

予約投稿したと思っていた昨日。

それが単なる勘違いだと気づいた当日。

記憶が混濁しているのだろうか?

いやしかし私は確かに予約投稿の操作をしていたはずだ。こんなサブタイトルでは無かったはずだし、こんな前書きではなかったはずだ。

もしかして、この文章すら私の妄想であるとでもいいたいのだろうか。

狂ってきている気がする。

 樹里と水浴びを終え、湖の中から出た。


 スラちゃんが焚火を準備してくれており、近くに座って手のひらを焚火に向け暖を取る。


 樹里は完全に湖から出た後、犬のように全身を勢いよく振り回し、身体の水分を弾き飛ばしていた。


 そのままこっちに来るのかと思ってみていると、どうやら樹里は炎があまり得意ではないらしく、焚火と距離をあけて静止した。


「火が怖いの?」

「そんなもんでしょ。本能で怯えているのよ」

「スラちゃんと朱美はそうでもないよね?」

「スラは火に強いし、私は用途を理解したから大丈夫よ」


 朱美さんまじパネェッす。


 圧縮言語みたいになってるけど、要するに火の安全な使い方を理解したっていうんでしょ?おかしくないこの適応力。


 スラちゃんは体育座りの姿勢で焚火に手を向ける私の近くで形を崩していた。多分寝てる。


「休眠が足りなかったのよ。そんな状況で活動してしまったら起きてられないでしょうね」

「無理させちゃったかな」

「安心しろと言った手前、この様なんだから気にしなくていいわ。結果は悪いものでもなかったし、いいんじゃないの?」

「樹里にも会えたしね」

「あれにも名前あげたのね」

「うん」


 形が少し崩れたスラちゃんを抱き上げ、いつもの定位置に持っていく。少しくすぐったくて感じるが、私のために頑張ってくれたのだから、何かお返しをしなくては。


「……今じゃなくてもいいんじゃない?」

「抱くための口実だからいいの」

「ふーん」


 朱美は適当に返事をしながらまた編み物をやっている。


 また私に着せるためのものだろうか?それとも自分のもの?


 スラちゃんを撫でながらぼんやり眺めていると、頭がボーっとしてきた。私も寝てる最中に勝手に行動してたわけだから、疲れが十分に取れているはずもなく、強烈な眠気が襲いかかってきていた。


「もう今夜は私が起きてられるから寝ても大丈夫よ。確約するわ」

「…………うん」


 朱美の言葉で安心感が増したのか、私は眠気に抗うことなく眠りに落ちた。




 〇




 朝?起きた。


 夢のようなものは一切見ていなかったようだ。泥のように眠ったとはこのことをいうのだろうか。


 かなり長い間眠っていた気がするのだが、いかんせん頭がまだボーっとしている。これは俗にいう寝すぎというやつかな?


『結愛、おはよー』

「…………?」


 なんで私はスラちゃんを抱きしめているのだろうか?


 ああ、昨日寝る前までずっと抱きしめていたのか。そのまま寝落ちしてしまったんだ。


『結愛、まだオネム?』

「……大丈夫だよ。おはようスラちゃん」

『おはよー』


 スラちゃんはずっと起きていたのだろうけど、私の胸の下から出られずにずっといたみたいだ。その割にはすごくまったりしてらっしゃる。声も元気ではあるのだが、いつものハキハキ感がないな。可愛い。


 まだ頭が覚醒しきっていないけど、朱美と樹里はどこだろう。


 自分でも遅いなぁと感じる速度で辺りを見回す……必要もなかった。


 朱美は私の横で編み物を続けており、樹里は湖に浮いていた。……朱美は昨晩からずっと編んでない?


「おはよう結愛」

「おはよう朱美」

「早速だけど、服は準備できているわ」


 急ごしらえだけどね、と付け加えるように言いながら服を渡される。あ、これは昨日のなんだ。スラちゃんが洗ってくれていたやつね。


「新しいの数着できているけど、今日はそれでいいかと思ってね」

「へぇ……その、朱美の手前に置いてある草?の箱は何?」

「これは樹里が作ってくれたのよ」


 そんな特技あったんだ。凄いじゃん樹里。まさか、ここで荷物を運ぶ入れ物を作れる仲間が出来ていたとはびっくりだよ。


 そこまで大きくはないけれど、触ってみた感じかなり頑丈だ。たとえ落としたとしても、これなら穴が開くことはないだろう。


 今は朱美が服を収納するために使っているみたいだ。だよね、服をたくさん編んだとしても、それを一度に着ることはできないから、着ない分は汚れないようにしまっておく必要がある。


 樹里の能力を確かめるためにも頼んだってことかな?


「それにしたってもう既にパンパンなんだけど、どれだけ服作ったのさ……」

「そんな作ってないわよ?必要最低限くらいの量しか作ってないわ」


 これはつまり、それだけ女物の着替えというのは枚数が多いことを意味してるってことでいいのかな?抵抗はほぼなくなっていると思うんだけど、着る量が多いのは、それはそれでなんだか面倒だ。


「全部着せるから」

「あ、はい」


 着ることは既に確定している未来らしい。別にいいんだよ?でも何故圧を掛けてまで念を押すんですか朱美さんや。私はどこにも逃げませんよ?


「逃がさないしね」

「そこだけ的確に拾うのね」


 会話していたら、少しだけ目が覚めた気がする。


 腕を上にして全身で伸びをした。これするだけでも眠気が幾分かマシになるような気がするんだよね。


 私の胸の下にいるスラちゃんも真似しているのか、小さな身体を上下に伸縮させている。かわいい。


「ん~~~~……っはぁ。今日もいい天気だね~」

『んー』

「スラちゃんもこういう日はまったりしたよね~」

『まったりー』


 異世界生活三日目にして、既にやる気が出ない。なぜなら日の光が眩しく、気持ちの良い日光が今日は休めと私に囁いているから。


 まぁ動くんだけどね。


 あ、樹里が湖から戻ってきた。動きは変わらず不規則で軟体生物のような骨格の存在しない生物と似たような動作だけど、今となっては愛嬌のある動きにしか見えない。


 朱美はお姉さんっぽいし、スラちゃんはペット……樹里もペットみたいなイメージかなぁ?


 くだらない妄想に耽っている私に呆れたのか、朱美が頬をつついてきた。くすぐったい。


「今日はどうするの?」

「うーん、今日か……」


 この二日間で色々と揃うものは揃った気がする。生活環境は整ってきているのだ。


 このままここで朱美たちと共に過ごすというのは確かに楽しいだろうし、心強い。


 でも、やっぱり私はこう思うんだよ。


「この森の外に……行ってみたいかなぁ」

「……ここの外、ね……本気?」

「うん」


 朱美が手を止めた。


 多分だけど、外は危険なんだろうと思う。ここも大概なんだけどね。


 私は無力だ。この森にいては、自分の力で食料調達することは出来ないだろうし、敵から身を守る自衛力も皆無だ。そこを朱美たちが補填してくれているから私は生きているわけで、朱美たちにおんぶにだっこ状態なんですよ。


 だから私に行動方針を求められているけど、その過程で最も苦労し、迷惑を被るのは朱美たちということになる。


 つまり、最終決定権が私にあるようで無い。


 朱美が考え込んでいるのはそういう理由もあるはずだ。ここで私の提案が却下されることは十二分にあり得る。


 スラちゃんと樹里は変わらずまったりとしているが、朱美が私の提案に反対したらそっち側に付きそうな気がする。


 ここはある意味、朱美たちよりの存在しかいないけど、外は私が求める人間がいるのだ。もし、人間が私たちに牙向いてきた時が怖い。特に樹里には私が発狂させられそうになったんだし。うん?してたのかな?


 逆にいえば、それを確かめるというのも外に行く理由の一つではあるんだけどね。


「……今日には出発する予定?」

「動けるなら早く動くに越したことはないと思う」

「そうね、結愛がこの森の外に興味があるというなら、連れて行ってあげる」


 お?案外簡単に了承してくれた。朱美は頭が良いから考え込んで、私に質問と思考を読んで決定すると思ってたよ。


「それでもいいんだけどね」


 いいんだ。


「でも行くこと自体に反対はしないわ。ずっとここにいても退屈だし」


 快諾ですね。


「ただし、私たちがいるからと言って、外が危険なことに変わりはないわ。そこだけは頭に残しておいてね」

「うん、ありがとう」


 外に行くことに関しては私が深読みしすぎたみたいだ。スラちゃんと樹里も割と乗り気だし。


 本当に私に優しいというか、甘いよねみんな。嬉しいんだよ?嬉しいんだけど、これで良かったのかなぁって心配にはなるんですよ。メンタルが豆腐だから。


 豆腐……豆腐かぁ……。割と好きだったな。でもこっちに豆腐なんてないよね。あったら喜ぶだろうけど、そもそもこの世界の人間に出会えていない訳だし。


 外に出れば新しい食材や調味料に巡り合う可能性もあるのか。


 こいつぁ行くしかねぇや。


「ご機嫌ね」

「危険なのは分かってるんだけどさ、やっぱり気になるものは気になるというか、ギャップはあるだろうけど、多少は理想を思い描いていきたい冒険心的なナニカが私の中でその存在感を大いにアピールしてる」

「前向きなのはいいことよ」


 朱美が頭を撫でてくれる。我ながら長文を話したものだよ。何言ってるかサッパリ分からないけれど。


 心が若返ったりしているのかな?


 未知は怖いものでもあるんだけど、同時にすごく好奇心を沸かせるものでもあると思うんだよね。人間って何か刺激がないと生きていけない生物なのかねぇ。


『結愛、楽しみ?』

「うん、楽しみだよ。みんなで一緒にいると楽しさ倍増だね」

『倍増!』


 スラちゃんが嬉しそうに身体を震わせる。気持ちいい。違った、かわいい。


 樹里は……四肢を荒ぶらせてますね。うん、喜びの感情として捉えていいんだよね?傍から見たら、弱点を突かれて悶えているモンスターにしか見えないよ?


「とりあえず準備をしましょうか。栄養補給は必要なの?」


 昨日は朝ご飯を食べたけど……なんだかお腹が空いていないんだよね。寝てる間にスラちゃんが水でも飲ませてくれたのだろうか?


 お腹が空いていないのに無理やり何かを摂取する必要も無いだろうし、今日は朝ご飯いらないかな。


「元気そうだし、獲物を探すのにも移動時間がかかってしまうから、もし森を出る道中に何か居たら狩るくらいでいいかしらね」

「それでいいかも」


 狩るとはまた弱肉強食の世界再確認ですねぇ。慈悲の一切ない狩りは弱肉強食の真理ともいえる。


 やらなきゃやられるっていう世界だからこそ、同時に命の大切さを学べるってもんですよ。自殺した奴が何を言ってるんだって話だけどね。


 最後の名残としては、この湖での水浴びがもうできないことくらいかなー。


 あ、そういえば湖の中の魚食べてないじゃん。食べられそうなのいるんだよね確か。


 でも、まぁいいかな。まさか、この世界で水源がここしかないなんてあり得ないし。生物が生活していくことが困難になるから。


 これから外に行けば、いくらでも海の幸にありつけるチャンスはあると思う。その時に堪能すればいいかな。


 私ってこんなに楽観的だったっけ?朱美たちの存在ってやっぱり大きいんだなぁってことがしみじみ感じられる。仲間に恵まれるってありがたいことですわ本当。


「さぁ、準備するわよ?」

「準備するって言っても、その服が入った樹里お手製の荷物箱以外に持って行くものってあるの?」


 朱美が周囲を見回す。私も一緒になって何か必要なものはないか見回す。


 焚火の跡は持って行けない。寝床はそもそもスラちゃんが持ってきてくれた葉っぱだし、その他に私が集めたものは……ない。


「何もないわね」

「つまり、服を着ればもう出発できると?」

「そういうことになるわ」


 じゃあさっさと着替えよう。早く森以外の景色を見たいよ私は。


 よく思えば私、朱美たちの目の前で堂々と着替えをしてる構図になっているわけだけど、これって道徳的によろしくないのではなかろうか?


 いやね?朱美以外のスラちゃんと樹里からは、視線は感じるんだけどあまり見られているという感じはしなくて、だからこそ気にせず着替えられるというか、私の羞恥心生きてるよね?


 ただの痴女に成り下がってないよね?


「私たちの前なら大丈夫よ。あいつらの前では……分からないわね」

「生活環境がそもそも違うからね。私もここの人たちの生活見たことないから、朱美の話以外の情報ないし」


 とりあえずいえることは、服とか鎧は着て生活していることから、それくらいの発展は遂げている文明だということ。


 だから尚更私はここで羞恥心を持っておくべきではないのだろうか?


 ぶっつけ本番なんて私できないよ?そもそも羞恥心に本番も何もないよ。


 誰しも持っていて当たり前の感情だと思う。


 ……さっきから私はなんでこんな無駄なことに頭を働かせているんだろう?割とどうせもいい類の思考のような気がするのは私だけ?


「いや、結構無駄だと思うわ。さっさと着替えちゃえば?早めに出たいんでしょ?」


 私は無駄な思考をやめて着替えることに集中した。


 それにしても思考での会話に慣れてきたな。

おおよそ不安を煽ることといえば、脳味噌をアルコールに浸しすぎた翌日や長期休暇の後の仕事の量であるが、記憶の混濁は想定していなかったよ。

気をつけようね読者諸賢。

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