プロローグ
始めて小説を執筆しました。
アドバイス等いただけたら、嬉しいです。
俺は幼い頃に、一度だけドラゴンを見たことがある。
今は亡き母と共に、大陸3大国の一つである『シルドニア』に属する田舎の小さな村で質素だったがそれなりに幸せに暮らしていた頃だった。
現在は、ある理由により人間同士の戦いは落ち着いているが、国同士が対立し戦争を行う際には、以前は多くの人間が戦地に赴いていた。
シルドニア国は隣国の『アルバノン』と争うことが特に多かった。
10年ほど前に開戦したアルバノン国との国境沿いでの戦争では、開戦直後は互いに力が均衡していたが、物資の枯渇により戦況が進むにつれてシルドニア国の軍隊はアルバノン国の勢力に押され気味になっていった。
そこで、シルドニア国の軍隊は一旦軍備を整える為に、シルドニア国の軍事都市の一つである『グリフィン』まで撤退を余儀なくされたのだが、その時不幸にもグリフィンと戦地であった国境沿いとの間に位置していた俺の村は撤退時に追撃をされない為の足止めとして利用されたのだ。
小さな村だったが、村人の殆どの者が農家を生業としており、食料が豊富にあったこと、そして、我が国トップクラスの軍事都市であるグリフィンまで徒歩1日程で移動できる距離にあった為、グリフィン攻略の為の拠点としては打って付けであった。
そして、そのことを十分に理解していたシルドニア国の軍隊長は、敵の目が俺たちの村に向くようにと、わざと村の近くを通過するルートで退却をしたのだ。
そして、軍隊長の思惑通りの結果になった。
その時、俺たちの村には僅かながら国から衛兵の派遣はあったものの、元々村にいたはずの戦える者たちは、兵士として国から招集されていた為、村には老人、女、子供といった戦いには不向きな人間しか残っていなかった。
そこに何千人もの訓練を積んだ屈強な兵士たちが攻めてきたのだ。
勝てるはずがない――。
国から派遣されてきた衛兵たちは撤退する軍と合流し、俺たちを残して真っ先に逃げてしまった。
残った俺たちは何もすることができずに、ただ弱者の精一杯の抵抗も虚しく、蹂躙されるのを待つのみだと思われた。
そんな時、侵攻してくる敵の軍隊を前に1匹のドラゴンが立ちはだかった。
そのドラゴンは、巨大な真紅の身体に鋼のような鱗を纏っており、まるで神話に出てくるような凶悪な怪物のような姿をしていたのだが、不思議と怖くはなかった。
ドラゴンは、鋭い眼光を敵に向けたと同時に背中にある翼を大きく広げ、侵攻してくる敵に向かって炎の吐息を吐いた。
ブレスの威力は凄まじく、その一撃のみで敵を撤退させるだけの効力があった。
敵が一目散に撤退していくのを見送った後、ドラゴンは威嚇するように敵が逃げた方角に目掛けて大きく唸り声をあげると、空高く飛び去ってしまった。
俺はその姿を今でも鮮明に覚えている。
ドラゴンの勇姿が脳裏にこびり付き、忘れることができないのだ―。
この大陸には、どの国にも属さない『カルティア教会』という団体がある。
カルティア教会の教えは大陸中に布教されており、大陸中の殆どの者がその教えを忠実に守る信者であった為、カルティア教会はそのような意味では、どの国家よりも大きな力をもつ存在であった。
そして、その教会の教えではドラゴンは人間とは相容れることがない悪の化身とされていた。
だが俺の村は、そんな悪の化身と呼ばれる存在によって救われた。
俺たちの中では、ドラゴン=救世主という存在になっていた。
そして、いつかまたドラゴンの会うことが俺の夢となっていった。
しかしこれは、カルティア教会の教えとは異なる思想だ。
今考えると、教えを守る為に村人全員消されてもおかしくない状態だったはずだったのだが、その後、何故か何も起きる事はなく年月は過ぎていった。
俺はドラゴンに会ってからというもの、少しでもドラゴンに近づけるように毎日剣術を鍛えに鍛えた。
少し前まではドラゴンの目撃情報など皆無だった為、幻想上の生き物だと思われていたのだが、ドラゴンを見たと主張する人間が徐々に増えていった。
そしてドラゴンを見たことのある人間の殆どの者はかつて兵士であり、ドラゴンを見たのは戦場だったと発言していたのである。
昔に比べて兵士の数は格段に減っていたのだが、それでも兵士の応募は毎年行われていた。
そこで、俺はドラゴンに会う為の手段として、軽蔑すべきシルドニアの兵士に自ら志願してなったのだ。
シルドニアの兵士になった俺は剣の師匠にも恵まれた事にもよって、
20代前半になることには俺の剣の腕前は国でトップクラスになっていた。
そして、兵士として国に認められるようになった俺はドラゴンの真実を知ることとなる。